解体工事が引き起こす地盤沈下|家が傾く原因と対策を詳しく解説!

解体工事が引き起こす地盤沈下

解体工事では、発生する振動により地盤が沈下して家が傾いてしまうことがあります。

家が傾くとドアの開け閉めに影響が出るだけでなく、めまいや頭痛など体調悪化につながるおそれがあり、近隣住民の生活に影響を及ぼしかねません。

今回は、解体工事で地盤沈下が起こる原因や事前にできる対策、地盤沈下を防ぐための注意点を紹介します。

目次

解体工事による地盤沈下の主な原因

解体工事では、なぜ地盤沈下が起こるのでしょうか。地盤沈下は、元々の地盤が関係しているほか、不適切な施工方法が大きな要因になります。

ここでは主な地盤沈下の原因を紹介するので、解体予定の敷地の状況と照らし合わせて考えてみてください。

土留め工事のミス

土留め工事が適切でなかった場合、解体工事で地盤沈下を起こすことがあります。

「土留め」とは、土地に高低差がある場合に土砂が流れたり崩れたりしないようにレンガやブロック、コンクリートの擁壁を設置する外構工事です。

土留めは地下水位、周辺環境、地盤、互層などの条件によって施工法が異なり、材料もさまざまです。そのため、専門家でない限り見た目だけでは工法が適切かどうかは判断しにくいでしょう。

しかし、土留めから土砂や水が流れ出ている場合は注意が必要です。直後に地盤沈下して家が傾く可能性があります。

振動による土壌の密度変化

解体工事で発生する振動が土壌の密度を変化させ、地盤沈下の原因になることがあります。

緩く詰まっている土や砂は振動が加わると粒同士の噛み合わせがはずれて再配列されます。再配列されたことにより土壌の密度が高まり、地盤沈下につながるのです。

一般的に大きな地震に比べて工事の振動による地盤への影響は少ないですが、地盤の状況によっては家が傾く可能性もあるので注意が必要です。

地下構造物の撤去による不安定化

地中構造物や地下埋蔵物を撤去したことにより、地中の土圧バランスが崩れ、地盤が不安定になるケースがあります。

解体工事中に地下埋蔵物を発見した場合、解体作業を一時中断して撤去する必要があります。埋蔵物を埋めたままにしておくと、その上に建物を新築した際に基礎が傾いて地盤沈下のリスクが高まるためです。

ただし、地中埋蔵物を撤去したあと、適切に埋め戻しを行わない場合にも地盤沈下につながるリスクがあるため、業者には適切な処理が求められます。

地下水位の変動による地盤の変化

地下水位が何らかの原因で変動した場合、地盤沈下が起こる可能性があります。地面下には地下水が流れていますが、その深さは場所によってさまざまです。

掘削中に湧水があった場合、むやみに排出すると地下水の水位が低下します。これまで水で満たされていた部分に空気が入り、その空間が土の重さに耐え切れず、地盤沈下を引き起こしてしまうのです。

地面の掘削による湧水は、解体工事だけでなく、近隣で土木工事を行っている場合にも起こる可能性もあります。

近所で公共工事など、土木工事を行っている場合は、住宅に影響がないか注意しておきましょう。

不適切な埋め戻し作業による影響

解体工事で地下埋蔵物を撤去する場合、埋蔵物があった空間を埋め戻さなければなりません。しかし、埋め戻し作業を適切に行わなければ地盤沈下の原因となります。

埋め戻しの際には、既存の土地の水はけも考慮しなければなりません。雨水や浸透水が溜まりやすい状態だと地盤が軟弱になってしまうためです。

埋め戻し工事では、地盤の排水状況を調査し、土地に合った埋め戻し材料や工法を選択する必要があります。

解体工事による地盤沈下のトラブル回避法

解体工事による地盤沈下が原因で家が傾いてしまった場合、賠償請求が可能です。しかし、事前に対策をしておかないと、請求が難しくなるケースもあるでしょう。

そこで、近隣住民が解体工事による地盤沈下に備えるための対策を紹介します。

写真を撮影しておく

解体工事が始まる前に写真撮影し、家の状態を記録しておくと工事が原因のトラブル解消に役立ちます。

たとえば外壁や内壁にひびが入った、建物が歪んだために室内のドアに隙間があいた、などは写真で証明できるでしょう。

写真では住宅全体の傾きを示すのは難しいですが、外壁、基礎、犬走り、内壁、天井などひびが入るおそれがある場所は写真に残しておくと有効です。

写真撮影の際は、デジカメの日付が合っているか確認する、当日の新聞と共に撮影するなどすると「昔の写真」などと疑われるトラブルも避けられるでしょう。

事前に家の傾きを調査しておく

解体工事前と工事後の住宅の状態の違いを客観的に証明できるものが家屋調査です。

家屋調査は、一般的に解体業者ではなく第三者の調査会社やコンサルタントが実施します。調査会社の担当者が建物の外部と内部の点検を行い、点検した箇所は撮影・記録しておきます。

家屋調査をしておけば、工事前に少々家に傾きがあっても、工事により傾きが大きくなった場合に補償してもらえる可能性が高くなるでしょう。

家屋調査は主に施工する解体業者から提案されますが、提案されていなくても解体工事の影響が気になる場合は自分で依頼すると安心です。

賠償請求は工事との因果関係の証明が必要

賠償請求が認められるためには、解体工事が原因で地盤沈下が起こったことを証明できなければなりません。

解体工事業者は家主の訴えのみでは、家の傾きが解体作業が原因で起こったものなのか、そうでないのかを判断するのは難しく、補償できない場合があります。

そのようなケースを避けるためにも、解体工事が始まる前に、上で紹介した写真撮影や家屋調査をしっかりと行い、工事前と工事後の家の状態を比較できるようにしておくことが大切です。

地盤調査の種類

建物を解体する前にはその下の地盤に問題がないか調査する必要があります。

地盤調査をすることで、建物の倒壊や周辺への被害、地盤沈下を防ぐだけでなく、工事のコストを抑えることが可能です。

地質調査

地質調査は、地中の地層構成や土の強さを知るための調査です。調査をすることで、地中に支持層と呼ばれる硬い地層がどれくらいの深さにあるのかが分かります。

建築工事や解体工事では、建物を安全に支えられるかどうかを地質調査で調べます。特に日本では軟弱地盤や傾斜地に家を建てていることが多く、大雨や台風などの災害も多発しているため、地質調査は重要です。

調査方法には掘削調査、地質レーダー調査、地震探査、地盤レベリングなどがあります。

地盤調査

地盤調査は、地盤の強度や地盤沈下の可能性の有無、地盤を改良する必要があるかどうかを調査します。

調査の方法には、貫入試験(ボーリング試験)、スウェーデン式サウンディング試験、表面波探査などがあります。

貫入試験は地面に穴を掘り地層を直接採取して調べる、マンションなどの大型の建物で用いる方法です。スウェーデン式サウンディング試験は5~10mの比較的浅い地盤を調査する方法で、鉄棒を回転させながら地面に挿入し、地盤の固さを測定します。

表面波探査は地面に振動を与え、振動の伝わり方から地盤の特徴を調べます。

建物調査

建物調査は、解体予定の建物の構造や建築材料、老朽化の度合いなどの調査です。調査方法は、外観調査、内観調査、材料調査などがあります。

外観調査では、外壁、屋根、基礎などを確認し、内観調査では、天井、床、内壁のほか、水回りなどをチェックします。材料調査は、建物がどのような材料でできているのかの確認です。

建物調査を行うことで、作業の注意点を把握できます。そのほか、解体した家屋の撤去の手順をシミュレーションできるため、安全で効率的な解体工事を行ううえで欠かせません。

地盤沈下を防ぐために解体工事で注意すべきポイント

ここでは、解体工事業者が地盤沈下を防ぐために注意している点を紹介します。

自宅周辺の地盤についての情報がある場合は業者と共有し、周辺住民への影響をできるだけ抑えた工事を実施できるようにしましょう。

適切な重機の選定と作業

解体工事で地盤沈下を防ぐためは、作業で発生する振動を極力抑えることが大切です。解体作業は主に重機を使用して行いますが、重機によって発生する振動の大きさは変わります。

振動が少ない重機を使用したり、場合によっては作業員による手壊し解体を選択したりするなどの対応方法が有効です。

ただし、手壊し解体はコストがかかるため施主にとって負担になります。そのため、解体工事業者には地盤への影響と費用のバランスを取った見積もりと工事計画が求められます。

振動や騒音の管理と近隣への配慮

解体工事業者は、建設機械や工法の工夫に加えて、法令に則った騒音や振動への配慮をしなければなりません。

解体工事で発生する騒音は騒音規制法により85デシベル以下、振動は振動規制法により75デシベル以下に調整する必要があります。

大きな振動は地盤沈下のリスクを高めるだけでなく、近隣地域の住民へ大きなストレスを与えたり、規制に違反すると市区町村から改善勧告の対象となったりする可能性があるので注意が必要です。

解体工事業者は基準を超えた騒音や振動を起こさないよう、事前にしっかりと計画を立てて作業しなければなりません。

解体工事に関するよくある質問

解体工事では数日間振動が続きます。そのため、解体工事を実施する場合、隣家に影響があるのではないかと不安になることもあるでしょう。

ここでは、解体工事で多く寄せられる質問とその答えを紹介するので、疑問解消に役立ててください。

地盤沈下で家が傾いている可能性がある症状とは?

地盤沈下で家が傾くと、柱や梁に歪みが生じて窓やドアの開け閉めがしにくくなるといった不具合が起こります。

また、気密性や断熱性が失われて、エアコンの効きが悪くなるだけでなく、雨漏りリスクも高まります。最悪の場合、配管にひびが入り、水漏れ、ガス漏れするおそれもあるので注意が必要です。

また、家が傾いていることで三半規管に影響が出て、めまいや吐き気、頭痛などの症状や、不眠、食欲不振に悩まされることも。このような症状があらわれたら、家が傾いていないか調査を依頼した方が良いでしょう。

解体工事の振動で家が揺れるときの苦情先はどこ?

解体工事で振動が気になるときは、近隣住民は発注者である施主へ相談するのが一般的です。

ただし多くの場合、挨拶回りの際に工事に関するチラシを配布しており、そのチラシに苦情の窓口となる解体業者の電話番号が記載されているので、チラシがある場合は記載された営業担当者または工事責任者の電話番号に連絡してもらうようにしましょう。

施主や解体業者に伝えても状況が改善しない場合は行政に相談する方法もあります。業者が法律で定められたルールを守っていない場合は指導される可能性があります。

まとめ

解体工事では振動はつきものです。しかし、その振動によって地盤沈下が起こり、工事現場周辺の家が傾いてしまうおそれもあります。

家の傾きは家の強度や暮らしやすさ、健康に影響を与えてしまうため、早急に補修する必要があります。

解体業者は十分注意を払って作業をしていますが、振動の影響で不安に思うことがある場合は遠慮なく相談しましょう。

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