空き家などの解体工事で「クレームが起こったらどうしよう」と心配されている方もいるかと思います。解体工事は騒音や振動が出るため、トラブルが発生しやすい工事です。
この記事では、解体工事で起こりやすいトラブルの事例やその対策について解説するので、解体工事を検討している場合は参考にしてください。
解体工事で発生しやすいトラブルの事例15選
解体工事のトラブルは、近隣住民とのトラブルと、業者とのトラブルの大きく2つのトラブルに分けられます。
どちらのトラブルも、事前に対策しておけば回避できるものが多いので、具体的な事例を知っておくと安心です。
ここでは、解体工事で特に起こりやすいトラブルを紹介します。
工事前に近隣住民への挨拶を怠っている
解体工事の実施を住民に知らせないまま始めてしまうと、トラブルの原因になります。誰しもある日突然家の前を大きなトラックが何度も通行したり、大きな音や振動が一日中鳴り響いたりしたら戸惑うでしょう。
近隣住民に不快感を与えないためにも、解体工事の前には挨拶を行っておく必要があります。工事の挨拶回りは業者が行ってくれることが多いですが、施主自らも直接挨拶をすることが大切です。
挨拶の際は、工期や騒音・振動について説明しておきましょう。
適切な足場・養生の設置がされていない
業者が足場や養生を適切に設置していないことが原因でトラブルが起こるケースにも注意が必要です。
養生シートをしっかりと設置していないと騒音、粉塵が近隣に広がってしまいます。粉塵は洗濯物や車を汚すなどトラブルにつながる可能性があるため、作業中は現場がシートで覆われているかチェックしましょう。
足場がきちんと設置されていないと、足場の倒壊や転落事故など、深刻な事故を引き起こすおそれがあります。足場は法令で定められたルールに従い、適切に設置されていなければなりません。
安全な足場を設置するためには、見積もりの際に足場費用が相場に比べて安すぎないか確認しておきましょう。
予想外の建物への損傷が発生する
解体工事が原因で隣家や自宅、公共物を破損させてしまうこともあります。重機がぶつかってしまった、足場の資材が外壁に当たってしまった、工事で発生した振動で外壁にひびが入ってしまった、など破損の影響はさまざまです。
破損の責任は解体業者にあり、補修工事も解体業者が行います。ただし、施主としても誠意を持って隣家にお詫びに行くなどの対応が求められます。
トラブル発生が判明したらできるだけ早く損害を与えてしまった家を訪問するようにしましょう。
車に傷がついてしまう
解体作業中に粉塵がついて車が汚れてしまったり、破片が飛んで傷がついてしまったりするケースがあります。
工事期間中、自宅の車は別の場所に駐車するようにし、隣家の車にも影響が出そうな場合は、移動してもらうなど協力してもらうと傷をつける心配がなくなるでしょう。
もし移動できない場合は、業者が車をシートで保護します。業者によっては、工事現場に近い場所に駐車している車も家主に断ったうえでシートで保護してくれる場合もあります。
路上駐車による通行の妨げになる
解体工事の現場周辺に業者の車が路上駐車されていることで、ほかの車や歩行者の通行の妨げになってしまうケースがあります。
現場の前の道路が広い場合は問題になりにくいかと思いますが、狭い場合は隣家の車の出し入れがしにくくなるなど、トラブルの原因になります。
事前に敷地内に駐車できないか、工事期間中に近くに駐車場として利用できるスペースはないか検討しておきましょう。難しい場合は敷地前の道路に駐車することになりますが、隣家が車の出し入れをしたいときや、配送業者の車が通行したい場合には一時的に車両を移動させるなどの配慮が必要です。
隣人が車を使う時間が分かる場合は事前に業者に伝えておくとスムーズです。
粉塵やほこりが近隣に飛散する
粉塵やほこりの飛散は近隣トラブルの原因になりやすいため注意点として覚えておかなければなりません。
上でも紹介した通り、養生シートを適切に設置していないと粉塵・ほこりが飛散してしまいます。しかし、養生シートをしっかりと設置しても粉塵・ほこりの飛散をゼロにすることはできません。
業者に作業中は散水して粉塵の飛散量を減らす工夫をしてもらうほか、事前に近所に粉塵が発生する日を知らせておき、その日は洗濯物を干さない、窓を閉めるなどして協力してもらうと、トラブルを回避できます。
騒音や振動が発生する
解体工事のトラブルの代表的な原因が騒音と振動です。解体工事では重機を使って建物を解体します。重機から発生するエンジン音や崩れたがれきが地面に落ちる音が近隣にとってはストレスになるでしょう。
また、基礎を壊す際の振動も地震のような揺れが数日間続くため、近隣住民にとってストレスの原因となります。
建物の解体は3~7日程度、基礎の撤去は2~3日程度かかります。その間は大きな音や振動が発生しやすいので、事前に周知しておくことが大切です。
解体業者が時間外作業を行っている
解体業者が法律で定められた時間を守らずに作業を行い、騒音トラブルを引き起こす場合があります。
解体工事の作業時間帯は、騒音規制法により午前7時~午後7時、1日10時間以内と決められています。さらに作業日は連続6日までとなっており、最低でも週に1日は休まなければなりません。
悪天候などで工事が遅れているからといって、決められた時間を超えて作業はできません。長時間の作業は作業員にとっても危険です。事故を防ぐためにも、法令を遵守しているかどうかも業者選びのチェックポイントの一つです。
解体工程が遅延する
地中から構造物が見つかった、台風や長雨の影響で作業ができなかった、などにより工事が遅延する場合があります。特に悪天候で一週間作業できずに工事に遅れが出たというケースは珍しくありません。
解体工事のあとに新築工事を予定している場合、解体工事の遅れが新築工事の開始日に影響を及ぼす可能性があります。新築工事の着工日に遅れが発生すると損害遅延金の発生や契約違反といったトラブルの原因となります。
天候の影響も考慮して余裕を持ったスケジュールで解体工事を依頼するようにしましょう。
見積額と実際の請求額が異なる
追加工事が発生するなどして見積額と最終的な請求額が大きく異なるケースがあります。このようなトラブルを避けるためには、現地調査と見積もりをしっかりと行う業者と契約することが大切です。見積書に「工事一式」とだけ書いている業者との契約は避けましょう。
工事内容と料金の明細を詳細に記載している業者であれば、料金に関するトラブルは避けられるはずです。
また、現地調査の際に土地に関して心配な点やお金がかかりそうな点について担当者に相談しておくと、その点についても検討してくれるので突然の追加工事の発生を避けられるでしょう。
解体工事の範囲が違っていた
解体工事では、依頼した範囲と違う場所を解体されてしまった、というトラブルは少なくありません。
とっておいてほしかった庭木を撤去されてしまった、解体してほしかった花壇を残されてしまった、などの間違いが起こりやすいので要注意です。
このようなトラブルは主に業者との連絡の行き違いで発生します。打ち合わせの際にしっかりと確認しておくこと、作業日の朝に作業範囲を確認することでミスを防げます。特に建物が複数がある場合はよく確認するようにしましょう。
整地工事が十分にされていない
解体工事は完了したものの、土地の整地工事が行われないまま撤収されてしまった、というケースもあります。
解体工事で建築物を解体したあとは、がれき等を撤去して地面を平らに整地し、土地を使えるようにしておかなければなりません。
工事完了の際には立ち合いをして土地が整地されているか確認するようにしましょう。整地がきちんと行われていない場合は、契約書を確認のうえ、指摘して整地作業を実施してもらいます。
損害賠償保険に未加入である
解体工事を依頼する場合は、業者が損害賠償保険に加入しているか確認しましょう。解体作業では重機の使用が不可欠です。万が一重機を隣家の塀や外壁にぶつけて破損させてしてしまった場合、業者は補修費用を負担しなければなりません。
損害賠償保険は依頼主が加入する必要はなく、解体業者が加入するものです。とはいえ近隣住民に迷惑をかける可能性もあるので、万が一のトラブルに対応できる体制を整えている業者と契約することがトラブルを最小限に抑えるためのポイントとなります。
建物取毀証明書を発行されない
解体工事完了後に発行されるはずの「建物取毀証明書(たてものとりこわししょうめいしょ)」が発行されずに困るケースもあるので忘れないようにしましょう。
建物取毀証明書とは、建物を取り壊したことを解体した業者が証明する書類です。建物を取り壊した際には、法務局へ建物がなくなったことを申請するために建物滅失登記書類にこの証明書を添付して届け出ます。
不動産登記法では滅失登記は取り壊した日から1か月以内に申請しなければなりません。
証明書がなくても滅失登記は可能ですが、スムーズに手続きするためにもできるだけ早く解体業者に連絡して証明書を発行してもらいましょう。
業者が不法投棄をしていた
近年社会問題になっている違法な不法投棄。もし自分が依頼した解体業者が不法投棄を行っていたら困りますよね。解体工事で発生した廃棄物を不法投棄した場合は、施主ではなく解体業者が排出事業者として責任を負います。
とはいえ、不法投棄は投棄場所周辺の自然や人々の生活に影響を及ぼすので、施主としてもきちんと廃棄物を処理しているかチェックするようにしましょう。
きちんと産業廃棄物を処理できているかを確認する手段として「マニフェスト」があります。
マニフェストは産業廃棄物の処分が終わると業者に提示してもらえます。処理した日付、施設、金額などが、見積りと相違ないかチェックしておきましょう。
解体工事のトラブル事例を防ぐための業者選びのコツ
解体工事でトラブルを避けるためには、信頼のおける解体業者に依頼することが大切です。
ではどのようにすれば優良業者を見つけられるのでしょうか。ここでは、信頼度の高い業者と出会うためのコツを紹介します。
過去の実績や評判の確認
業者選びの際は、業者のホームページや口コミサイトなどで実績と評判を調べておくと失敗を防げます。
業者のホームページにアクセスし、まずは会社概要を見てきちんとした情報が掲載されているか確認しましょう。
次に実績ページを見て、多くの工事事例があるか、解体したい現場と似た条件の工事を行っているかを見ておくと安心です。
業者のホームページに記載されている「お客様の声」以外にも、口コミサイトやSNSを調べて実際に施工を依頼した人の生の声を見ておくことも大切です。
特に悪い口コミは同じトラブルが起こる可能性もあるのでしっかりチェックしておきましょう。
複数の業者からの相見積もり取得
解体工事を依頼する際はいきなり1社に決めるのではなく、複数業者から相見積もりを取ります。
建設工事は費用相場が分かりにくいのですが、相見積もりを取るとおおよその相場を把握できます。費用相場が分かると不当に高額な工事を行う悪質な業者を避けられるので、相見積もりは面倒がらずに行うようにしましょう。
まずはインターネットで施工可能な業者を探し、気になる業者に問い合わせしてみます。そのなかから3社程度に絞り、現地調査と見積もりを依頼します。
見積もりを比較して工事内容、費用のほか建設業許可または解体工事登録をしているか、コミュニケーションがとりやすいか、マナーなど総合的に見て判断しましょう。
契約内容や費用の明確化
相見積もりとつながる部分でもありますが、見積りの際に契約の内容、費用、日程などを文章にして明確にしている業者と契約するようにしてください。
見積書にざっくりとした内容のみを記載する業者も存在し、手抜き工事、追加工事などのトラブルに発展するおそれがあるので注意しなければなりません。
保証内容について説明があるか、トラブルが起こった場合の対応について文書に明確に記してあるか、しっかりと確認しておきましょう。
きちんとした書類がない、作業の詳細が文書で記載されていない、契約を急ごうとするのは悪徳業者の可能性が高いので警戒しましょう。
工事中の連絡体制の確認
業者側の緊急連絡先を事前に聞いておくことも重要です。
特にクレームが起こった場合はスピーディーな対応が必要なので、連絡先と対応可能時間は必ず聞いておいてください。一般的には業者の営業担当者が窓口になりますが、そのほかの電話番号も聞いておくと安心です。
反対に、業者から施主へ雨天による工事の中止やトラブルで作業内容が変わるなどの連絡ができるよう、施主の緊急連絡先を伝えておくことも忘れないようにしましょう。
解体工事のトラブルを避ける対策
建設工事では対策を行っていても思わぬトラブルに遭遇する可能性があります。
たとえトラブルが起こっても冷静に対応できるように、事前に以下のような対策をしておきましょう。
事前に工事箇所の写真撮影をする
解体工事が契約通りに行われているか、工事後に周囲が破損していないか確認するために、事前に工事箇所を写真撮影しておくと良いでしょう。
万が一工事による破損やトラブルが起こった場合、写真があれば工事が原因であることを証明できます。
解体する建物に加えて、隣家のブロック塀やフェンス、外壁、屋根などを写真に残しておくと、隣家から外壁に傷がついた、外壁にひびが入ったなどのクレームが起こった場合に証拠資料となります。
工事が原因の破損であることを証明できれば、業者が補償してくれます。隣家に趣旨を話して撮影に協力してもらいましょう。
家屋調査を入れる
解体工事によって受ける影響は、室内の壁などに現れることもあり、事前に施主が家の周辺を撮影しただけでは被害の証拠を示せない場合があります。
そのため、事前に近隣住宅に対して家屋調査を行っておくと、万が一隣家を破損させてしまった場合にスムーズに対応できます。家屋調査は専門業者が行い、1軒あたり3~10万円が相場です。
調査対象の物件数が増えるとその分費用が高くなりますが、1軒あたりの費用を割引してもらえる可能性もあるので、事前に見積もりを取っておきましょう。
解体工事のトラブルが発生したときの対処法
では、解体工事でトラブルが発生してしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
万が一近隣住民からの苦情を受けたり、解体工事業者とトラブルになったりした場合は、落ち着いて以下の方法で対応しましょう。
速やかに近隣住民の話を直接聞く
近隣住民から苦情を受けた場合は、できるだけ早く相手の話を聞くことが大切です。
クレーム対応でやってはいけないのは、相手の発言を遮ったり否定したりすること。まずは相手の言い分を聞き、工事の内容やご迷惑をかける時期を説明してください。
解体工事の専門的な話は業者からした方がスムーズなので、解体工事業者の担当者と共に出向いて工事の詳細について説明するようにしましょう。
弁護士や消費者センターに相談する
解体工事業者とトラブルになった場合は、自分だけで解決しようとせず、弁護士や消費者センターに相談しましょう。
消費者センターは、商品、サービスなど消費生活に関する問い合わせや苦情を相談員が受け付け、公正な立場で処理する機関です。特に悪徳業者と契約してトラブルが起こった場合には、消費者センターに相談すると良いでしょう。
消費者センターでの解決が難しい場合は法律の専門家である弁護士に相談することになります。
消費者センターに相談するのと同時に、法テラスなどの弁護士の無料相談を活用すると安心です。
まとめ
家の解体は初めて依頼する人も多い工事です。そのため、想定していないトラブルで慌ててしまうこともあるでしょう。
発生しやすいトラブルを事前に知っておけば、事前に回避でき、もし起こってしまっても速やかに対応できます。
また、優良業者に依頼すると、トラブルを未然に防げるだけでなく、万が一トラブルが起こっても業者がきちんと対応してくれます。
スムーズに建物を解体するためにも、相見積もりで比較して誠実な業者を選定するようにしましょう。
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