
洗い出しは日本に昔からある伝統左官工法で、コンクリートの骨材を表面に浮き上がらせて、ざらざらとした質感を生み出す技術です。
近年では、人の往来が日常的に多い玄関アプローチに滑りにくく足元が安定しやすい洗い出しを採用するケースも増えています。
この記事では、洗い出しとはどのような仕上げなのか、メリット、デメリットなどを紹介します。
洗い出しアプローチの基本

洗い出しアプローチは、その趣のあるデザインがアプローチに個性を与え、自然に視線を誘導できます。
では、洗い出しとはどのような仕上げ方法なのでしょうか。ここでは、洗い出しの基本や玄関アプローチでよく採用される理由について解説します。
洗い出しとは?
洗い出しとは「コンクリート洗い出し仕上げ」という、コンクリートの仕上げ方法の一つです。洗い出しは、化粧砂利などの骨材を混ぜたコンクリートを塗り付けたあと、完全に固まってしまう前に表面のセメントを水で洗い流し、化粧砂利を浮き出させて仕上げます。
施工する際は、骨材をセメントに混ぜたものを均一に塗りつけて伏せこみ、半分乾いたところで表面を水で洗い出します。水を含ませたブラシで丁寧に表面を洗い、中に入っていた骨材を出し、完全に硬化すれば完成です。
石の種類で雰囲気が変わる
洗い出しは使用する砂利の色や大きさによって表情が大きく変わるため、コンクリートの金ゴテ仕上げや刷毛引き仕上げとは違った個性的な床面にできる点、天然石の表情を活かして自然と調和したデザインになる点が魅力です。
たとえば茶系の石やピンク色の化粧材など、暖色系の素材を取り入れると床面に温かみが加わり、敷地全体を柔らかな雰囲気に演出してくれます。
グレーの小さい砂利を取り入れれば表面に凹凸をつくり出しながらコンクリート土間に近い雰囲気にまとめられるなど、雰囲気は好みで調節することも可能です。
玄関・アプローチで選ばれる理由
洗い出し仕上げが玄関・アプローチで採用されやすいのは、目を引くデザインで視線を誘導しやすいほか、安全性に配慮した仕上げにできるためです。また、上塗り材を使用しない仕上げなので、強度が強い点でも好まれています。
洗い出し仕上げは表面に凹凸ができるため、雨の日でも滑りにくい床面に仕上げられます。凹凸により水溜まりができにくく、アプローチの水溜まりで悩んでいる方にもおすすめです。
洗い出し仕上げのデメリット

洗い出し仕上げにはいくつか注意しておかなければならない点があります。
以下に費用や仕上がり、お手入れに関してのデメリットを挙げるので、検討している場合はデメリットをよく把握したうえで決断しましょう。
施工費用が高くなる
洗い出し仕上げのデメリットの一つに施工費用がほかの仕上げ方法よりも高額になりやすい点が挙げられます。
コンクリートの金ゴテ仕上げの費用相場は1㎡あたり1~1.5万円が目安です。
一方、洗い出しは工程と骨材にかかる費用が増える分、施工費用が高くなります。洗い出し仕上げの施工費用は、1㎡あたり1~2万円が目安です。
洗い出しは骨材の種類により費用が変わります。たとえば、玉砂利は20kgあたり1,000~4,000円程度が相場です。
施工する職人によって仕上がりに差が出る
洗い出し仕上げは技術力が求められるため、施工する職人によって仕上がりに差が出やすい点には注意が必要です。
施工する際は、セメントが完全に固まる前の絶妙なタイミングで洗い出し作業をしなければなりません。
このタイミングが速すぎると砂利が動いてしまい、遅すぎると露出が不十分となる「焼きつき」と呼ばれる状態になります。セメントの硬化は気象条件によって変化するため、タイミングやスピードの適切な判断が欠かせません。
技術が未熟だと見た目が悪いだけでなく、耐久性にも影響が出てしまいます。このようなことがないように、洗い出し仕上げを依頼する際には経験豊富な業者に依頼するようにしましょう。
経年変化で砂利の剥離がある
洗い出し仕上げは原料がモルタルと天然石のため、紫外線などによる劣化はありません。しかし、物を落とす、硬い物がぶつかるなど、強い衝撃により石が取れてしまうことがあります。また、車が頻繁に出入りする場所で石が取れることもあるでしょう。
石が取れると見た目が悪いだけでなく、つまずいて転倒したり怪我をするリスクがあります。劣化している箇所を早めに見つけるためにも業者に定期的に点検を依頼し、必要に応じて修繕を行いましょう。
高圧洗浄機は不向き
コンクリートについた汚れには高圧洗浄機が最適ですが、洗い出し仕上げには向いていないため、使用しないようにしましょう。洗い出し仕上げは骨材が表面に露出しており、これに高圧洗浄機で水をかけると、石が割れたり取れたりするおそれがあります。
通常の土間コンクリートでも、ピンポイントのノズルを使って高い圧力で洗浄すると、コンクリートの表面を傷つけてしまう可能性があるため、低い圧力でノズルをコンクリートから離して使用しなければなりません。
洗い出し仕上げは通常のコンクリーとよりもデリケートなので、ホースで水をかけてデッキブラシで汚れを落とすようにしましょう。
施工できない業者もある
洗い出し仕上げは難易度が高い工法のため、施工できる業者が限られる点もデメリットといえるでしょう。
洗い出し仕上げの難しいところは、骨材が入ったモルタルをしっかりと石が均一に詰まっている状態に塗り付けなければならないところと、セメントを洗い出すタイミングの見極めです。夏場と冬場では洗い出しのタイミングも異なり、職人の知識と経験が問われます。
洗い出し仕上げを依頼する際はホームページなどで施工事例をチェックし、豊富な施工経験を持っている業者に依頼しましょう。
洗い出し仕上げのメリット

一方で、コンクリート洗い出し仕上げには、ほかの床材にはない魅力があります。
ここでは洗い出し仕上げのメリットを紹介するので、デメリットと照らし合わせて考えてみてください。
高級感がある
洗い出し仕上げの大きなメリットの一つに、高級感が挙げられます。
天然石を使用しているため、自然な色合いと輝きが気品あふれる落ち着いた雰囲気を作り出してくれます。人工物には出しにくい自然な色むらや模様がアクセントにもなり、無機質になりがちな外構に立体感を持たせてくれるでしょう。
和風建築や和モダンな住宅なら黒や白の石で重厚な雰囲気に、洋風など現代的な住宅なら暖色系の石でカジュアルな雰囲気などと、住宅のイメージに合わせて自由自在に石を選べる点もメリットです。
滑りにくく安全
洗い出し仕上げは、表面に砂利が浮き出ることにより凹凸ができるので、雨の日でも滑りにくく安全な点が特徴です。そのため、人の行き来が多い玄関アプローチや、車を出入りさせる駐車場などにおすすめといえるでしょう。
高級感のある床材にタイルがありますが、タイルは滑りやすいというデメリットを持っています。洗い出しは高級感を持ちながら滑りにくいので、外構に重厚感を持たせつつ安全を確保するのには最適です。
雨の日の人や自転車の出入りはもちろん、将来車いすでの出入りを検討している場合はアプローチに洗い出しを取り入れると、安全な住まいづくりに役立ちます。
デザイン性・個性が出せる
洗い出し仕上げは意匠性に優れ、好みの石を自由に敷き詰められるため、エクステリアの床材に個性を出すことも可能です。
洗い出しに使用できる骨材は種類が多く、和のテイストから明るくモダンなテイストまで、自由に雰囲気を調整できます。
たとえば和のテイストに仕上げたい場合は那智黒石や御影石などが向いています。また、黄色や明るい茶系の洗砂利やカナリヤ石なら、コンクリートの床面でありながら植栽とマッチするナチュラルな雰囲気を演出できるでしょう。
これらの石は濡れると色が変化するため、晴天と雨天で二つの雰囲気を楽しめる点も大きなメリットです。
洗い出しのデメリットを軽減する対策

洗い出し仕上げはメリットも多いのですが、デメリットも多いのが現実です。しかし、デメリットに対してしっかりと対策しておけば、個性と高級感を併せ持った洗い出しのアプローチを実現できます。
以下の対策方法をチェックして、理想通りのエクステリアを完成させましょう。
コスト対策
コンクリートの金ゴテ仕上げや刷毛引き仕上げに比べて施工単価が高い洗い出し仕上げですが、工夫次第で限られた予算のなかでも施工が可能です。
たとえば、骨材となる砂利は種類によって価格が異なります。同じ色味でも安価な砂利を選べば仕上がりのイメージを崩さずに費用を節約できるでしょう。
また、洗い出しの面積を少なくする方法もあります。洗い出し仕上げはアプローチの人が通るところのみに限定し、ほかの部分を砂利や芝生など安価な素材を選べば、費用を安くできるだけでなく、立体感のあるエクステリアが完成します。
施工品質の安定化
施工難易度が高い洗い出し仕上げは、技術の高い業者に依頼することが大切です。
品質の高い工事を実施する業者を見つけるには、相見積もりを活用しましょう。まずは依頼する現場のエリア内で洗い出し施工ができる業者をインターネットで探します。業者のホームページに行き、会社概要や施工事例をチェックしてきちんと工事を行っている業者か確認しましょう。
そして気になる業者に問い合わせます。問い合わせしたなかから3社程度に絞って現地調査と見積もりを依頼します。このときに洗い出しの実績について聞いておくとよいでしょう。見積内容とプランをしっかり比較して選ぶと失敗を防げるはずです。
劣化・メンテナンス対策
洗い出しの経年劣化を防ぐためには、日常のお手入れと定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。
日々のお手入れでは、こまめな清掃で汚れが定着しないようにすることが大切です。日常の掃除は、ほうきで表面のゴミを取り除けば大丈夫です。汚れが付着した場合は中性洗剤をかけてブラシで優しくこすり、最後に水で洗い流します。
掃除のついでにひび割れや砂利の剥離がないか点検しておくと安心です。もし、劣化を発見した場合は早めに施工業者に連絡し、必要に応じて補修してもらいましょう。
他素材と洗い出しの違いと費用感

外構の床材にはさまざまな種類があり、デザイン性はもちろん、費用にも違いがあります。
ここでは外構でよく採用される床材の特徴と施工費用の目安を紹介するので、家づくりの参考にしてください。
タイル
タイルは高級感のあるエクステリアをつくりだすのに最適な素材です。施工費用の相場は1㎡あたり約16,000~19,000円と外構の床材としては高額な部類ですが、耐久性に優れているため、一度施工すれば長期間綺麗な状態を維持できます。
レンガ
レンガは焼き物の持つ温かみのある風合いが、植栽との相性抜群な素材です。敷き詰めるだけで洋風のおしゃれなアプローチに変身します。レンガ敷きの施工費用は、1㎡あたり2万円が目安です。
インターロッキング
インターロッキングとは、インターロッキングブロックを噛み合わせる施工方法です。モルタルでブロックを固定するのではなく、噛み合わせて設置するので水はけが良い点が特徴です。また、色の組み合わせでデザイン性を高められます。施工費用の相場は1㎡あたり8,000~1万円です。
石材
石材は自然な風合いがあり、高級感と落ち着いた印象を与えます。種類と色、模様も豊富なので、住宅の雰囲気に合わせて選べます。耐久性が高く、丈夫な点も大きなメリットです。費用は乱形石張りの場合、1㎡あたり約2~2.5万円が相場です。
土間コンクリート
土間コンクリートは、強度とコストパフォーマンスから、住宅の外構の床材に多く活用されています。明るいグレーの色とシンプルな仕上がりが住宅をモダンな雰囲気に演出してくれます。外構で多く採用されているのが表面が滑らかな金ゴテ仕上げで、施工費用は1㎡あたり1~1.5万円が目安です。
砂利
砂利は施工が簡単で費用が安いため、人気の床材です。カラーバリエーションも豊富で、基本のグレーのほか、高級感のある白や黒、温かみのある黄色、ピンクのほか、グリーンや青色のものも存在します。上を歩くと音がするので防犯にも最適です。砂利の施工費用は1㎡あたり約3,000~4,000が相場です。
まとめ

洗い出しはその意匠性や機能性に優れた仕上げ方法ですが、ご紹介したようにいくつかの注意点もあります。とはいえ、事前の準備や工夫次第で解消できるデメリットも多いので、エクステリアに個性と立体感をプラスしたいなら、取り入れてみてはいかがでしょうか。
検討している場合は早めに外構工事業者に相談し、プランを提案してもらうことをおすすめします。
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