古いブロック塀は安全性が損なわれている可能性があるため、事故を防ぐためにも早めに解体、交換した方が良いでしょう。
しかし、ブロック塀の解体は近隣住民とのトラブルにつながるおそれがあるため十分注意が必要です。そのため、事前に法令の確認はもちろん、近隣へ配慮することが大切です。
この記事では、ブロック塀の解体工事でご近所トラブルを避けるためのポイントを解説します。
ブロック塀解体時のトラブルとは?
ブロック塀の解体工事は、近隣にできるだけ迷惑をかけないようにする必要があります。特にお隣との境界にあるブロック塀の解体は大きなトラブルにつながりかねません。
ここでは、ブロックの解体工事で発生しやすいトラブルの内容を紹介します。
ブロック塀が隣人と共有になっている
ブロック塀を隣家と共有している場合は、トラブルが発生しやすいので注意が必要です。解体したい場合は事前に隣人の承諾を得なければなりません。
共有の場合、取り壊しの同意を確認すれば、解体費用を折半できます。しかし、隣人が費用の負担を嫌がるケースも少なくないので、相手の負担額を少なくしたり、自分が全額を負担したりすることになる場合もあります。
また、新しいブロックやフェンスを設置する場合、共有にするとフェンスの高さ、材質などについても隣家と協議しなければなりません。そのため、新しいフェンスは自分の敷地に設置した方がトラブルが少なく済むでしょう。
騒音や振動が原因で苦情が発生した
ブロック塀を解体する際に発生する騒音や振動に対して、近隣住民からクレームが入ることがあります。
解体作業はどうしても騒音と振動が発生してしまうので、近隣住民にはストレスを与えることになるでしょう。
トラブルを避けるためには、工事前に挨拶回りをして、理解を得ることです。いつ、どれくらいの期間、騒音・振動が発生するのか、作業時間帯などを伝えておくだけでも苦情を防げるでしょう。
新しい境界の設定方法で折り合いがつかない
ブロック塀やフェンスを解体、新設する際には隣家との登記上の境界線を確認しておきましょう。
境界線をめぐるトラブルのなかで最も多いのが、お互いの境界線の認識が異なったケースです。
境界線には筆界と所有権界があり、筆界は公法上の境界で、法務局に申請しなければ位置を変更できません。一方で所有権界は私法上の境界で、双方の合意によって位置を決められます。
特に昔からブロック塀がある場合、ブロック塀の位置が境界線だと認識していてトラブルに発展するケースは少なくありません。
事前に正確な境界を確認しておくことで無用な争いを避けられるでしょう。
解体後の土地の状態で意見が異なる
ブロック塀を解体したあと、土地をどのようにするのかで隣人と意見が割れるケースもあります。
解体後に新たにブロック塀やフェンスを設置するのか、設置する場合は再び共有するのか、どちらかの家の敷地内に設置して単独所有になるのかなどで意見がまとまらないことがあるでしょう。
さらに、設置するフェンスの種類や金額、請求方法で揉めることも少なくありません。
特に引き続きブロック塀を共有する場合、相続や土地の売却で所有者が変わるケースもあり、トラブルの原因となるので注意が必要です。
危険なブロック塀の特徴
ブロック塀が地震などで倒壊し、人や物に被害を及ぼしてしまった場合、所有者が責任を負うことになってしまいます。そのため、定期的にブロック塀の点検を行い、必要に応じて補修や交換をしなければなりません。
ここでは、危険なブロック塀の特徴を紹介するので、自宅のブロック塀が該当していないかチェックしてください。
明らかに傾いている
ブロック塀が傾いている場合、倒壊するおそれがあるため早めに対応しましょう。
傾きが生じているのは、ブロック塀、基礎、地盤のいずれかに不具合があることを示しています。
傾いたブロック塀は、地震のわずかな揺れや台風、物や人がぶつかるなどが原因で倒壊する可能性があり非常に危険です。
定期的にブロック塀が傾いていないか、ぐらつきがないか、専門業者に点検を依頼すると安心です。
ひび割れや欠損がある
ブロック塀に一部でもひび割れや欠けがある場合、塀の内部に雨水が浸入して中の鉄筋が腐食してしまっているおそれがあります。
コンクリートブロックをつなげるために使用するモルタルは、湿度や温度の変化などにより、ひび割れを起こしやすい素材です。内部に雨水や空気が入り込むとセメントが中性化し、鉄筋を錆びさせてしまいます。
鉄筋が錆びると膨張して内側から力がかかり、ひび割れをさらに大きくしてブロック塀の耐久性を低下させるため、早急な補修が必要です。
基準以上の高さになっている
ブロック塀が建築基準法で定められた高さより高い場合、安全性に問題があるといえるでしょう。
現在の建築基準法では、ブロック塀の高さは2.2m以下、厚さ15cm以上、高さ2m以下の場合は厚さ10cm以上と定められています。また、内部に径9mm以上の鉄筋を縦横に80cm間隔で配置しなければなりません。
ブロック塀の高さは1981年の建築基準法改正で上限が3mから2.2mに引き下げられています。
法改正前のブロックは作り直す義務はありませんが、強度不足や経年劣化により倒壊リスクは高い状態です。
耐震補強がされていない
鉄筋が入っていない、控え壁がないなどの耐震化されていないブロック塀は倒壊リスクが高いといえます。できるだけ早く耐震補強工事をしましょう。
具体的な耐震補強工事の方法として、銅製支柱を設置する、新たに基礎を作る、控え壁を設置するなどの方法があります。
控え壁とは、ブロック塀に対して直交に付けるブロックの壁のことです。高さ2mのブロック塀の場合、長さ3.4m以下(ブロック8個分)ごとに長さ40cm以上の控え壁を設置します。
経年劣化が進んでいる
コンクリートブロックは丈夫な素材ですが、経年劣化が進んでいる場合は補修や交換を検討する必要があります。
ひび割れが広範囲にわたっている場合や苔やカビが生えている場合、白華現象と呼ばれる白い汚れが浮き出ている場合はブロック塀が劣化しているサインです。
また、ブロック塀の耐用年数は30年です。設置から30年以上経過しているブロック塀は見た目は問題はなくても内部は劣化している可能性があります。30年以上前に設置したブロック塀は早めにリフォームしましょう。
トラブル避けるブロック塀解体の流れ
ここでは、スムーズにブロック塀の解体工事を行うための流れを紹介します。
ブロック塀の取り壊しを検討している場合は、工事のおおまかな流れとポイントを押さえておき、トラブルなく工事を進めましょう。
塀の所有者を確認する
工事の前に塀の所有者を確認しておきましょう。ブロック塀は基本的に塀を設置した人が所有者となります。多くの場合、先に家を建てた側が塀を設置しており、その場合は隣人が所有者です。
また、ブロック塀が隣地境界線のどちら側に設置されているかでも所有者を確認できます。
隣家と話し合いを行う
ブロック塀を隣家と共有している場合、工事の内容や金額、請求方法などについて、隣家と話し合わなければなりません。
新しいブロック塀も共有することになった場合は、合意書を作成し、所有権が双方にあることを明記しておきましょう。
測量を行う
工事前に測量を行い、正しい境界線を把握します。境界線が曖昧なまま解体工事を行うと、越境して解体してしまうおそれがあるためです。
特に土地を売却予定の場合は、工事前に土地家屋調査士に測量を依頼することをおすすめします。
業者の選定と現地調査
解体工事業者に見積りと現地調査を依頼します。現地調査で行うのは、ブロック塀の構造や解体に伴う注意点、周辺の道路、地域の環境などの把握です。
解体業者は現地調査の結果に基づいて、工事の見積りを作成します。見積りには、工事費用のほか、人件費、解体したブロック塀の処理費用、工事の安全対策費用なども含まれます。
挨拶回りを行う
工事を契約し、解体工事の日程が決まったら、近所に挨拶回りをしましょう。
最低限挨拶しておきたいのは、両隣、裏、道路向いの家です。そのほか、ご迷惑をかけそうな家には挨拶しておきましょう。
解体工事を進める
準備として現場周辺を養生し、解体する部分にマーキングします。その後、マーキングを確認しながらブロック塀をブレーカーなどを使って解体していくのが一般的です。
解体工事が終わったら廃材をトラックに積み込み、処分場へ運送します。コンクリートの廃材は、産業廃棄物として適切に処理しなければなりません。
最終確認を行う
作業がすべて完了したら、施主立ち合いのもと最終確認を行います。問題なければ工事完了です。
特に補修などをする必要がなければ引き渡しとなり、業者は現場の片付け、清掃、撤収となります。
ブロック塀の解体でトラブルを避けるために注意すべきポイント
ブロック塀の解体工事を行う際は、トラブルを避けるためにも事前に境界線に関するルールを把握しておく必要があります。
以下の点をよく確認してから、ブロック塀を解体・撤去するようにしましょう。
境界線を事前に把握しておく
解体工事の際にはお隣との境界を事前に確認しておくことが大切です。ブロック塀を設置している箇所が必ずしも正確な境界線とは限りません。
知らないうちに越境して解体してしまうと大きなトラブルにつながるおそれがあるため十分注意しましょう。
境界線には筆界と所有権界があります。本来、登記上の境界である筆界と所有権界は一致していますが、所有権界がずれていることはよくあるので注意が必要です。
勝手に判断せず、筆界を確認して境界線を正しく認識しておきましょう。
建物と隣地境界線に関する法律を把握しておく
隣地境界線には、法的な効力があり、民法でルールが定められています。解体工事では法律で定められた決まりに則って作業しなければなりません。
特に建物と隣地境界線について、住宅は境界線から50cm以上距離を取って建築しなければならないというルールがあります。
ただし、耐火構造等の条件を満たす場合や地域によっては50cm未満でも良いというケースもあるため、心配な場合は自治体の窓口や弁護士などの専門家に相談しておくと良いでしょう。
ブロック塀の解体トラブルを防ぐための配慮
ブロック塀に限らず、解体工事はトラブルに注意が必要です。特にコンクリート製の工作物は建設機械を使用して解体したり土地から引きはがしたりするため、大きな音や振動が発生します。
工事期間中は近隣住民に迷惑をかけることになるので、次の点に配慮するようにしましょう。
近隣挨拶をきちんと行う
工事前に挨拶回りをしっかり行っておくことは、トラブルを避けるために有効です。解体工事では騒音や振動、粉塵など、近所に迷惑をかけてしまいます。
人は突然被害を受けたりや迷惑を被ったりすると、怒りの感情が一気に高まる一方で、予告されていた迷惑についてはそれほど怒りを感じないとされています。そのため、事前にしっかりと挨拶しておくことが重要となるのです。
一般的に挨拶回りは解体業者が実施し、工事に関する説明をします。しかし、クレームを避けるためにも、できるだけ施主からも直接近隣住民に挨拶しておくようにしましょう。
法律やルールを順守する
ブロック塀を解体・設置する場合には法律で定められたルールを守らなければなりません。解体の際は解体工事業者が地方自治体に許可を取らなければならない場合があります。
また、新しく設置するブロック塀は、建築用コンクリートブロックとして認められている製品を使用し、高さ2.2m以下にするほか、さまざまな細かい規定があります。
一方でブロック塀の解体には補助金制度も設けられており、自治体によって異なりますが、撤去費用の1/4~1/2かつ上限額5~15万円の助成金が相場です。
複数の業者から見積もりを取る
解体工事などの建設工事を依頼するときは、いきなり一社に決めるのではなく、複数の業者から相見積もりをとりましょう。
建設工事は相場が分かりにくいため、相見積もりをとることでおおよその相場を把握できます。さらに、複数の業者を比較検討することで、納得のいく工事を依頼しやすいというメリットもあるでしょう。
相見積もりをしていることが分かると業者が気を悪くするのではないかと心配する方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。
「どうぞ他者と比較検討してください」と気持ちよく言ってくれる業者は自社の提案に自信があり、信頼できる業者だとも考えられます。
ブロック塀の解体に関するよくある質問
いざブロック塀の解体を行おうと思ったとき、さまざまな疑問が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
ここでは、ブロック塀の解体に関してよくある質問とその回答を紹介するので、事前に確認しておき、疑問を解消しておきましょう。
ブロック塀の撤去は自分でできる?
ブロック塀の取り壊しはDIYでも可能です。DIYの場合、ハンマーやノミを使って上から壊していきます。中に鉄筋が入っている場合は、解体も大変な作業になるでしょう。
さらに、解体の際に飛んだ破片が隣家の外壁を傷つけてしまったり、道路に破片が飛んで通行人にとって危険になったりします。そのようなことがないように周囲をしっかりと養生しておくことも大切です。
解体作業は体力的にも大変なだけでなく、近隣への配慮も欠かせません。できるだけ解体工事業者に依頼して、安全に撤去するのがおすすめです。
ブロック塀の所有者はどのような責任を負う?
地震などでブロック塀が倒壊し、通行人などに危害を与えてしまった場合は、ブロック塀の所有者の責任になります。
実際に2018年6月18日に発生した大阪府北部地震で、倒壊したブロック塀による死亡事故が発生しています。また、被害者から損害賠償を請求を受け、数千万円の賠償額となった例も。
ブロック塀の安全確保は所有者が行わなければなりません。所有しているブロック塀は定期的に安全性を確認する、劣化したら交換するなどの管理が必要です。
まとめ
ブロック塀の解体にはさまざまな注意点があります。解体作業中には重機などによる騒音や振動が発生するため、近隣への配慮も必要です。
信頼できる業者に依頼すれば、近所へ配慮したうえで品質の高い工事をしてくれるでしょう。
相見積もりを上手に利用して、良い業者を選ぶことが解体工事成功のポイントです。
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