
建物を解体したら1か月以内に法務局に建物滅失登記申請を行わなければなりません。多くの場合、土地家屋調査士に申請手続きを依頼しますが、自分で申請することは可能なのでしょうか。
今回は、建物滅失登記を自分で行う場合の必要書類や申請の流れ、注意点、トラブルを防ぐための対策などについて解説します。
建物滅失登記は自分でできる?

建物滅失登記とは、現在ある登記簿の表題部の登記記録をすべて抹消し、登記簿を除去する不動産登記の手続きです。
表題部の申請手続きは土地家屋調査士に依頼するのが一般的ですが、所有者であれば自分でも手続きできます。
所有者本人が申請できる
建物滅失登記は、所有者自身で法務局に申請できます。所有者が死亡している場合は、相続人による申請が可能です。申請書を記入し、必要書類を揃えて管轄の法務局の窓口に直接持参するか、郵送で提出する方法があります。
滅失登記ができるのは建物の所有者または土地家屋調査士です。司法書士は権利に関する申請はできますが、滅失登記で建物がなくなる時点で抵当権等の権利が消滅し、権利に関する手続きが不可能になることから、司法書士に滅失登記は依頼できません。
税理士についても、相続税の申告手続きやサポートは税理士が専門ですが、滅失登記の代行は不可です。
期限は解体後1か月以内
建物滅失登記の申請期限は、建物を滅失した日から1か月以内です。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となります。
もし期限が過ぎてしまった場合でも、申請は可能です。放置せずにできるだけ早く申請しましょう。
滅失登記をしないままでいると、過料の対象となるだけでなく、建築許可が下りなかったり、融資が受けられなかったりするなど、土地活用に支障が出るケースがあります。トラブルを避けるためにも、家屋を解体したら速やかに滅失登記申請を行うようにしてください。
参考:建物の滅失の登記の申請
費用は実費程度
自分で建物滅失登記手続きをすれば、費用が実費のみで済む点は大きなメリットです。
手続きを土地家屋調査士に依頼すると報酬と実費で4~5万円ほどかかります。一方で、自分で手続きを行った場合は、登記事項証明書の取得費用、郵送費などで数千円程度で済みます。
滅失登記で必要な証明書の窓口での取得費用は以下の通りです。
登記事項証明書:600円
地図・図面証明書:500円
オンライン請求であれば窓口請求よりも安く取得できるので、できるだけ費用をかけたくない場合は、オンラインを活用しましょう。
申請前に確認すること

滅失登記申請をスムーズに行うためには、事前にいくつか確認しておかなければならないことがあります。確認項目によって見るべき書類が異なるので、ポイントを押さえて早めに状況を把握しておきましょう。
登記済み建物か確認する
建物を解体する前に、その建物の登記状況を確認しておかなければなりません。建物が登記されている場合は所有者が被相続人になっているか確認します。この場合は、建物を相続した人、または相続人の中で話し合って決めた代表者が解体できます。
建物の登記状況を確認するのには以下の方法があります。
- 法務局で全部事項証明書を請求する:取得できない場合は未登記だと判断
- 固定資産税納税通知書を確認する:同封の「課税明細書」に家屋番号が記載されていなければ未登記の可能性がある
未登記建物でも所有権を主張する人やほかの相続人がいなければ解体することは可能です。もし、ほかに関係者がいた場合は、全員から解体の了承を得なければなりません。
申請者を確認する
建物滅失登記前には、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、前回の申請者、つまり現在の登記名義人(所有者)を確認します。
登記簿上の所有者の状態によって、滅失登記の申請ができる人が異なります。
所有者が存命の場合:登記簿上の所有者本人が申請人です。
所有者が死亡している場合:相続人のうち1名から申請できます。
登記上の所有者が死亡している場合、住民票や戸籍謄本などの追加資料が必要となるので、必ず確認しましょう。
管轄法務局を確認する
建物滅失登記の申請は、建物が所在していた地域を管轄している法務局で行います。必要書類はどこの法務局で入手しても構いませんが、書類の提出は管轄の法務局です。
管轄の法務局は、法務局のホームページで確認できます。
法務局が遠い場合や平日に出向く時間がない場合は、郵送で提出することも可能です。
法務局側で登記手続きが完了すると、登記完了証が交付されますが、こちらもあらかじめ返送用の封筒と郵便切手を用意しておけば郵送で送ってもらえます。
参考:管轄のご案内|法務局
滅失登記を自分で申請する際の必要書類

自分で滅失登記申請を行う場合、手続きに必要な書類をすべて自分で用意する必要があります。不備があると手続きが進みませんので、事前に確認のうえ、早めに揃えておきましょう。
建物滅失登記申請書
建物滅失登記申請書は、法務局のホームページからダウンロードできます。記載例を参考に必要事項を記入します。
申請書には、登記簿謄本に記載されている事項を記入しなければなりません。そのため、事前に登記簿謄本を用意しておくとスムーズです。
申請書には以下の項目を記入します。
- 不動産番号
- 建物の所在地
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
- 登記原因
不動産番号、所在、家屋番号、種類、構造は登記簿謄本に記載されている内容を記載します。
登記原因は「令和〇年〇月〇日取壊し」と記載します。
参考:建物滅失登記申請書
建物滅失証明書
建物滅失証明書は、解体業者が建物を取り壊した事実を証明する書類です。「建物取り壊し証明書」と呼ばれることもあります。
すべての解体作業が完了し、廃材撤去・整地が終わり、施主による最終確認が済むと発行されます。渡されるタイミングは業者によりますが、工事完了の立ち会いの際に手渡しされる、または工事費用の支払い後に郵送されるケースが多いようです。
通常は解体業者が作成し、署名・押印したものを渡されますが、依頼人が作成し、署名と押印をもらう方法でもかまいません。
証明書には実印を押印し、業者の印鑑証明書を添付します。
解体業者の資格証明書
解体工事請負人の証明のために、解体工事を実施した者の資格証明書が必要です。
この時、解体工事業者が法人か個人かで求められる書類が異なります。
法人:会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
個人:印鑑証明書
解体業者が法人の場合、申請書に会社法人番号を記載することで資格証明書は不要になります。また、書類は返却してほしいと言われるケースがあるため、法務局に提出する際は「原本還付請求」を忘れないようにしましょう。
滅失箇所がわかる簡易地図・写真
必須ではありませんが、法務局への参考資料として、解体した建物の地図と解体後の敷地が写っている写真を添付すると、法務局が土地の状況を把握しやすくなります。
地図はどの場所に建物が位置していたのかが分かるようにしておく必要がありますが、Googleマップを印刷したもので手描きの地図でも構いません。
写真は正面だけでなくいくつかの角度から撮影し、敷地から建物が撤去されていることが確認できるように撮影しましょう。
相続関係書類が必要なケース
所有者が亡くなり、相続人が滅失登記手続をする場合は、相続が発生したことを証明するための書類も必要です。
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人(申請者)の戸籍謄本
相続人が滅失登記を申請できるのは以下の2つのケースです。
- 相続した建物を解体した場合
- 被相続人が生前に建物を解体したあと滅失登記が行われていない場合
これらに該当する場合は相続人のうち1人から代表して申請できます。
滅失登記を自分で申請する流れ

申請に必要な書類が分かったら、今度は申請の流れを押さえておきましょう。建物滅失登記は建物の滅失から1か月以内に申請しなければなりません。手順を把握しておき、スケジュールに余裕を持って手続きをすることが大切です。
登記事項証明書を取得する
まずは法務局で、登記事項証明書を取得します。
登記事項証明書の取得方法は以下の4通りです。
- 窓口(即日)
- 郵送(1週間程度)
- オンライン申込窓口受け取り(当日~翌日)
- オンライン申込郵送受け取り(数日程度)
取得手数料は600円です。郵送の場合はさらに切手代がかかります。市役所・区役所、コンビニでは取得できません。法務局のみの取り扱いだという点に留意しておきましょう。
滅失登記申請書を記入する際には登記事項証明書に記載されている情報が必要です。早めに取得しておくことをおすすめします。
解体業者から証明書をもらう
解体工事が完了したら、解体業者から建物滅失証明書(建物取り壊し証明書・解体証明書)を受け取ります。建物滅失証明書は滅失登記申請に必要な書類なので、必ずもらうようにしましょう。
一般的には解体業者が作成し、実印を押印して交付してくれますが、自分で作成することも可能です。法務局のホームページでテンプレートが配布されているため、それをもとに作成し、解体業者に署名と実印の押印をもらえば問題ありません。
申請書を作成する
滅失登記申請書を記入します。申請書は法務局の窓口でもらうか、法務局のホームページからダウンロードし、印刷して使用します。
申請書の建物情報は、登記事項証明書の内容を転記します。申請者の氏名の横には印鑑を押印しますが、認印でも実印でもかまいません。ただし、シャチハタ等のインク浸透印は不可です。朱肉を使って押印する印鑑を使用してください。
申請書を記入したらコピーを取り、控えとして保管しておきましょう。
法務局へ提出する
申請書と必要書類を揃えたら、建物があった場所を管轄する法務局に提出します。
法務局によっては手続きを完全予約制にしているところもあります。事前に管轄の法務局のホームページで、予約制かどうか確認しましょう。
また、法務局では申請書の書き方など登記手続きに関する相談もできます。こちらも多くの場合、予約制となっているので、利用する場合は事前にインターネットまたは電話で予約しましょう。
提出は郵送でも可能です。上でもご紹介しましたが、窓口であれば不備はその場で訂正印を押印して訂正でき、手間が省けます。郵送の場合、不備があった場合は電話がかかってきます。窓口で訂正するか、郵送してもらい再度送り直すか、決めてください。
登記完了証を受け取る
法務局で滅失登記手続きが完了すると、「登記完了証」が交付されます。登記完了証を受け取れば滅失登記の一連の手続きが完了します。
登記完了証の交付は窓口申請なら1~2週間程度、郵送で申請の場合は2~3週間程度です。
登記完了証は、登記手続きが完了したことを知らせる書類であり、特に効力はありません。他で使用する用途もありませんが、再発行は一切できないことは知っておきましょう。
登記完了証を紛失した場合に手続きが終わっているか確認するには、登記事項証明書を取得する必要があります。
建物滅失証明書がない場合

滅失登記申請には建物滅失証明書を添付しなければなりませんが、証明書がない場合はどのようにすればよいのでしょうか。ここでは、証明書がない場合の対応方法を紹介するので、申請期限に間に合うように、早めに手配しましょう。
解体業者に再発行を依頼する
もし、建物滅失証明書を紛失した場合は、事情を説明して解体業者に再発行を依頼してください。業者は記録としてデータを保存しているのが一般的なので、再発行してもらえます。
この場合、業者によっては数千円程度の発行手数料がかかることがあります。費用については、再発行を依頼した際に確認しておきましょう。
滅失証明書は滅失登記手続きに必ず必要になるので、解体工事の完了検査後に必ず受け取るようにしましょう。事前にチェックリストを作っておくと、受け取り漏れを防げます。
上申書で対応する場合
解体業者が廃業してしまった、連絡が取れない、または自分で家屋を解体したというようなケースで建物滅失証明書の発行を依頼できない場合は、上申書を作成して登記手続きを行います。
上申書には建物の情報、建物が存在しないことを記載し、実印を押印して印鑑証明書を添付して提出します。
- 建物があった場所の住所
- 家屋番号
- 種類(居宅など)
- 構造
- 床面積
- 滅失証明書が出せない理由(解体業者が倒産、自分で解体した、など)
自分で申請するのが難しいケース

手続きが複雑なケースでは自分で申請するよりも専門家に依頼した方が確実です。特に以下に当てはまる場合は、土地家屋調査士などの専門家に相談して、申請を代行してもらいましょう。
相続人が複数いるケース
相続人が複数いる場合、登記申請書類に加えて相続関連の書類が必要になるため、土地家屋調査士に依頼した方が確実です。
相続した建物の滅失登記は、相続登記をせずにできます。また、相続人が複数人いる場合は相続人の一人から登記が可能です。つまり、相続人間で話し合い、代表者が解体して滅失登記手続きをすることができます。
相続登記が省略できるとはいえ、必要書類を用意するのは手間がかかりますので、専門家に依頼しましょう。
他人名義の建物があるケース
自分の土地に他人の建物が建っている場合、土地所有者が勝手に建物を解体できません。このような場合も弁護士などの専門家に相談する必要があります。
建物の名義人の居場所が不明で連絡が取れない場合は、裁判所で建物収去土地明渡し請求訴訟を申し立てます。判決が出ると土地所有者が強制執行として建物を撤去できます。
自分の土地に存在しない他人の建物が登記されている場合で、所有者と連絡が取れない場合は建物滅失申出により、登記官に滅失登記をしてもらいます。
滅失申出は法務局が現地調査などを行うため、完了までに1か月ほどかかります。こちらも手続きが複雑なので、専門家にサポートしてもらいましょう。
滅失登記しないとどうなる?

滅失登記をしないままでいると過料の対象となるだけでなく、さまざまなトラブルの原因となります。特に物件の売買がスムーズに行えなくなる可能性があるため、確実に登記手続きを完了できるように準備しておきましょう。
過料の可能性がある
建物滅失登記の申請をしないまま放置した場合は、10万円以下の過料の対象となります。
不動産登記法第164条(過料)では、第57条(建物の滅失登記の申請)の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する、と規定しています。
過料は刑事罰ではありませんが、金銭的な負担が発生するため、必ず期限内に行いましょう。
土地売却に支障が出る
滅失登記をしていない土地は売却できないリスクがあります。登記上古い建物が残っている状態は購入希望者や金融機関から信用されず、売買契約やローン申請を拒否される事例があります。
買取サービス業者も見積もりで警戒する可能性が高く、買取不可になったり、査定額が相場よりも大幅に低くなる可能性は否定できません。
土地の売却だけでなく、存在しない家屋に対して固定資産税がかかり続けることになるため、税負担のデメリットをなくすためにも滅失登記は必要です。
まとめ

空き家を解体した場合は、建物滅失登記が必須です。放置していると過料の対象となるだけでなく、さまざまなデメリットがあるので、早めに準備しておき、解体工事が完了したらすぐに申請するようにしましょう。
申請は所有者が自分で行えます。法務局のウェブサイトに申請書の記載例が掲載されているため、書類の作成も難しくないでしょう。
ただし、相続人が複数いるケースなど、手続きが複雑な場合は専門家への相談をおすすめします。

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