
スタイリッシュなデザインが魅力の後方支持カーポートは、いくつかのデメリットが存在します。デメリットを知らないまま設置しようとすると条件が合わず、施工できないという事態になりかねません。
この記事では、後方支持カーポートのメリットとデメリット、失敗を防ぐための対策などについて解説するので、検討している場合はしっかりチェックしておいてください。
後方支持カーポートのデメリット

まずは後方支持カーポートのデメリットを紹介します。設置できないケースだけでなく、設置してから後悔するケースもあるので、デメリットをしっかり把握しておき、外構工事業者に現地調査を依頼したうえで決断しましょう。
コストが高くなりやすい
後方支持カーポートの最大のデメリットは、費用が高額な点です。後方の柱だけで大きな屋根を支えるため、部材の太さや重量が増すのがその理由です。
本体価格は収容できる車の台数によって変動しますが、2台分だと通常タイプのおよそ4倍ほどする製品も存在します。
施工の際も屋根と柱を支えるための大きな基礎が必要なので、一般的なタイプに比べて工事費用が高額になる傾向があります。リフォームの際も既存のコンクリートをはがす範囲が広くなるため、工事費用が高額になる点には注意しておきましょう。
積雪が多い地域には不向き
後方支持カーポートは積雪の多い地域には向いていません。カーポートには耐積雪過重性能が設定されていますが、後方支持カーポートは積雪20〜50cm程度までが一般的です。
豪雪地帯では積雪量が100cmを超える場合もあるので、後方支持カーポートではなく、豪雪地域にも対応できるタイプのカーポートが向いています。耐雪タイプなら、200cmの積雪にも耐えられる強度の製品も存在します。
柱の位置が移動できない
後方支持カーポートは柱の位置を変更できないことは知っておきましょう。一般的なカーポートは柱の位置変更が可能です。製品によっては前方の柱を後ろにずらしたり、片側の1本だけを前後に移動させたりすることが可能です。
一方で、後方支持カーポートは1m×2mほどの面積の基礎が必要となり、動かそうとすると水道管や住宅の基礎と干渉してしまうおそれがあります。
移動できたとしても10cm程度となるので、基本的に柱の位置は決まっていると考えておいた方がよいでしょう。
オプションが少ない
設置できるオプションが少ないのも、後方支持カーポートのデメリットです。カーポートはカースペースとしてだけではなく、洗濯物干場として利用する人も少なくありません。
また、カーポートにサイドパネル(サイドスクリーン)を取り付けてプライバシーを確保したいという人もいるでしょう。
後方支持カーポートにはサイドパネルや物干し、照明、コンセントのような一般的なカーポートに取り付けられるオプションに対応できないことがあります。そのため、基本的には駐車専用スペースとして利用することになります。
基礎が大きく施工条件が厳しい
後方支持カーポートは、基礎が大きいために施工には特別の配慮が求められます。後方の柱で全体を支えなければならないため、上でもご紹介したように1m×2m程度の基礎が必要です。
塀などの外構設備や建物が近くにある場合、基礎を設置するためのスペースが確保できず、施工できない場合があります。
また、地盤が弱い場合は基礎を強化する工事により、費用がさらにかかる可能性があります。
埋設管と干渉する可能性がある
基礎が大きいと、地中に埋設された水道管や、電気配管、ガス管などと干渉する可能性があります。後方支持カーポートは柱の位置を動かせないため、干渉する場合は施工不可です。
もちろん、埋設管を移動できれば施工できますが、埋設管の移設は水道管の場合、3~10万円程度の費用がかかります。
移設工事は埋設管の数や地盤の状況、土壌の硬さなどによって大きく変わり、思わぬ出費になる可能性もあるため、配管を移動してまで後方支持カーポートを設置するのはあまり現実的とはいえないでしょう。
後方支持タイプのカーポートのメリット

では、後方支持カーポートにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここではカーポートの柱を後方に設置する場合の主なメリットを紹介するので、デメリットと比較して導入の参考にしてください。
狭いスペースにも設置しやすい
後方支持カーポートは、横幅が狭い駐車場におすすめのカーポートです。一般的なカーポートは横に柱があるので、柱の分駐車場の横幅が使えなくなります。
後ろに柱がある後方支持タイプなら、駐車場の横幅を目一杯使えるため、設置前と変わらずに駐車が可能です。
費用はかかりますが、大切な車を紫外線や雨、汚れなどから守りたい場合は、後方支持カーポートの設置を検討するとよいでしょう。
車を出し入れしやすい
後方支持カーポートは左右に柱がないため、車を出し入れしやすくなります。カーポートのお悩みといえば、柱を気にしながら何度も切り返して駐車しなければならなかったり、柱があることでドアが全開にできず、荷物の出し入れに苦労する、などが代表的です。
柱の位置をずらせば解決できることもありますが、ずらせる距離も限られているので根本的な解決にならないことも多いでしょう。
このような場合は後方支柱タイプにすることで、日常のストレスから解放されます。
狭い敷地でも乗降しやすい
車の出し入れだけでなく、乗り降りのしやすさも大きなメリットです。
狭いスペースにカーポートを設置すると、柱でドアがあけにくくなって乗り降りがしにくいうえ、ドアが柱に当たって傷ついてしまうことがあります。
後方に柱があればドアが開けやすくなり、乗り降りがスムーズです。小さな子どもや高齢者の乗り降りを想定している場合は、ドアの横に広い空間を確保すると利便性も増すでしょう。
見た目がスッキリしてデザイン性が高い
後方支持カーポートはシンプルなデザインで美観に優れています。柱や雨樋が道路側から見えにくいため、すっきりとした見た目のエクステリアを維持できるでしょう。
圧迫感がなく、開放的なデザインは建物の雰囲気を邪魔することなく、住まい全体をモダンでスタイリッシュに演出してくれます。
メーカー側も後方支持カーポートはデザイン性の高い製品を中心に販売しているので、おしゃれなカースペースを作りやすいといえるでしょう。
後方支持のカーポートに向いているのは?

後方支持カーポートがおすすめなのはどのような住宅なのでしょうか。以下の3つに当てはまる場合は後方支持カーポートが向いているので、選択肢の一つに加えておくとよいでしょう。
前面道路が狭い
前面道路が狭い場合、横に柱があるタイプのカーポートよりも後方支持タイプの方が駐車がスムーズです。
前面道路が狭いと切り返しに必要なスペースがなく、大きくハンドルを切って車体を斜めにする操作が難しくなります。そのため、何度も切り返しをしないと車庫入れができず、駐車までに時間がかかってしまいます。さらにカーポートの柱が横にあると難易度は増すでしょう。
そのような場合は後方支持タイプのカーポートを設置すると、柱が横幅を圧迫せずにスムーズに駐車できます。
敷地を有効活用したい
狭小地や旗竿地などでは後方支持カーポートを設置することで、ゆとりのないスペースも有効活用できます。
たとえば三方を壁に囲まれた敷地の場合、一般的なカーポートは柱が邪魔になってしまいます。後方支持カーポートならスペースを最大限に使えるので便利です。
旗竿地の細い部分にカーポートを設置する場合、通路が狭いと車や人の乗り降りが難しくなるため、できるだけ通路にスペースを確保することが大切です。
通常のカーポートでは柱分のスペースが無駄になってしまうため、後方支持カーポートでスペースを最大限に使えるようにすると、出入りのストレスを解消できます。
予算に余裕がある
後方支持カーポートは本体価格も施工費用も高額なため、予算に余裕がある場合におすすめです。スタイリッシュなデザインなので、外構に高級感を与えられるはずです。
こだわりの外構にしたい、外構にある程度の費用をかけて納得のいくデザインに仕上げたい、という場合は検討してみるとよいでしょう。
予算が足りない場合には無理に設置せず、外構工事業者に相談して代替案を検討しましょう。
デメリットを解決するための代替案・対策

施工条件が合わず後方支持カーポートを設置できない場合やオプションがつけられない場合には、少しの工夫で対策できます。ここでは屋根とサイドパネルの代替案を紹介します。
通常タイプ+梁延長で似た効果を得る
設置条件や予算の問題で後方支持タイプの設置が難しい場合、通常のカーポートに梁を延長して後方支持タイプのような解放感や利便性を得られます。
梁延長すると柱が駐車スペースの邪魔になることがなくなり、車の出入りがスムーズになります。また、カースペースに障害物がある場合も、障害物を避けて柱を設置できる点が大きなメリットです。
梁延長は、オプションで設置できます。そのほか、合掌タイプやワイドタイプなど、屋根付きで横幅の広いカーポートも存在するので、カタログなどで確認しておくと選択肢も広がります。
サイドパネルの代わりに目隠しフェンスを併設する
後方支持カーポートの側面にサイドパネルを取り付けられない場合は、目隠しフェンスなどのほかの外構設備を併用することで、目隠し効果を得られます。
目隠しフェンスを設置する場合は、道路や近隣からの目線など、遮りたい目線を明確にしたうえで高さを決めると効果的です。
隣地境界線付近に設置する場合は隣家への日当たりの影響や圧迫感、風通しなどを十分配慮したうえで、適切なフェンスを設置しましょう。
失敗・後悔しないための対策と検討ポイント

ここでは後方支持カーポートの設置で後悔しないための対策を紹介します。一般的なカーポートとは異なる点もあるので、依頼前までに確認しておき、分からないことは外構工事業者に聞いておきましょう。
見積もり比較時に注意すべき項目
カーポートは製品の種類や地盤条件により基礎仕様や支柱径、施工範囲が大きく変わるので、見積もりの際は費用だけでなく、工事内容についても確認するようにしましょう。
後方支持カーポートの強度は基礎で決まります。通常よりも大きな基礎を設置しますが、軟弱地盤の場合は標準的な基礎の寸法よりも大きくしたり通常よりも深く掘削します。
また、前方に柱がないため、支柱が太く設計されているのが一般的です。サイズはメーカーにより異なるので、カタログで比較してみるとよいでしょう。
施工できる範囲は土地の条件によって異なります。新築住宅であればこれらを考慮して建物と外構のレイアウトを決める、リフォームの場合は十分な現地調査のうえ設置の可否を判断する必要があります。
施工前に敷地調査で確認すべきこと
カーポートの見積りの際は現地調査(敷地調査)が必須です。業者に実際に現場を見てもらい、設置可能かどうか、どのような仕様で施工するか検討してもらいます。
業者は依頼主の希望をヒアリングしたうえで現場を確認し、敷地の勾配状況、玄関前階段からの目線、障害物や敷地境界線、法規上の確認を行います。
敷地の勾配を確認するのは標準柱で間に合うか、ロング柱が必要か判断するためです。さらに敷地に勾配があり玄関前に階段がついている場合は、目線合わせを行い、外観が良く仕上がるように設計します。
また、障害物や動線の邪魔にならないように柱の位置を決めるほか、10㎡を超えるカーポートやガレージは建築確認申請が必要となるので、要件の確認も行わなければなりません。
メンテナンス・将来追加のカスタマイズを考慮する
カーポートはメンテナンスについても計画しておかなければなりません。日常のお手入れではポリカーボネート板や柱の掃除を行います。
ポリカーボネート板は日光を通し屋根の下を明るくしながら紫外線をカットし、車の塗装の劣化や車内の温度上昇を防ぐ素材です。その一方で落ち葉などのゴミがたまると目立つので、こまめな清掃が必要です。
柱によく使用されるアルミは耐久性の高い素材ですが、砂埃や汚れが長期間ついたままになると腐食の原因となります。年に数回を目安に拭き掃除を行うことで寿命を伸ばせます。
また、将来のライフスタイル変化を考慮したものを設置すれば、建て替えなどの大きなコストをかけずにオプション追加などで対応できるでしょう。
カー ポートに関するよくある質問

ここではカーポートの設置に関してよくある質問とその回答を紹介します。税金に関することやカーポートの安全性にかかわることなど、疑問を解消して設置計画を進めると安心です。
カーポートに固定資産税はかかるか?
カーポートは原則として固定資産税の対象とはなりません。ただし、以下の要件をすべて満たす場合は固定資産税の対象となり、税金が上がる可能性があります。
- 外気分断性:屋根があり、三方向以上の周壁がある
- 土地定着性:基礎などで土地に定着している
- 用途性:住居・作業・貯蔵といった目的で利用できる状態にある
カーポートは屋根があり、基礎で土地に固定されていますが、三方向以上の壁で覆われていないため、固定資産税の対象外です。
ただし三方向に壁を設置して外気分断性があると判断された場合や、シャッターや扉がついているガレージタイプは家屋とみなされて固定資産税の対象となる場合もあるので、事前に自治体の窓口に確認しておくことをおすすめします。
カーポートの後方支持は台風に耐えられる?
後方支持カーポートの耐風圧性能は38m/sで、一般的なカーポートと変わりませんが、柱が2本しかないので、台風の日は対策をしたほうがよいでしょう。
後方支持タイプや片側支持タイプのカーポートの台風対策としては、サポート柱の設置が有効です。片方に柱がついたカーポートは強風で屋根が揺れやすいため、サポート柱で補強し、揺れを軽減します。
サポート柱は取り外し可能なタイプもあるので、台風が接近したときに設置して、普段は前方に柱のないカーポートでストレスなく駐車も可能です。
ただし風の強い地域では無理に後方支持タイプを設置せず、両側に柱がついたタイプを設置したほうが安心です。
まとめ

後方支持カーポートは、施工条件に限りがあるというデメリットがありますが、車の出し入れのしやすさや外観の良さなどメリットも多くあります。
とくに基礎が大きく地面を多く掘り返さなければならないため、検討している場合は早めに外構工事業者に設置場所の現地調査を依頼し、施工条件に当てはまりそうか確認してもらいましょう。
条件に当てはまらなくても機能面や使い勝手に遜色のない代替案を提案してもらうと、計画もスムーズに進むはずです。


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