境界フェンスのマナーとは?設置前に必ず確認すべき7つのポイント

境界フェンスのマナーとは?

境界フェンスは敷地の境界を明確にし、トラブル防止や不審者の侵入防止、家族のプライバシーを守るのに有効な外構設備です。

しかし、隣家に十分配慮して設置しないと、境界フェンスの存在が苦情や揉め事の原因となってしまうのも事実です。

この記事では、境界フェンスを設置する際のマナーや、万が一トラブルに発展してしまった場合の解決法などについて解説します。

目次

境界フェンスのマナーとは?

境界フェンスを設置する際のマナーにはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、特に気を付けておきたい点を4つ挙げるので、設置の際は怠らないようにし、隣家の住民に配慮した施工を心がけましょう。

境目の確認

境界フェンスを設置する前には必ず境界線を確認します。理由は隣家との境目を確認せずにフェンスを設置すると、知らない間に越境しているおそれがあるためです。

境界線は土地に設置された境界杭で確認できます。境界杭がない場合やずれている疑いがある場合は、以下のような方法で境界線を明確にしておく必要があります。

  • 法務局で登記簿を確認する
  • 測量士、土地家屋調査士に測量を依頼する

なお、境界線の確定には隣地住民の立ち合いと同意が必要です。特に古いブロック塀が境界線上にある場合、隣家と費用を折半して建てている可能性があり、自由に解体はできません。

境界を調べて自分の土地の所有物であることを確認したうえで工事に進みましょう。

隣家への事前相談

境界フェンスの設置を検討している場合は事前に隣家に相談しておく必要があります。

ある日突然、境界線にフェンスを設置されたら良い気分はしない、という人は少なくないでしょう。

今後お互いが気持ちよく生活するためにも勝手に工事を開始せず、フェンスの設置を計画している旨を伝え、了承を得てから着工することが大切です。

このとき、どのようなデザインのフェンスを設置しようとしているかも伝えておくと安心です。

「長年の付き合いだから」「隣家との関係は良好だから」と挨拶を省略しないようにしましょう。

日差しや風通しを考慮する

境界フェンスが隣家の一部分でも日陰を作ってしまわないか、風通しが悪くならないかなどを十分検討してフェンスの設置計画を立てることも大切です。

フェンス選びの際はできるだけお隣の日差しや風通しに影響が少ないものを選びましょう。

境界フェンスは、道路側のフェンスとは異なり、人目に付きにくいものです。必ずしもデザイン性を重視する必要はないので、機能性や境界フェンスの役割をよく考えて選ぶと失敗を防げます。

どのようなフェンスが良いのか分からない場合は、外構工事業者に相談しながら決めると良いでしょう。

圧迫感がないことも大切

目隠しを目的として境界線にフェンスを設置する場合、圧迫感が出ないように注意しなければなりません。

背が高すぎるフェンスや、隙間がないフェンスは圧迫感があるだけでなく、隣家の日当たりや風通しにも影響を与えるのでできるだけ避けましょう。

圧迫感を抑えながら視線を遮りたい場合は、フェンスを横格子タイプやルーバータイプ、すりガラス風のポリカパネルタイプを選ぶのがおすすめです。

境界フェンス設置ルール

境界フェンスを設置する際には、以下の点に注意して設置する必要があります。なかには法律で定められているものや自治体が定めたルールなどもあります。

近隣に迷惑をかけたり住まいの管理責任を問われたりする場合もあるので、事前に確認しておき、法律や条例に抵触しないように対策しましょう。

推奨されるフェンスの高さ

目隠し目的の境界フェンスは隣家の敷地と自宅の敷地が同じ高さの場合、1.8~2m程度がおすすめです。

隣家からの目線を遮れるだけでなく、不審者が簡単に乗り越えにくい高さなので防犯性も高められます。

フェンスの高さは隣家との高さの差がどれくらいあるかでも変わります。隣家の敷地の方が低い場合は0.8~1m程度、高い場合は2.8~3m程度が良いでしょう。

ただし、コンクリートブロック塀の基礎の上にフェンスを設置する場合は、建築基準法施行令により、ブロック+高さ=2.2m以下にしなければなりません。

民法で定められている境界線からの距離

民法234条では住宅の外壁は隣地境界線から50cm以内に近づけてはならないとしています。

一方で、フェンスは自分の敷地内に設置するのであれば、特に距離に関する規制は設けられていません。

ただ、境界線を越境してしまうと所有権が「共有」と判断されてしまうおそれがあるので注意が必要です。

また、建物は隣接する境界線から50cmギリギリに立てるのではなく、将来外壁塗装や屋根のメンテナンスをすることを考えておくことが大切です。

住宅の新築を計画している場合は、足場を設置することを想定して幅1m程度はスペースを確保しておいた方が良いでしょう。

自治体による条例や指導要綱がある場合も

自治体によっては、民法、建築基準法に加えて独自の条例や指導要綱を設けている場合があります。

たとえば、地域の美観を保つために特定のデザインの使用を制限しているケースがあるので、事前に確認しておくことが大切です。

また、防火地域や準防火地域では、構造物の高さや燃えやすい素材を使用した設備の設置が制限されることがあります。

木製のフェンスやウッドデッキを使用した場合、防火加工が施されているなど、防火性能を有していなければなりません。

こちらも事前にしっかりチェックしておき、エクステリアの材料を確認したうえで設置するようにしましょう。

境界フェンスで発生するトラブルの原因

境界フェンスの設置で発生するトラブルは、境界線の位置に関するトラブルも少なくありません。

ここでは特に気を付けておきたい2つのパターンを紹介します。

境界の認識の違い

境界線トラブルのなかで最も多いのが、境界線の位置を誤って認識しているケースです。

特に、ブロック塀がある場所が境界だと思い込んでいて工事に反対したり権利を主張したりする場合が多く、トラブルの原因になります。

境界ブロックや境界フェンスを設置した人が住んでいる場合は大きなトラブルになりにくいですが、不動産相続や財産分与、土地の売買などで物件の持ち主が変わった場合、境界線の勘違いが起こりやすくなるため注意が必要です。

境界標の位置が間違っている

境界標が土木工事などで抜かれて紛失したり、ずれてしまったりしていて、正しい境界線の位置が分からなくなった場合もトラブルが起こりやすいといえるでしょう。

ずれた境界を直す方法には「境界標復元」と「境界確定測量」の2つがあります。

境界標復元とは、既存の地積測量図をもとに、ずれた境界標を復元する方法です。境界標復元の際は、復元測量が必要です。

一方、境界確定測量は、隣地の所有者立ち合いのもと、正確な土地の面積を測り、境界線を確定します。

境界フェンス設置のトラブルを回避する方法

ではどのようにすれば、境界フェンスの設置をめぐるトラブルを防げるのでしょうか。

ここではフェンス設置工事をする前にやっておきたいトラブル回避法を紹介するので、実践して揉め事が起こらないように配慮しましょう。

口頭だけでなく書面(提案書・配置図など)で説明する

境界フェンスの設置を計画している場合は、隣家の住民に予定を伝えておくことが大切です。

突然工事が始まると心象が悪くなってしまうおそれがあり、小さな不満が大きなトラブルに発展するおそれがあります。

工事の計画について伝える際は口頭の挨拶だけでなく、工事の計画書や提案書、配置図など、書面を見せて説明しておくと安心です。

特にフェンスの高さやデザインを伝えておくと隣人もイメージしやすいでしょう。

要望や懸念をヒアリングしておく

挨拶の際には、隣人の要望や不安に思っていることをきちんと聞いておきましょう。

相手の気持ちを聞かないまま工事を進めてしまうと一方的に工事をした印象を与えてしまい、あとになって関係性が悪くなってしまう可能性も否定できません。

あらかじめ要望や懸念を聞いておき、外構工事業者と相談しながら可能な条件の範囲内で対応しましょう。施工面に関する話など説明が難しいものに関しては、業者に説明してもらうのがおすすめです。

また、工事中でも不具合が生じたらすぐに状況を報告してもらえるよう隣人に伝えておくと安心です。

工事スケジュールを事前に知らせる

工事のスケジュールが決まったら早めに近隣住民に伝えましょう。近所への挨拶は両隣、裏、道路向かいの家に行いますが、特に隣家にはスケジュールを詳細に伝えておくとトラブルを防げます。

現在、境界線にブロック塀やフェンスが建っていて、新しいものに交換する場合は、撤去のための解体作業で大きな音が発生します。

騒音や振動が発生する期間、車両の通行や作業員が出入りする期間などをできるだけ詳しく伝えておくと、協力を得やすくなるでしょう。

境界フェンストラブルの解決方法

万が一境界線フェンスを巡ってトラブルが起こってしまった場合は、以下の方法で解決を目指しましょう。トラブルは迅速に対処することが最大のポイントです。

個人では解決が難しくなる場合もあるので自分一人で悩まず、専門家に相談してください。

誰に相談したらよいのか分からない場合は、まずは施工した外構工事業者に相談してみるのもおすすめです。

土地家屋調査士や弁護士など専門家に相談

境界線に関するトラブルが起こった場合、まずは土地家屋調査士に相談しましょう。
土地家屋調査士は境界に関する専門家なので、第三者の公平な立場で境界を調査し、トラブルの解決に必要な依頼に応じてもらえます。

ADR認定土地家屋調査士であれば紛争になった場合に弁護士と共同受任で当事者の代理人になれます。

話し合いでは解決せず、訴訟に発展するような深刻なケースや、損害賠償を請求されたケース、法律上の相談をしたい場合は弁護士に相談するのがおすすめです。

筆界特定制度の活用

境界線を巡るトラブルの解決方法は裁判だけではありません。法務局による「筆界特定制度」を利用すれば境界トラブルの早期解決に役立ちます。

筆界特定制度では、土地の所有者に申請に基づき、筆界特定登記官が土地の筆界の位置を特定します。

ここでいう「特定」とは、新たに筆界を定めるのではなく、測量や実地調査などさまざまな調査を行ったうえで、もともと定められていた筆界を明らかにするという意味です。

制度の利用には申請費用と測量費用で数十万円程度かかりますが、裁判に比べて費用負担が少なく問題解決できる点が大きなメリットです。

まとめ

境界フェンスを設置する場合は、自分の敷地の内側に建てるものであっても隣家に十分な配慮が必要です。

隣家への挨拶や説明は面倒に感じるかもしれませんが、その後の関係性を維持するには重要なものです。

説明は外構工事業者が行ってくれる場合もあるので、業者と相談しながら近隣への挨拶も含めて計画を進めていくと失敗を防げます。

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