解体工事では振動や騒音、粉塵などで周辺住民に迷惑をかけるだけでなく、家の中にいたネズミやゴキブリが逃げて拡散し、ほかの家に住みついてしまうおそれがあります。
今回は、解体工事の際のネズミ駆除の必要性や空き家にネズミを住みつかせない方法、防除方法について解説します。
解体工事の前にネズミ駆除は必要?
解体工事をする前はネズミ駆除をしておかなければなりません。ここではその理由や行政から義務付けられている生息調査などについて紹介します。
事前に必要性を理解して、早めに駆除の準備をしておきましょう。
ネズミの住み着きやすさは周囲の環境次第
ネズミが建物に住みつきやすいかどうかは、周囲の環境に大きく影響を受けます。
とくに飲食店が密集した繁華街の近くや公園、山、川、畑など、自然が豊かな場所は、ネズミにとって住みやすい環境です。
ネズミはエサを求めて移動するため、エサに困らない場所に定着する傾向があります。ごみ置き場や毎日大量の生ごみが発生する繁華街の近くで解体工事を行う場合は、事前にしっかり駆除しておいた方が良いでしょう。
ネズミが近隣の住宅に移動するリスク
解体工事ではこれまで住処にしていた家を失ったネズミが一斉に移動し、近隣の住宅を新たな住処にする可能性があります。
ネズミは非常に繁殖力が強い動物です。妊娠週数は約12~20日と短く、一度に4~10匹ほどの子どもを生みます。
さらに年に5~6回出産するので、一年間で一匹から20~60匹もの子どもが生まれます。
大繁殖したネズミは不衛生で病原菌を媒介しているリスクや、電線をかじって火災を引き起こすおそれがあるため、解体工事前に駆除しておかなければなりません。
自治体によっては生息調査が義務になっている
市区町村によっては、ネズミの生息調査を義務付けている場合があるので、早めに自治体の窓口に問い合わせておきましょう。
生息調査はネズミの近隣への拡散を防止するのに有効です。生息調査後は報告書を作成、ネズミの生息を確認した場合には駆除も行い、ネズミの拡散を防ぎます。
もし自治体が生息調査を義務付けていなくても、ネズミがほかの家に入り込み被害を出した場合にトラブルにつながるおそれがあるため、解体工事を行う場合は実施しておくことをおすすめします。
ネズミが住処にしやすい場所
空き家の中でネズミが住処にしやすい場所はどこなのでしょうか。
ここでは、住戸の中でネズミが好む場所を紹介するので、事前に潜みやすい場所を把握しておき、入口を塞ぐなどの対策をしておきましょう。
天井裏や屋根裏
ネズミは暗く狭い場所が好きなので、天井裏や屋根裏に潜んでいることが多くあります。
運動能力が高く、跳躍力があり、乾燥した場所を好むクマネズミは天井裏や屋根裏に潜む傾向があるといえるでしょう。
屋根裏以外にも壁の中のように断熱材がある場所や押し入れの奥などは、暗くて暖かく、外敵もやってこないため、ネズミにとっては快適な住処です。
屋根や押し入れの天井に隙間があると、そこからネズミが侵入してきますが、特にネズミに狙われやすいのがトタンの外壁です。
劣化して基礎との間に隙間ができやすく、ネズミの侵入経路にされてしまいます。
キッチン
キッチンもネズミが発生しやすい場所です。ネズミは高温多湿で食品が豊富にある場所に集まるので、特に冷蔵庫の下やキッチンの床下を好む傾向があります。
雑食性のネズミは生ごみや人間の食べ残しをエサにするため、キッチンはエサを確保するのに格好の場所です。
システムキッチンにはガスや水道、給湯器などの配管や電気の配線が多くあり、壁と床につながっています。そのため、これらの経路を利用してネズミが侵入しやすく、さらに食べ物もあるため、居心地の良い場所といえるでしょう。
床下
ネズミは床下も好んで住処にします。キッチンや浴室、洗面所などの水回り周辺は湿気が多く、水と一緒に食料となる生ごみも流れてくるため、ネズミにとって最適な環境です。特に水を好むドブネズミは水回り周辺の床下を好みます。
庭や床下は地面が柔らかく、そこに穴を掘って家の中に侵入してくることがあるので注意が必要です。
庭に物が多いと、ネズミの隠れ場所が増え、侵入されやすくなるので、こまめに整理整頓して不要なものは処分しましょう。
逃げ込んできたネズミによる被害とは?
解体工事で逃げ込んできたネズミが自宅に住みつくと、足音によるストレスだけでなく、健康被害や、かじられた部分の修理で経済的負担が発生するなど、さまざまな被害を及ぼします。
ここでは自宅にネズミが住みついた場合に起こりやすい被害を紹介するので、ネズミの危険性を再確認してください。
衛生面で危険性
ネズミの存在は住宅で生活する人の健康面に危険を及ぼすおそれがあるので十分注意が必要です。
ネズミのフンにはレプトスピラ菌やハンタウイルスなどが含まれています。レプトスピラ菌は吐血や血便などの症状、ハンタウイルスは出血、腎不全、ハンタウイルス肺症候群などを引き起こすリスクもあります。
そのほか、サルモネラ症、ラッサ熱などの感染症を媒介したり、ネズミによりアナフィラキシーショックを引き起こしたりするケースも。
また、ネズミはツツガムシやイエダニ、ノミ、シラミなどの寄生虫も持っているので、人間にとっては非常に危険です。
経済的な損失
ネズミは家のなかのあらゆるものをかじるため、修理による経済的損失を引き起こします。
ネズミは歯が伸び続けるので、固いものをかじって歯を削る習性があります。そのため、家のなかのあらゆるものをかじってしまうのです。
柱や家具などの木材のほか、洋服や金属、ゴム、コンクリートもかじります。電線や配管をかじられると漏電による火災のリスクが高まり、非常に危険ですし、家屋のあちこちをかじられると住宅の資産価値も低下してしまうリスクもあるでしょう。
ネズミの主な駆除方法
ネズミの駆除方法は、大きく分けて自分で対応する方法と業者に依頼する方法の2つがあります。
ここでは、その2つの方法を紹介するのでどちらが自宅のネズミ対策に有効なのか検討してみましょう。
市販されている薬剤を使用する
ネズミの駆除方法の代表的なものに殺鼠剤という、いわゆる毒エサを使う方法があります。
エサに薬を混ぜて設置し、それを食べたネズミが駆除される仕組みです。
殺鼠剤には「蓄積毒剤」と「急性毒剤」に分けられます。
蓄積毒剤は4~7日程度ネズミが連続して食べると毒が蓄積されて死亡する仕組みです。比較的安全に使用できるため、最近では蓄積毒剤が広く活用されています。
急性毒剤は即効性があり、食べたネズミは3~5時間後に死亡します。効き目は非常に高いですが毒性が強いため、子どもやペットがいる家庭では十分注意しなければなりません。
駆除専門業者に依頼する
ネズミに一度住処にされると、自分だけで対処するのは難しいため、プロに駆除を任せた方が安心です。
業者のネズミ防除の施工方法は建物の状況に合わせて粘着シート、殺鼠剤散布、侵入経路遮断などを行います。
また、建物を解体せず継続して使用する場合は、定期的な防除を施すプランもあります。
ネズミ駆除の専門業者なら、ネズミ駆除だけでなく、フンや菌で汚染された場所を清掃してもらえたり、再発防止策を施してくれたりするため、ネズミ撃退の確実性が増すでしょう。
空き家にネズミが住み着くのを防ぐ方法
空き家をネズミの住処にしないためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
ここでは、自分でできるネズミを寄せ付けない方法を紹介するので、できるだけ複数の方法を併用して取り入れましょう。
家屋内を清潔な状態に保つ
空き家にネズミの住処にしないためには、何よりも屋内をきれいな状態に保ち、管理することが大切です。
食品等が放置されているとネズミの格好の餌場となってしまうので片付けましょう。
また、巣の材料を放置しないことも大きなポイントです。段ボールや新聞紙、布切れなどを巣材として集めるので、これらのものは処分しましょう。
布類や紙類を放置するとカビやダニの温床となってしまいます。掃除して清潔な状態にすることが大切です。
捕獲器や粘着シートを設置する
捕獲器や粘着シートを設置してネズミを駆除する方法もあります。捕獲器にはカゴ式とバネ式があり、カゴ式は一般家庭に出るネズミなら大抵の種類の捕獲が可能です。
バネ式はカゴ式に比べてサイズが小さいため、狭い場所に設置できるメリットがあります。
粘着シートは、シートに粘着剤が塗布されており、上を通ったネズミを捕獲するアイテムです。さまざまな種類が販売されており、捕獲器よりも取り扱いがしやすく初めて使用する場合におすすめです。
忌避剤を活用する
ネズミ予防には、忌避剤もおすすめです。忌避剤の最大のメリットは、ネズミを殺さずに追い出せること。姿を見たくない人にも安心して使用できます。忌避剤にはスプレータイプ、設置タイプ、燻煙タイプがあります。
スプレータイプは、ネズミを寄せ付けたくない場所に直接スプレーし、忌避効果を期待するものです。即効性がある一方で持続性に欠けるという欠点があります。
設置タイプはネズミが入り込みやすそうな場所に設置して侵入を防ぎます。天井裏や床下、物置などに有効です。
燻煙タイプは一気に広い範囲へ効果が期待できます。使用後換気は必要ですが人の手が届かない場所にも有効なので室内から見えない場所への対策に効果が期待できるでしょう。
LEDストロボライトを設置する
光に弱いネズミには、ストロボライトを使って忌避する手段は有効といえるでしょう。
ネズミは夜行性の動物で、天敵から身を守るために夜になってから行動を開始します。明るいところが苦手なので、LEDストロボライトなどの光が当たる場所は避けるようになります。
LEDストロボライトの最大のメリットはその安全性です。薬剤を使用しないため、子どもやペットがいる家庭でも安心して使用できます。
さらに捕獲器のようにネズミを見ることもなく、追い払ってくれる点も安心です。
解体工事に関するよくある質問
ネズミの姿が見えない場合は特に、解体予定の建物のネズミ駆除についてさまざまな疑問が湧いてくるでしょう。
ここでは解体工事の際のネズミ駆除についてよくある質問とその回答を紹介します。事前に疑問を解消してネズミの被害を広げないための対策をしておきましょう。
ネズミ駆除の費用はどれくらいかかる?
ネズミの駆除費用はプロの駆除業者に依頼した場合、およそ3~5万円が相場です。
駆除方法は住宅の状況や被害の大きさによって異なりますが、薬剤や捕獲機を使うのが一般的です。さらに出入口を塞ぐなどして再発生を防ぎます。
ネズミの駆除アイテムはホームセンターにも売っているので自分で対策すると安く済むかもしれません。
しかし、少しでもネズミが生き残っていたり出入口が開いたままだったりするとあっという間に繁殖して再び被害を受けてしまいます。
ネズミの防除は地域の保健所では対応できないので、害獣駆除の専門業者に依頼して、徹底的に駆除してもらいましょう。
ネズミ駆除に超音波は効果ないって本当?
ネズミの駆除アイテムの一つに、超音波を発生させて住宅からネズミを追い出す超音波器があります。超音波器はネズミに聞こえる周波数の音を発生させ、住みにくい環境だと認識させて追い出すものです。
安全に、ネズミの姿を見ずに駆除できるのが大きなメリットでしょう。一方で、駆除効果が長続きしないのがデメリットです。
設置当初は超音波に警戒して逃げますが、慣れてくると危険がないと判断して戻ってきてしまいます。そのため、超音波器だけでは対策としては不十分です。他の駆除方法と組み合わせることで効果を発揮できるでしょう。
まとめ
解体工事では騒音や振動だけでなく、ネズミやゴキブリなどが逃げ出して近隣の建物に入り込み新たな被害を出すおそれがあります。
近所に迷惑をかけないためにも、施主が率先して事前に生息調査と駆除を行わなければなりません。
ネズミ駆除や害虫駆除については、解体工事業者に相談すれば対応してくれるケースがほとんどです。解体工事を問い合わせる際に、ネズミ駆除についても聞いておくと安心です。
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