解体工事で発生するほこりの苦情|粉塵トラブルを回避する方法とは?

解体工事で発生するほこりの苦情

解体工事で騒音、振動と共に避けて通れないのが粉塵の飛散です。解体作業ではほこりを一切出さずに作業することはできません。

近隣トラブルを避けるため、作業中に発生する粉塵については、解体業者はもちろん、施主も対処法を理解しておく必要があります。

この記事では、解体工事で発生するほこり、粉塵について、起こりうる被害、トラブルの内容や対応方法を紹介します。

目次

解体工事で発生する主なほこりの苦情

解体工事でほこり、粉塵が発生すると、具体的にどのような苦情につながるのでしょうか。

ここでは、代表的なクレームの内容を4つ挙げるので、事前に把握しておきましょう。

洗濯物への被害

濡れた洗濯物はほこりや小さなゴミが付着しやすく、解体工事で発生する粉塵がついてしまうおそれがあります。

近隣の洗濯物を汚してしまう可能性があるため、工事開始日までに連絡して、作業日は洗濯物を干さないように協力を仰ぎましょう。

なかには、どうしても外干ししたいという人もいるかもしれません。そのような場合でも、解体工事ではほこりをゼロにすることは難しいこと、ほこりが付着してしまうと洗い直しする必要が出てしまうことを丁寧に説明し、理解してもらいましょう。

車への被害

解体現場の近くに駐車している場合、コンクリート片などが飛散して車に傷をつけ、損害賠償を請求されてしまう可能性も否定できません。

粉塵は細かいため、カーポートなど、屋根がある駐車場に停めていても車を汚してしまいます。車に乗ろうとしたら洗車しなければならないほど汚れていたら、持ち主は不快に思うでしょう。

コンクリートには石灰が含まれており、濡れると固着しやすく簡単な洗車では取れにくいので、事前に車の移動に協力してもらうか、業者に専用のシートで養生してもらうようにしましょう。

住居への被害

解体工事で発生するほこりは、近隣の建物にも影響を及ぼすことを忘れてはいけません。

粉塵が窓や外壁を汚してしまったり、室内に侵入したりして迷惑をかけるケースがあります。

外壁や窓は雨が降ればある程度は洗い流されるでしょう。しかし、室内にほこりが入ってきてしまうと、掃除が大変になったり、健康への不安が出たりしてストレスになることがあります。

被害を最小限に抑えるには、隣人に作業中は窓を閉め切ってもらうよう伝えておく必要があります。

庭や植木への影響

建物にほこりが付着するのと同様に、近所の庭やベランダの植木など、植栽を汚してしまうおそれもあります。

植栽にこだわっている家や、園芸好きの人にとっては、解体工事の粉塵は不快なものでしょう。特に家庭菜園をしている場合、口に入る物なので気になる人も多いはずです。

植物にはビニール製のシートで養生して粉塵がかからないように対策できます。近隣住民が希望した場合には業者に相談して、対応してもらいましょう。

解体工事中に発生するほこりが人体へ及ぼす影響

解体工事で発生するほこりの粒子は非常に小さく、吸い込むと呼吸器系の疾患を引き起こすおそれがあります。

特にアスベストなどがほこりに含まれていると、長期的な健康被害につながる可能性があるため注意が必要です。ここでは、粉塵濃度の基準や対策について紹介します。

粉塵濃度の基準値は設けられている

解体工事では粉塵濃度について、法律で基準が定められているわけではありません。法律上の規定はありませんが、厚生労働省が作業環境における粉塵の許容濃度を0.5mg/㎥と、基準を設けています。

参考:作業環境測定対象物質の管理濃度・許容濃度等一覧|厚生労働省

また、国土交通省の「建築物解体工事共通仕様書」では、「近隣住民に対する外気中の粉塵許容濃度は一般に0.2mg/㎥以下に抑制する工夫が必要である」としており、近隣に影響が出ないよう養生や散水などによる対策が求められています。

参考:建築物解体工事共通仕様書|国土交通省

アスベストを含む粉塵への対策が必要

アスベスト(石綿)を使用した建物を解体するときは、特別な対策が必要です。

大気汚染法により、解体業者は、解体工事を行う前にアスベスト、つまり「特定建設材料」の使用の有無を調査することが義務付けられています。

アスベスト等の使用の有無を書面調査、目視調査した結果、使用が明らかにならなかった場合は、さらに分析調査を行うか、アスベストを含有するものとして取り扱います。

アスベストが使用されている建物の解体作業では足場と養生シートを設置し、使用レベルによっては集塵・排気装置の設置、作業場の隔離が必要です。また、近隣住民への告知を行ったうえで作業を実施します。

解体工事の粉塵を最小限にする方法

ここでは解体工事で発生する粉塵をできるだけ抑えるための対策を紹介します。

契約前に解体業者が以下に挙げる対策法を取り入れているか確認して、近隣に配慮した工事を実施している業者を選ぶようにしましょう。

養生シートの設置

解体工事では養生シートを使用して粉塵の飛散対策をするのが一般的です。

養生シートは建物を覆うように設置し、シートに散水して濡らすことで粉塵をシートに付着させ、飛散をより効果的に抑えます。

解体工事で使用される養生シートは、主に以下の4種類です。

  • 防音シート
  • 防炎シート
  • メッシュシート
  • プラスチックシート

解体業者は建物の状況と周辺環境、作業内容に合わせて最適なシートを使用します。

騒音をできるだけ抑えたいなど、現場周辺の環境で特に注意してもらいたい事項がある場合は、あらかじめ解体業者に情報を伝えておくと、業者も対応しやすいでしょう。

車専用の養生対策

隣家の車が粉塵の被害に遭うことが予想される場合は、ビニールシートで養生する予防策を講じます。

解体業者が車専用の養生シートを用意してくれるので、あらかじめどれくらい必要になりそうなのか、影響が及びそうな家の車の数をチェックしておくとスムーズです。

近隣で車を駐車している家がある場合は、挨拶回りの際に事情を説明し、粉塵による車への影響の可能性を伝えます。そのうえで車を一時的に移動してもらうか、養生で対応するか確認しましょう。

散水作業の実施

作業前後や作業中に、現場全体と、特に粉塵が発生しやすい建材の破砕作業場所周辺に散水を行うことで、粉塵の発生を防ぎます。

散水はホースで作業員が行うほか、散水装置や重機を利用して実施する場合などさまざまです。

定期的に散水を行うことで、粉塵が湿気により重くなり、地面に落ちやすくなって、粉塵の飛散を防げます。

散水は敷地内の水道を使用するため、工事中は空き家住宅でも水道を停止しないようにしましょう。

散水で使用する水道料は、施主が負担するのが一般的です。水道代は一軒家の場合5,000~10,000円が相場となります。

作業時間の調整

解体工事でクレームが起こった場合は、作業時間をずらすのも一つの方法です。

法律では、解体工事の作業ができる時間は午前7時~午後7時と定められています。

しかし、法律に則った時間帯に作業していても苦情が発生するケースは少なくありません。この場合、必ずしも要求に応じる必要はありませんが、少し時間を調整するだけで、近隣住民のストレスが軽減する可能性があります。

法律では問題ないからといってクレームを無視せず、近隣住民とよく話し合って、できる範囲で対応していきましょう。

参考:騒音規制法

解体工事の苦情を抑えるポイント

では、解体工事で苦情をできるだけ抑えるにはどのようにすれば良いのでしょうか。

ここではクレームを最小限にするためのポイントを挙げているので、解体工事業者と相談してどちらが何を行うのかを決めておきましょう。

近隣住民への挨拶と説明の実施

解体工事の苦情を抑えるには、事前に挨拶回りをして、工事の理由と騒音や振動、ほこりが発生する旨を伝えておくことが大切です。

挨拶のタイミングは作業開始日の7~10日前が一般的です。平日は不在の方が多いため、できるだけ休日の午後に行います。

挨拶は最低限、両隣と向かい、裏の家に行いますが、車両の通行等でご迷惑をかけそうな家には挨拶しておいた方が良いでしょう。

解体業者の多くは、挨拶回りを代行してくれます。しかし、依頼人である施主も同行して、直接挨拶した方が好印象です。

作業前後の清掃の徹底

解体工事現場では、作業の前後と合間に清掃を行っておくと、粉塵の蓄積を防ぎ、クレームを最小限に抑える効果が期待できます。

粉塵が蓄積すると、近隣住民や作業員が吸い込む可能性が高まり、健康被害のリスクが発生しかねません。

また、整理整頓されていない現場は作業効率が悪くなったり、つまずきや転倒事故が起こったりするおそれもあります。

清掃の徹底は、近隣住民と作業員が共に快適な環境下で効率よく作業を進めるために、作業現場では重要視されています。

クレームが発生した場合は迅速に対応する

万が一クレームが発生してしまった場合、迅速に対応することがトラブルを大きくしないためのポイントです。

クレームを受けたらすぐに解体業者に連絡して、対応してもらいましょう。その後、なるべく早く近隣住民にお詫びと対応した旨の説明に行くことが大切です。

時間が経てばその分相手の怒りも大きくなってしまいます。すぐに対応できない場合でも、早めに訪問して現状について説明するようにしましょう。

解体工事に関するよくある質問

解体工事を検討していると、さまざまな疑問が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

ここでは、解体工事に関する主な質問とその回答を紹介しています。事前にチェックして疑問を解消した状態で工事の計画を進めてください。

解体工事で養生シートは義務ですか?

養生シートの設置はアスベストが使用されていない建物の解体工事では法律で義務付けられていません。

しかし、解体作業の決まりごとがまとめられている「建築物解体工事共通仕様書」では、「養生シート等は、隙間なく取り付ける」と明記してあり、養生シートの必要性が示されています。

養生シートは防塵、騒音対策、工具や資材の飛散・落下事故防止のためには必要なものです。費用を抑えたいからといって養生シートなしで解体工事を進めるのは避けましょう。

解体工事で発生する粉塵は法律で規制されていますか?

上でも紹介しましたが、解体工事で発生する粉塵について、法律や条例等による規制はありません。

しかし、アスベストに関しては、厚生労働省、国土交通省、環境省などが解体工事やがれきの処理方法について規制強化に取り組んでいます。

アスベストを使用した建物を解体する場合は、解体業者が現地調査の結果を施主に書面で報告し、工事現場にも掲示しなければなりません。

また、解体作業では工期短縮や過度な値引き交渉など、作業基準の遵守を妨げる行為を禁止しています。

アスベストは戦後の高度経済成長期を中心に広く使用されていたので、この時期に建てられた建物を解体する場合は注意が必要です。

解体工事の苦情はどこを経由して入る?

解体工事のクレームは、一般的に施主に直接入ります。施主は相手の話をしっかりと聞いたうえで、営業担当者に相談しましょう。

現場作業員は作業内容以外の細かい事情を知らないケースもあります。作業員に伝えても十分な対応ができない場合もあるので、営業担当者または現場責任者に伝えるようにしましょう。

近隣住民によっては作業現場に直接クレームを入れる人もいるので、挨拶回りの際に、工事に関しての困りごとは、気軽に施主に連絡してほしい旨を伝え、電話番号を教えておくと安心です。

まとめ

解体工事ではほこりの発生はつきものです。近隣の建物や洗濯物を汚すおそれがあるので、事前の挨拶をしっかり行い、理解を得ながら進めましょう。

解体業者はさまざまな現場を経験しているので、トラブルを未然に防ぐために、適切な対策を取って工事を開始します。

心配なことがあったら見積もりの際に遠慮なく担当者に伝え、対策を講じてもらうと安心です。

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