古いブロック塀は老朽化や構造上の問題により、倒壊の危険性があります。
しかし、境界に設置したブロック塀が隣家との共有物だった場合、取り壊しには細心の注意を払わなければなりません。
今回は、共有塀の取り壊し工事の流れ、工事費用や塀の権利でトラブルを避けるための基本的なポイントを紹介します。
共有塀を取り壊すときの手順
共有塀は自分だけのものではないので、解体する際には勝手に工事せず、隣人と相談しながら行わなければなりません。
以下に共有塀を解体する際の手順を挙げているので、流れを把握しスムーズに工事を進めましょう。
隣人との協議
共有塀を取り壊す場合は隣人の同意を得なければなりません。勝手に判断して解体工事を行ったり、協議を電話一本などでおろそかにしたりすると、損害賠償請求やトラブルに発展するおそれがあるので注意が必要です。
協議の際は、解体する理由と工事を安全に行う旨を丁寧に説明することが大切です。さらに、解体費用を分担したい場合は具体的な費用と負担割合を提案しましょう。
ブロック塀を解体したあとに新たに塀やフェンスを設置したいときは、その費用や製品についてもしっかりと協議しましょう。
協議内容は文書に残し、双方でサイン、捺印しておくと、あとになって揉め事に発展するのを防げます。
所有権と境界線の確認
ブロック塀の所有権と、境界線の位置の確認も忘れてはいけません。ブロック塀の位置が必ずしも法的な境界線と一致しているとは限らないので、隣人と境界線の位置を確認しておきましょう。
境界線は、地面に境界標が設置されているので、これを確認すれば良いでしょう。
ただ、境界標がない場合やずれている場合もあります。その場合は登記簿を確認する、測量を行うなどして確認しましょう。
境界線が明らかになっていない状態で共有塀を設置すると、トラブルに発展する可能性があります。工事前に隣人と共に確認し、同じ認識のもとで工事を依頼するようにしましょう。
解体業者の選定
工事の実施が決まったら、依頼する解体業者を探します。インターネットで「地域名+ブロック塀解体」などのキーワードで検索し、気になる業者に問い合わせてみます。
そのなかから3社程度に絞って現地調査と見積りを依頼しましょう。隣家と相談して見積りのなかから最も条件に合う一社に決めます。
もし、業者選びを隣人に任された場合でも、契約する前に隣人に見積り内容を確認してもらい、了承を得てから契約するようにします。
可能なら営業担当者にプランの説明をしてもらうとより理解を深められるでしょう。
解体工事の実施
契約を結んだら解体工事を実施します。解体工事では騒音や振動、粉塵が発生します。工事の日程が決まったら隣人だけでなく、近隣の家へ挨拶回りをしましょう。
コンクリートブロックの解体作業は、ブロックにコンクリートカッターで切れ目を入れたあと、重機または手作業でブロック塀と基礎部分を解体・撤去します。
解体したブロックの破片や鉄筋はトラックに積み込まれ、産業廃棄物として処分されます。
解体作業の終了後は施主による立ち合いです。このとき、できるだけ隣人も立ち合いして確認してもらうようにしましょう。問題なければ業者が清掃を行い、解体工事の完了です。
知っておくべき境界線の種類
境界線とは、土地の外周を囲む隣地との境界を示す線です。一軒家やマンションの土地には実際に線が引かれているわけではありません。
境界の角に埋め込まれた境界標や境界杭を結ぶ線が境界線となります。境界線には「敷地境界線」「隣地境界線」「道路境界線」の3種類があります。
敷地境界線
敷地境界線は境界線の総称で、敷地と隣地、道路、または河川や公園などのほかの施設との境界を示す線です。
敷地境界線を確認するには以下の3つの方法があります。
- 登記簿を確認する
- 測量する
- 筆界特定制度を利用する
土地の詳細は登記簿に記載されているので、法務局で登記簿を確認すると敷地境界線が分かります。
ただし、登記簿に記載されている土地の面積は必ずしも正しいとは限りません。境界線があいまいな場合は、測量士または土地家屋調査士などの専門家に測量を依頼します。
境界線が曖昧になっており、隣家と折り合いがつかない場合は、筆界特定制度を利用して境界を確定します。
隣地境界線
隣地境界線とは、隣の土地との境界を示す線です。隣地境界線には、家の建築や増築、外構工事などを行う際に法的なルールが存在します。
隣地境界線のルールを無視し、越境して境界塀やフェンスなどを設置した場合、大きなトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
たとえば民法では、建物は原則として外壁を境界線から50cm以上離して建築しなければなりません。
隣地との境界線に工作物を設置する場合は、民法や建築基準法のルールに従う必要があります。
道路境界線
道路境界線は、土地と道路の境界となる線のことをいいます。つまり、土地と道路が接している線のことです。
ここでいう道路とは、幅員4m以上の公道などのことを指します。つまり、私道との境界線は道路境界線とはなりません。
道路境界線は必ずしも縁石の位置とは一致しません。境界線は市区町村の道路公園課や土木事務所で管理されています。
道路境界線を知りたい場合はこれらの窓口に出向き、敷地の道路境界線を知りたいと伝えれば教えてもらえます。
共有塀の解体費用を隣人と分担する方法は?
共有塀を解体する場合特にトラブルにつながりやすいのが、費用の分担方法で隣人と主張が異なるケースです。そのため、工事の計画段階で隣人と十分に協議し、双方が納得いく形で費用分担する必要があります。
以下に費用分担をスムーズに進めるためのポイントを挙げているので事前にしっかりチェックしておきましょう。
解体工事にかかる費用の目安
ブロック塀の解体工事の相場は1㎡あたりおよそ5,000~10,000円が目安です。一般的に高さが低いブロック塀は単価が安く、高さがあるブロック塀は単価が高くなる傾向にあります。
このほか、アスベスト除去費用の相場が10,000~50,000円、廃材の処理費用の相場が1立方メートルあたり3,000~5,000円です。
解体費用はブロック塀の大きさや状態により大きく変わります。工事を検討している場合は解体業者に現地調査と見積りを依頼しましょう。
基本的には自己負担
共有塀の解体を一方の所有者が希望する場合、解体費用は基本的にその所有者が負担します。塀を解体したあと新しい塀やフェンスを設置する場合の設置費用も同様です。
測量などで隣地境界線を明らかにしたあと、塀が自宅の敷地内に設置されており単独所有が明らかになった場合も解体、新設費用は自己負担となります。
もし、塀が自分の土地にあり、自己負担で解体する場合であっても、工事の日程が決定したら、お隣へ解体の事情と工事の日程を伝えるのは忘れないようにしましょう。
費用負担の分担方法
塀が双方の土地の真ん中に設置されている場合、隣家と1/2ずつ負担する場合が多いでしょう。
しかし上で紹介したように、一方の所有者のみが解体を希望した場合、その所有者の全額負担で解体工事をするケースもあります。
費用を折半する場合、どちらか一方の所有者が解体業者に工事料金を支払い、隣人から費用の1/2を受け取ります。
この場合、工事が終わっても隣人から料金を回収できなかった、というトラブルが発生するリスクもあるので、料金の支払い方法とタイミングには十分に注意しましょう。
隣人と費用分担を話し合うときの注意点
隣人と費用分担の協議をする際には揉め事に発展しないように十分注意する必要があります。
トラブルを避けるためには、費用を伝える際に何にどれくらいの料金がかかるのか、どのような工法で解体するのかを明確にしなければなりません。
見積書には工事の内容とかかる費用が細かく記載されています。隣人との協議の際は、見積書をもとに話し合いを進めるようにしましょう。
また、支払い方法や費用の分担など、協議内容については文書に残すことが大切です。
共有塀の取り壊しに関するよくある質問
いざ共有塀を取り壊そうと考えたときには、さまざまな疑問が浮かび上がってくるでしょう。
ここでは、共有塀の取り壊しでよくある質問とその回答を紹介するので、事前にチェックして疑問を解消しておきましょう。
共有塀の老朽化で倒れてしまった場合の責任は?
ブロック塀が老朽化や地震などにより倒壊し、人や物に損害を与えてしまった場合、責任は所有者にあります。では、ブロック塀が隣家との共有だった場合にはどのようになるのでしょうか。
共有塀の場合は共有者全員が責任を負います。つまり、自分と隣家の共有塀の損害賠償責任は両者にあるということです。
片方の共有者が被害者に損害賠償を求められ支払った場合、後で共有者から賠償額の半分を回収することになりますが、共有者が拒否したり、資産が無かったりして回収できないリスクがあることは注意しておきましょう。
境界線にブロック塀がある場合は所有者はどちらになる?
境界線にブロック塀がある場合、原則として塀を設置した人が所有者です。先に家を建てた側がブロック塀を建てているケースが多いので、先に家を建てた側の住民が塀の所有者である場合が多くなります。
調査してもどちらが塀を建てたのかが分からない場合には、民法229条の「境界標等の共有の推定」により、ブロック塀は「共有」と「推定」されます。
民法上の定めでは「推定する」としているので、所有者を証明する資料が見つかるなど、推定を覆す立証がなされればそれに従います。
境界線にあるブロック塀の所有者を調べる方法は?
ブロック塀は、基本的に塀が建っている敷地の住人が所有者です。隣地境界線が分からず、ブロック塀がどちらにあるのか分からない場合は測量を行い、境界線を確定させます。
隣地との境界線を明らかにするためには、土地境界確定測量を行います。土地境界確定測量で境界線を決めるためには、土地の所有者のほか、隣地の所有者の立ち合いが必要です。
どうしても立ち合いが難しい場合は、委任状があれば家族や代理人でも立ち合いが可能です。
まとめ
共有ブロック塀を解体する場合は、隣家と十分協議のうえ行わなければなりません。
相手の要求に応えられないなど、トラブルに発展しそうな場合は当事者だけで対応せず、弁護士などの第三者に協議に入ってもらうことも検討しましょう。
共有塀は今は相手と良好な関係でも、不動産相続が発生して持ち主が変わり、土地の売買や賃貸物件として利用する際に、塀の改修方法などで売主と揉めることがあります。
できるだけ塀は単独所有にするなど、将来を見越して設置することも大切です。
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