
一戸建て住宅の外構工事が完成したあとにフェンスが思っていたよりも低いことに気づき、高さを延長したいと考えるケースは珍しくありません。
また、設置から年数が経過し、ライフスタイルの変化に伴って、プライバシーの確保や防犯性を高めるために高いフェンスが必要になることもあるでしょう。
では、既存のフェンスを高くするにはどのようにすればよいのでしょうか。この記事では、フェンス延長の方法や注意点について解説します。
既存のフェンスを高くする施工パターン

既存のフェンスを高くしたい場合には、今あるフェンスにラティスなどをくくりつける、高さの足りない部分にフェンスを追加する、フェンスを撤去して交換する、の主に3つの方法があります。
既存フェンスにラティス等を後付け
今立っているフェンスにラティスなどをくくりつけて高さを延長する方法なら、DIYでも簡単にできます。ラティスはホームセンターや園芸店でも簡単に手に入り、くくりつけるのも結束バンドやひもなどを使うので、工具不要で簡単に希望の高さにできるのが魅力です。
ただし、ラティスは、強風の日には取り外さなければなりません。取り外しを怠った場合、風によってラティスの倒壊・破損が起こるおそれがあり、隣家の外壁に傷を付けたり、通行人にけがを負わせてしまう可能性もあります。
取り付けが簡単な一方で悪天候のたびに取り外ししなければならないため、手間がかかるというデメリットは理解しておきましょう。
既存柱を流用し上段だけ追加
既存のフェンスの柱に十分な強度がある場合、既存フェンスに専用のパネルを金具で固定して高さを出すという方法もあります。
ただし、既存フェンスの柱では不十分な場合は、フェンスの後ろに独立基礎で新たに柱を設置し、上段のみにパネルを付けて対応します。
既存フェンスの柱を使えるかどうかは、業者とよく相談した方がよいでしょう。安全面を第一に考え、希望の高さとフェンスの種類に合った方法で設置すると安心です。
フェンスを全撤去してリプレイス
外構の美観を保ち、安全性を確保するなら既存のフェンスを全て撤去し、希望の高さの新しいフェンスに交換する方法がおすすめです。
フェンスの高さを変える場合、必要な柱の強度や耐風性が変わるため、既存の柱は使えない場合があります。また、背の高いフェンスに変更した場合に、フェンスの種類によっては圧迫感を与えることもあるので、フェンスのデザインを考慮する必要もあります。
そのため、既存のフェンスを設置してから一定期間経過している場合は、メンテナンスの一環として新しいものに交換してしまった方が良いでしょう。
費用シミュレーションと予算の組み方

フェンスの高さを変える場合、どれくらいの工事費用がかかるのでしょうか。
ここでは、施工方法別の費用の目安や、DIYでコストを抑えたいときに気をつけること、外構工事で発生しやすい追加費用について紹介します。
施工方法別の1mあたり単価
フェンスを高くする施工にかかる費用の単価は、方法別に以下の通りです。
- ラティスを後付け:約2,500~4,000円/m
- 上段だけフェンスを追加:約14,000~19,000円/m
- 新しいフェンスに取り替え:約15,000~35,000円/m
既存フェンス用のパネル、取り替えにより新規で設置するフェンスは、素材や高さによって費用が変わります。設置を計画する場合は施工エリア内の業者に現地調査と見積もりを依頼し、費用の概算とデザインのプランを出してもらうようにしましょう。
DIYで出費を抑えるときの注意点
フェンスの高さ追加はDIYで行えば費用は抑えられますが、時間と手間がかかるだけでなく、品質が確保できない可能性があるため注意が必要です。
DIYでのリフォームは、すべて自分で行うことになります。専用の工具や重機が足りず手作業で行う場合は、業者が行うよりも完成まで長い期間がかかる可能性が高いといえるでしょう。
また、フェンスの品質にも注意が必要です。外構工事業者は、正しい知識と豊富な経験で、安全性の高いフェンスをきれいに設置できます。
自分で行うと手順を間違ったり仕上がりが悪くなる可能性があるため、複雑な形状の箇所にフェンスを設置したい場合や長い距離を施工したい場合は、業者への依頼をおすすめします。
見積書で見落としがちな追加費用
外構工事では予想外の追加費用が発生することがあります。
追加費用の要因には以下のようなものがあります。
- 工事の追加やデザイン・材料の変更
- 地中埋設物の撤去
- 配管の位置に問題が発覚し、外構設備の位置を変更しなければならない
- 資材価格の高騰
- 工期の延長
外構工事の追加費用を防ぐには、工事の変更がないように希望のデザインを明確にしておく、土地の情報と図面を業者と共有するなどが大切です。
資材価格については、多くの業者が見積もり時の価格を適用しますが、契約する前にどのような扱いになるのか確認しておきましょう。
フェンスを高くするときの注意点

フェンスを高くして目隠し効果は高まったものの、思わぬデメリットに後悔するケースは少なくありません。
以下に挙げる注意点をチェックして、快適なフェンスを設置しましょう。
圧迫感のあるデザイン・高さになっていないか
フェンスを高くする場合、圧迫感に注意が必要です。背の高い目隠しフェンスで外構を囲った結果、庭が狭くなったように感じることもあるでしょう。
高さのあるフェンスは敷地全体を囲わずに、視線が気になる場所に限定する、隙間のあるフェンスを選ぶ、などすると圧迫感を軽減できます。
背の高いフェンスは住む人だけでなく、隣人や通行人にも圧迫感を与えることがあります。家の中から見た印象だけでなく、外から見た印象にも注意してデザインを決めると失敗を防げるでしょう。
家のデザイン・雰囲気とあっているか
フェンスを設置する際は、門扉、玄関など、住宅のデザインや雰囲気と合わせることが大切です。目隠し効果を重視するあまり、機能性だけでフェンスを選ぶとフェンスだけが目立ってしまったり、違和感のある外構デザインになってしまったりします。
フェンスのデザインを選択するときは家の外観の雰囲気に合ったものを選びましょう。
また、周辺の住宅の外構デザインと統一感のあるフェンスを選ぶと周囲の景観になじみ、違和感がなくなります。
日当たりや通気性は悪くないか
隙間の少ない目隠しフェンスを設置すると、日当たりや風通しが悪くなることがあります。
エクステリアに日陰が多くなり風通しが悪くなると、カビや苔が発生しやすくなったり、ガーデニングの生育が悪くなることもあるでしょう。また、室内が暗くなってしまうことも珍しくありません。
外からの視線を遮りながら日当たりと風通しを確保するには、以下の方法をすると効果的です。
- 目隠しフェンスは必要最低限の一部分のみに設置する
- 格子状のフェンスでほどよく目隠ししながら、気になる部分は植栽で補う
強度・耐久性を高めるポイント

フェンスは風などで倒壊しないよう、強度と耐久性を確保しなければなりません。では、具体的にどのような対策が必要なのでしょうか。
ここではとくにフェンスの耐久性に重要となる支柱の強度対策を中心に解説します。
柱ピッチと基礎深さの目安
安全性の高いフェンスを設置するためには、柱のピッチと基礎深さはメーカーが推奨する値を守る必要があります。
アルミフェンスの場合、一般的に支柱のピッチは2000mm、基礎深さ17cmです。柱は道路と反対側となる敷地の内側にモルタルで固定します。
これはあくまでも目安で、強度が必要なフェンスはピッチ1000mmにする場合もあります。そのほかスチールなど、アルミ以外のフェンスやフェンスの高さによって柱ピッチと基礎深さは変わるので、あらかじめ業者に確認しておきましょう。
風荷重を考慮した支柱本数とパネル抜け対策
台風などの強風からガレージの車や庭の植栽を守りたい場合は、風荷重を考慮したフェンスを設置することが大切です。フェンスの耐久性を高める方法の代表的なものとして、支柱の本数を増やす方法があります。
標準的な支柱の間隔は2000mmですが、風が強く当たる場所では1500mm以下がおすすめです。フェンスには耐風強度を持つ製品もあるので、沿岸部などの強い風が吹く地域では少なくとも40m/秒以上の耐風圧強度を持つフェンスを選ぶとよいでしょう。
なお、テラスやカーポートの屋根の風荷重対策には、パネル抜け防止材をオプションで付けておくと、屋根材が飛ばされるリスクを減らせます。
近隣トラブルを防ぐための手続き

外構工事では工事中はもちろん、設置した外構設備によって近隣住民に不快感を与えないよう、十分配慮しなければなりません。
ここでは、とくに気を付けておきたいポイントを紹介します。トラブルを防ぐために外構工事業者と相談して、必要な対応をするようにしましょう。
境界線上に立てる場合
隣地との境界線上にフェンスが立っている場合、撤去や交換には隣家の同意が必要です。境界線の真ん中にあるブロック塀やフェンスは、隣家との共有財産であり、費用も折半している可能性があります。
自分の土地に立っていると思って工事したら共有物だったというケースもあるので、事前に正確な境界線を確認しておきましょう。
自分の土地にフェンスがある場合は同意を得なくても工事は可能です。しかし、工事の際に業者が境界線付近で作業を行ったり、突然目隠しフェンスで自宅を隠すと良い印象を与えなかったりするため、事前にフェンスを設置したい旨は伝えておくようにしましょう。
工事前のあいさつ・日程共有
外構工事の前には近隣に挨拶まわりをしておきます。とくに隣家には工事の日程とおおよその日数のほか、どのようなタイプのフェンスを設置するのか、についても伝えておくと安心です。
外構工事でブロック塀を撤去する場合、大きな音と振動、粉塵が起こります。また、工事中は車両や作業員の出入りもあるため、近隣住民に工事が始まる前に挨拶をしておきましょう。
挨拶回りは業者も行ってくれますが、施主が直接伝えておくことでトラブルの発生を抑えられます。
フェンスの施工に関するよくある質問

ここでは外構にフェンスを設置する際によく挙がる質問とその回答を紹介します。フェンスの設置を計画している場合は事前にチェックしておき、疑問を解消しておきましょう。
木製フェンスは何年くらい持ちますか?
天然木のフェンスは約5~10年の耐久性があるとされています。定期的な塗り直しにより寿命を伸ばせますが、強風への耐久性には限界があり、台風などで破損する可能性もあるので注意が必要です。
木製フェンスは種類によって耐久性が大きく変わります。安全に長く使用するならウッドデッキでも使用されているエコウッドのほか、ウリンやサーモウッドなどのハードウッド材がおすすめです。
また樹脂製の人工木材フェンスはカラーバリエーションが豊富なうえ、15~30年程度の耐久性があるといわれているので、メンテナンスの手間を防ぐなら樹脂木材フェンスがおすすめです。
フェンスの高さは法律で決まっていますか?
フェンスをブロック塀の上に設置する場合、建築基準法によりフェンスの高さは2.2mが上限とされています。
ブロック塀には縦筋、横筋を入れる必要があり、ブロック塀の高さ+フェンスの高さ=2.2m以下にする必要があります。また、ブロック塀の高さが1.2mを超える場合は控え壁が必要になるので、設置する場所に余裕がない場合はブロック塀を1.2m以下に抑えるようにしましょう。
高さ2.2m以上のフェンスを設置したい場合は独立基礎のフェンスを建てることになります。
まとめ

フェンスの高さが足りないときは、さまざまな方法で延長できます。ただし、安全性の高さと外観を重視するなら外構工事業者に依頼して新しいものに取り替えた方が良いでしょう。
工事を検討している場合は、複数の業者に理想のイメージを伝えたうえで相見積もりをとると、費用相場を把握しやすく、納得のいく工事を依頼しやすくなります。
業者のホームページをチェックし、施工事例を見たうえで、気になる業者3社程度に見積もりを依頼してみるとよいでしょう。
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