
生垣はフェンスに比べて、自然な目隠し効果と爽やかな緑による美しい景観を作れるため、検討する人が多い外構です。しかし植物なので枝が伸びたり病気にかかることもあり、定期的なお世話がかかせません。
そこでおすすめなのが丈夫で手間がかからない樹木を生垣に選ぶことです。ではどのような樹種を選べばよいのでしょうか。
この記事では、手間のかからない生垣の選び方や作り方、具体的な樹種を紹介します。
手間のかからない生垣とは?

生垣はフェンスとは違い、生きた植物なので、手入れをしなければなりません。しかし、忙しい人や園芸初心者さんにとっては、できるだけメンテナンスの手間がかからない樹木がよいのではないでしょうか。
以下に手間がかからない生垣の条件を挙げるので、条件を満たした樹種を選びましょう。
成長速度が遅い
生垣に使用する植物は、成長速度の遅い品種がおすすめです。成長が旺盛すぎる植物は、すぐに枝が伸びてしまって樹形が乱れたり、枝や葉が混み合って風通しが悪くなってしまいます。きれいな生垣を維持するには頻繁に剪定を行わなければなりません。
このような手間を避けるには、ゆっくり成長する樹木がおすすめです。また、大木にならない品種を選ぶのもポイントの一つだといえるでしょう。
病害虫に強い
生垣に使う植物は病害虫に強いものを選ぶことも重要です。病害虫は植物の生育を妨げるだけでなく、見た目も悪くなってしまいます。
薬剤を撒いて対策できますが、植物の状態を頻繁に観察できない場合は、害虫がつきにくく病気になりにくい樹種を選ぶと手間を軽減できます。
葉が硬く、大きな花が咲かず、葉に香りがある植物は病害虫に強い傾向があります。とくにコニファーをはじめとする針葉樹は、病害虫に強いといえるでしょう。
環境適応力が高い
生垣には環境適応力が高い樹種を植えることも大切です。環境適応力とは、気温や日当たり、乾燥などの環境の変化に適応する能力のことです。
このような植物は丈夫なので、さまざまな気候条件に適用できます。日照条件が不安定な場所や、暑さ、寒さなどの気温の変化、季節の変動が激しい地域、道路沿いなどの環境が悪い場所でも育つので、お世話の手間がかからないだけでなく、外構デザインが崩れにくくなります。
水やり・肥料の必要が少ない
水やり、肥料の手間が少ない植物は、メンテナンスフリーのガーデンを実現しやすくなります。植栽は地植えの場合、根が完全に根付いたら、晴れの日が続いた場合以外はほとんど水やりは必要ありません。生垣は基本的に地植えのため、あまり心配する必要はないでしょう。
肥料は植物の成長に必要なものですが、ヒイラギなどの土壌の栄養分をあまり必要としない植物を選ぶと施肥の頻度を少なくすることができます。
手間のかからない生垣の選び方

では、手間がかからない生垣はどのように選べばよいのでしょうか。ここでは、手入れの時間をできるだけ短くしたい人や、少ない手入れでおしゃれな庭づくりをしたい人におすすめの生垣の選び方を紹介します。
常緑樹と落葉樹
生垣の落ち葉掃除の手間を省くなら、常緑樹がおすすめです。植物には年間を通して緑の葉がある常緑樹と秋から冬にかけて葉を落とす落葉樹の大きく二つに分けられます。
落葉樹は秋に落葉したときの掃除の手間がデメリットです。落ち葉が近隣に飛ばされて住宅を汚してしまうおそれがあるため、こまめに掃除を行わなければなりません。常緑樹は落葉の季節がないので、掃除の手間が少なく済みます。
ただし、落葉樹は薄い綺麗な葉を持ち、紅葉で葉色の変化を楽しめるなど四季の移ろいを感じられる点がメリットです。どちらを植えるかは手間と季節ごとの見た目を照らし合わせて考えると失敗を防げます。
成長速度と剪定頻度
生垣には成長速度が遅く剪定の頻度が少なく済む樹種が向いています。成長速度が速すぎると枝葉がどんどん伸びてしまい、生垣の形を崩してしまいます。形を整えるために頻繁に剪定しなければならないのは負担になるでしょう。
剪定は春と秋の2回で済む樹種がおすすめです。年に1回の強剪定と半年後の弱剪定程度の手間なら最低限の手間で済みます。
ただし、範囲が広い場合やごみの処理が大変な場合は、業者への依頼も考えておくとよいでしょう。
手間のかからない生垣を作る

ここでは手間がかからない生垣を作る方法を紹介します。最初の計画次第でその後の手間も変わるので、自宅に合った生垣のプランを外構工事業者と相談しながら決めると、失敗を防げるはずです。
植栽方法を工夫する
生垣の樹種の選び方や植え方、配置方法を工夫してお世話の手間を最小限に抑えることもできます。たとえば樹木は自然な樹形を活かせる品種を選べば、多少枝が伸びてきても違和感がありません。
また、フェンスやスクリーンなどの人工物と組み合わせることで、生垣のナチュラルな雰囲気を活かしながらモダンでスタイリッシュな外構に仕上げられます。
外構設備と生垣の割合・配置については外構工事業者に予算を伝えた上でデザインの提案をしてもらうとよいでしょう。
必要最低限の本数にする
生垣に使用する植栽の数を最低限にすることで、手間を減らすこともできます。視線を程よく遮る程度の間隔で植えれば、見通しと風通しを確保できるでしょう。
植栽の間隔があくことにより防犯面が心配な場合は、フェンスと組み合わせることをおすすめします。
生垣は植物が成長するにつれて枝が伸びてきます。最初はある程度余裕を持った間隔で植えて、将来的に丁度よい隙間で光と風を取り入れられる外構デザインになるように計画することも大切です。
生垣を作らないほうが良い場所

外構には生垣の設置を避けた方が良い場所もあります。以下に生垣を作らない方が良い代表的な場所と、その理由を解説するので事前に確認しておき、トラブルを避けましょう。
隣家の土地との境界
隣家との境界線に生垣をつくるとトラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。
木が成長して、隣家の敷地に枝が伸びてしまった場合、敷地内に越境した分は勝手に切ることはできません。
隣人の承諾をもらえば切ることは可能ですが、毎回断りを入れるのは面倒でしょう。気をつけていても成長が旺盛になる時期はすぐに枝が伸びて越境することもあり、剪定の度に手間になります。
また、落ち葉が隣家の敷地に落ちて迷惑をかけることもあるので、境界線はできるだけブロック塀や金属製のフェンスを設置したほうがよいでしょう。
外壁や室外機の近く
生垣は外壁や室外機、エコキュートなどからできるだけ離して植えましょう。外壁に植木の枝や葉が当たると外壁を傷つけたり苔などの汚れがつきやすくなります。
また、室外機やエコキュートの風が植物に当たり続けると植物が枯れるおそれがあるため、避けた方が無難です。それだけでなく室外機の前に物を置くと、クーラー運転の際に温かい空気の逃げ場がなくなり、エアコンの運転効率が悪くなるため、苗木は離して植えるようにしましょう。
水道管・排水管の近く
生垣は水道管やガス管などの配管の近くは避けた方がトラブルを防げます。植物には根を深く張る品種も存在し、地中の配管にぶつかったり圧迫したりするケースがあります。
新築の施工後10~20年経過後に、植栽の根が原因で配管が破損した、というトラブルも珍しくありません。植栽は配管がある場所から60cm程度離して植え付ける、大きく根を張らない性質の樹種を選ぶなどが大切です。どのような品種を植えたら良いかはプロに相談すると安心です。
手間のかからないおすすめの生垣

ここでは手間がかからず育てやすいおすすめの生垣の種類を紹介します。
洋風の家、和風の家それぞれに合う樹種のほか、初心者におすすめの樹種も紹介するので、自宅の雰囲気やガーデニング歴に合わせて選んでください。
洋風な家におすすめの生垣
洋風の家には、明るい雰囲気の樹木が向いています。しっかり目隠しして生垣の役割を果たしながら、洋風の明るい住まいを彩ってくれる樹種には以下のようなものがあります。
ボックスウッド
ボックスウッドはセイヨウツゲとも呼ばれる、欧州で生垣やトピアリーとして広く活用されている常緑性低木です。枝葉が密生するため刈り込んで、生垣や高さ50cm程度の低い植栽として広く活用されています。葉は爽やかな黄緑色で、冬にオレンジ色に紅葉します。
プリペット
プリペットは、やや細長い小さい葉を茂らせる常緑低木で、とくにシルバープリペットが人気です。樹高は1.5~4mと、生垣のなかでは背が高いため、洋風住宅の生垣に雰囲気が合います。生育旺盛で枝を大きく伸ばすため、こまめな剪定で理想的な樹高を保てます。
アベリア
アベリアは春から秋にかけての長期間、小さな白いラッパのような形の花を咲かせる常緑低木で、生垣や洋風庭園の植栽として人気があります。耐寒性、耐暑性に優れ、丈夫で育てやすいので、初心者でも安心です。生育が旺盛で樹形が崩れやすいので、こまめに剪定する必要があります。
ヒメシャラ
ヒメシャラは初夏にツバキに似た小さな白い花を咲かせる、シンボルツリーとしても人気の樹木です。新緑と紅葉、樹形の美しさが魅力の木で、放置していても樹形が崩れにくい点も魅力のひとつといえるでしょう。洋風だけでなく和風にも合うので、日本の戸建て住宅にぴったりです。
和風な家におすすめの生垣
では和風建築の生垣におすすめの樹木には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下に育てやすく人気の樹木を紹介するので、自宅の条件に合ったものを探してみましょう。
マキノキ
マキノキは、針葉樹のなかでは太い葉で密集して茂るので、和仕立ての垣根や段づくりにすることが多く、和風住宅によく合います。雌雄異株で、雌木には実が実ります。温暖な地域に自生するので、東北以降での植栽にはあまり適しません。春と秋の年2回を目安に剪定を行い、形を整えます。
サザンカ
花の咲く華やかな生垣にしたい場合はサザンカ(山茶花)がおすすめです。サザンカは耐寒性が高く、秋から冬にかけてツバキに似た花が開花し、刈り込んで形を整えられるため、生垣によく活用されています。生垣の形を整える強剪定は花が終わった直後の3月頃に行い、9月頃に混み合った枝を間引くと樹形が整い、生育もよくなります。
ヒイラギ
ヒイラギは特徴的なぎざぎざの肉厚の葉を茂らせる常緑小高木で、家から魔を追い払う縁起物として、古くから庭木や生垣として利用されてきました。刈り込みに強いため、冬に強めに刈り込んでも春には新芽が芽吹き、見栄えのよい生垣になります。葉がトゲトゲしていて触ると痛いため、防犯目的で植えるのもおすすめです。
マサキ
マサキは肉厚でツヤのある葉が年間を通して茂る常緑樹です。刈り込みに強く樹形維持も容易なため、生垣によく使われています。和風の住宅によく使われますが、洋風の住宅でも違和感なく生垣として活用できます。日光を好みますが、明るい日陰でも十分育つので場所を選びません。
初心者におすすめの生垣
生垣をつくりたくても、植物の管理の経験が少なく自信がないという方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は手入れの手間が少なく丈夫な植物がおすすめです。
ここでは、生垣にできる植物のなかから特に初心者におすすめの樹種を紹介します。
ツゲ
庭木で使われるツゲは一般的にモチノキ科のイヌツゲです。日本庭園の定番の玉散らし仕立てのほか、生垣やトピアリーに使用されます。耐寒性が高く、大気汚染や潮風にも強いため、多少環境が悪い場所でも生育します。生育が遅く、病害虫にも比較的強いので、お手入れの手間が少なく済む樹木です。
イヌマキ
イヌマキは房総半島以西の海岸近くの産地に自生する常緑針葉樹で、さまざまあるマキの種類のなかでも最も一般的な樹種です。マイナス10度でも耐えられるほど耐寒性が強く、土壌を選ばず刈り込みにも耐えるため、手間のかからない生垣として知られています。
トキワマンサク
トキワマンサクは、しなやかな枝に卵型の葉が揺れる姿と細いリボン状の花が木を覆うほど咲かせる姿が人気で、生垣だけでなく庭木としても親しまれています。日向を好みますが半日陰でも育ち、剪定も真夏以外は可能です。葉が緑色の種類と赤色の種類があり、とくに赤色が人気があります。
キンモクセイ
キンモクセイは秋に強い芳香のあるオレンジ色の小さな花を咲かせる常緑樹です。庭木として人気がありますが、生垣にも利用されます。刈り込みに強く、病害虫の被害も受けにくいので、初心者でも育ちやすい樹木です。ただし生育が旺盛なのでこまめに剪定しないと大きくなりすぎるケースがあります。
生垣に関するよくある質問

ここでは、生垣を設置する際によく挙がる質問とその回答を紹介します。エクステリアの境界線を生垣で飾りたいと考えている方はチェックして、疑問を解消しておきましょう。
手間のかからない生垣でも目隠し効果はある?
手間がかからなくてもしっかりと葉を茂らせ、目隠ししてくれる樹種は多くあります。とくに上でご紹介したような樹木は丈夫で手間がかからず、生長も旺盛なので、年に数回のメンテナンスでしっかりと目隠し効果を発揮してくれるでしょう。
エクステリアの見通しも確保したい場合は隙間をあけて植え、視線が気になる場所には庭の植栽と組み合わせたり、シンボルツリーを植えて視線を誘導すると効果的です。
冬でも緑を維持できる生垣はありますか?
常緑樹であれば冬でも緑色の葉っぱを茂らせ、グリーンの生垣を維持できます。冬季も青々とした葉があるので、冬でも外構が寂しくなりません。一方、落葉樹は紅葉を楽しめるというメリットもあります。
常緑樹は落ち葉掃除の手間がかからないという利点はありますが、季節の移ろいを感じたい、冬場の日当たりを確保したいという場合は落葉樹を選ぶという方法もあるので、家族のライフスタイルに合わせて樹木を選ぶのがおすすめです。
まとめ

生垣は自宅に合った種類を選べば、手入れの手間がかからず、自然に住宅を囲えます。地域によっては生垣の設置に助成金が利用できる場合もあるので、自治体に確認しておくことをおすすめします。
また、予算内で理想の外構を完成させたい場合は、相見積もりを取り、費用相場を把握したうえで業者を選定するとよいでしょう。
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