
カーポートバルコニーは、駐車場に屋根を付けると同時に屋上部分を住宅の新たなスペースとして活用できる外構設備です。空間が道路に面していないため、プライバシーを守りながら生活の幅を広げられる点がメリットです。
しかし一方でいくつかのデメリットがあり、欠点を理解していないと後悔することになってしまいます。そこで今回は、カーポートバルコニーの主なデメリットや設置の際の注意点などを解説します。
カーポートバルコニーのデメリットは?

カーポートバルコニーのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、主なデメリットを8つ紹介するので、事前にしっかりチェックして失敗を防ぎましょう。
広い設置スペースが必要
カーポートバルコニーは、敷地にある程度の余裕がないと設置できません。スペースはもちろんのこと、建ぺい率にも注意が必要です。
建ぺい率とは、敷地内に建てられる建築物の面積の割合がどれくらいあるのか示したものです。防災や風通しの観点から建ぺい率には制限が設けられており、上限を超えて建物を建てることはできません。
カーポートバルコニーは建築物とみなされるため、現在敷地内に建てられた建築物とカーポートバルコニーを合わせて建ぺい率を超える場合は、設置できないことになります。
設置費用が高額になる
カーポートバルコニーは高額な外構設備です。一般的なカーポートは20万円程度から製品を選べますが、カーポートバルコニーは1台用のもので100〜200万円ほど設置費用がかかります。
本体価格の相場も高額ですが、部材の量が多く重量もあるため、搬入費や施工費がかさんでしまいます。
グレードの高いタイプを選ぶと1台用で400〜500万円ほどかかるため、予算をしっかり決めたうえで見積もりを依頼し、慎重に製品を比較することが大切です。
建物固定のときは建物へ負担が生じる
外壁に固定するタイプのカーポートバルコニーは、外壁に負担がかかることは知っておきましょう。外壁に負担がかかるような工事は、ハウスメーカーの保証が外れる可能性があるため注意が必要です。
近年のハウスメーカーの住宅は長期保証のプランが増えていますが、メーカー側は長期保証するためにさまざまな制約を設けています。
たとえば外壁にビスで外構設備を固定するような場合、保証が外れてしまう場合があります。壁付け型の設置を検討している場合は、保証に関してハウスメーカーに確認しておくと安心です。
保証が外れる場合や外壁への負担が心配な場合は、独立型のカーポートバルコニーを設置するという選択肢もあります。
1階の採光や通風が悪化する
カーポートバルコニーは屋根の面積が広いため、1階の部屋が暗くなる可能性が高くなります。そのため、1階は書斎や寝室として利用し、2階をリビングにするなど、間取りの工夫が必要です。
採光の問題は自分の敷地だけではありません。隣家に大きく日陰をつくってしまうおそれがあり、トラブルの原因になるので、設置前に十分にシミュレーションしておく必要があります。また、設置の際には事前に隣家に説明し、了承を得たうえで設置するとトラブルを最小限に抑えられます。
排水やメンテナンスの手間が増える
カーポートバルコニーは屋根部分を人が利用するため、こまめなメンテナンスが欠かせません。
バルコニー部分は毎日紫外線や雨風にさらされる過酷な環境であり、床面や手すりなどが劣化しやすい場所といえます。人が安全に使用するためには、定期的な塗装の塗り替えや床面の補修、排水溝の掃除が必要です。
通常のバルコニーであれば、天井のポリカーボネート板が雪の重みで歪んでしまうなどのトラブルがない限り、特別なメンテナンスは必要ありません。しかし、カーポートバルコニーは設置するだけでメンテナンスの手間が増えることは知っておきましょう。
セキュリティ対策が必要なことがある
カーポートバルコニーを設置する場合は、セキュリティ対策をしっかり行わなければなりません。とくに独立型バルコニーは階段を登れば簡単に2階の窓に近づけてしまいます。道路に面していないので、人の目を気にせずに侵入できてしまう点にも注意が必要です。
死角になりやすい場所や侵入口になりやすい場所にはセンサーライトや防犯カメラを設置する、サッシにはペアガラスを採用するなどして防犯対策をしましょう。
外観の調和が取れない場合がある
カーポートバルコニーが建物の外観と調和が取れず、住まい全体がちぐはぐな印象になってしまうおそれがあります。
カーポートバルコニーはモダンで直線的なデザインの製品が多いので、シンプルな住宅とは調和します。しかし、和風建築やヨーロッパ風の住宅には合わない可能性があるため、設置を考えている場合は本当に住宅とマッチするのか、しっかりと検討することが大切です。
大型の外構設備のため、住宅の大部分をカーポートが隠してしまうこともあります。おしゃれでデザイン性の高い外壁にしている場合は、本当に必要かどうかよく考えて決めましょう。
確認申請が必要なことがある
後付けリフォームでカーポートバルコニーを設置する場合は、建築確認申請が必要です。建築確認申請とは、建築物が法律の基準に適合しているか、新築工事や増築工事の着工前に審査を受けるための手続きです。
対象となるのは10㎡を超える床面積を持つ建築物なので、カーポートバルコニーのほとんどが該当します。申請は本来なら施主が行いますが、実際には工務店や建築士が代理して行います。業者に依頼した場合、かかる費用は10万円前後です。
通常のカーポートは小型のものであれば多くの場合、確認申請が不要になります。確認申請費用が負担になる場合は、無理にカーポートバルコニーを設置せず、一般的なカーポートの設置を検討してもよいでしょう。
カーポートバルコニーをオススメできる人とは?

カーポートバルコニーには価格面をはじめとしたさまざまなデメリットがあり、設置してから後悔したという声も少なくありません。では、どのような住宅に向いている設備なのでしょうか。
2階にリビングがある
リビングが2階にある家は、カーポートバルコニーを設置すればリビングと一続きの空間を手に入れられます。リビングとつながっていることにより、拡張効果によりリビングが広く感じられるはずです。
また、1階にウッドデッキを設置した場合に比べて地面の湿度の影響を受けにくく、風通しが良く、湿気によるデッキの劣化を防げる点も大きなメリットです。
リビングと繋がっていれば動線もスムーズになり、家族のレジャーも気軽に楽しめるでしょう。
高低差がある敷地の有効活用
土地に高低差がある場合にもカーポートバルコニーはおすすめです。住宅が高い位置にあり、建物の下部分に駐車場がある場合、駐車スペースにカーポートバルコニーを設置すればデッキ部分が住宅の1階のウッドデッキとして有効活用できます。
庭のスペースが十分に確保できなくても、カーポートバルコニーが庭の役割を果たします。
カーポート部分もビルトインガレージ風の屋根付き駐車場に仕上がるため、車を汚れから守れる点も大きなメリットです。
プライベート空間の確保
カーポートバルコニーは道路に面していないため、家族のプライバシーを守りたいと感じている人にもおすすめです。
1階のウッドデッキが道路に面していると、どうしても外からの目線が気になってしまいます。目線を遮ろうとして背の高いフェンスでデッキを囲むと、今度は圧迫感に悩まされるでしょう。
2階のデッキなら道路からの目線が入りにくく、解放感とプライベート空間を両立できます。
カーポートバルコニーの活用方法

カーポートバルコニーはさまざまな活用方法があり、住む人の生活の幅を広げてくれます。ここでは、カーポートバルコニーのおすすめの使い方を紹介するので、設置を検討している場合はイメージしてみましょう。
洗濯物干しや物置にする
カーポートバルコニーは、レジャーやくつろぎの場だけに利用できるわけではありません。日当たりを活かして、洗濯物干し場としても活用できます。2階に洗濯機を置いている住宅では動線の効率化にもなり、家事の負担を減らせます。
バルコニー部分に干せば、通行人やリビングから洗濯物が目に入りにくくなり、プライバシーも守れるでしょう。
また、デッキ部分の十分な広さを活かして、家族の人数分の布団も一度で干すことが可能です。
ガーデニングなど趣味の場にする
日当たりのよいカーポートバルコニーは、ガーデニングにも最適です。プランターで育てられる野菜なら手軽に家庭菜園を楽しめるでしょう。
鉢を多く置く場合は排水溝が詰まらないように注意が必要です。落ち葉や土などはこまめに取り除き、鉢は排水の邪魔にならない場所に置きましょう。
完全なプライベート空間なのでヨガやストレッチをする場所として活用できるかもしれません。好みの観葉植物を置けば、自分だけの癒しの空間として利用できるはずです。
子ども用の遊び場として使う
カーポートバルコニーは、子どもの遊び場にも向いています。道路に面していないので、飛び出しのリスクが少なく、安心して遊ばせられます。夏場はビニールプールで水遊びするのにもおすすめです。
日当たりが良い反面、暑くなりやすいのでシェードやオーニングで日陰を作って熱中症対策をしましょう。床面も高温になりやすいため、マットを敷くなどの対策も必要です。
子どもが柵を乗り越えないように十分な高さにし、足をかけられない格子の形状を選んだり、足場になるようなものを柵の近くに置かないようにしたりして、安全面に配慮しながら使用しましょう。
バーベキューなどの娯楽に使う
完全プライベート空間のカーポートバルコニーなら、家族団らんの時間に使うのにぴったりです。壁付け型のバルコニーなら、リビングから一続きの空間でピクニックをしたり、バーベキューを楽しんだりできます。
柵のある2階部分なら、近所の目を気にせず楽しめます。ただし、声が響いてクレームにつながる可能性もあるので、終了時間を決めて行う、バーベキューをする場合は事前に近隣住民に伝えておき、においや煙に配慮するようにしましょう。
カーポートバルコニーの後悔を回避する方法

では、カーポートバルコニーの設置を後悔しないためにはどのようにすればよいのでしょうか。以下を参考にして業者と相談しながら、じっくり検討したうえで導入を決断しましょう。
活用目的をハッキリさせておく
カーポートバルコニーの設置を検討する際は、どのような目的で使うのか具体的に決めておくことが大切です。
明確な目的がないまま設置すると、大型のカーポートによる日陰の影響でストレスを感じたり、掃除の手間が増えたりして、住む人にとって負担になった状態で放置することになります。
設置費用も高額なうえ、重量もあるので撤去も簡単ではありません。一度設置したら変更は難しいと考えて慎重に検討しましょう。
専門業者に相談する
カーポートバルコニーを検討している場合は、専門の外構工事業者に相談して住宅に合っているか、業者から見たメリットとデメリットはどのようなものかを聞いておくと安心です。
プロにアドバイスを受けながら計画していけば、住まいにぴったりのカーポートバルコニーを設置できますし、条件によっては設置しない決断をするケースもあるでしょう。
相談するときは業者のホームページで施工事例などを確認したうえで、実績のある複数の業者に問い合わせることをおすすめします。相談の際に設置を強く勧める業者とは契約せず、現場の状況を理解したうえでデメリットもしっかり伝えてくれる業者に依頼したほうが失敗を防げます。
カーポートバルコニーを設置する際の注意点

ここでは、カーポートバルコニーを設置する際に押さえておきたい注意点を紹介します。快適にカーポートバルコニーを利用するだけでなく、安全や近隣への影響も考慮して設置すると活用方法も広がるので、しっかりチェックしておいてください。
高めのフェンスなどを設置する
カーポートバルコニーのフェンスはプライバシーと安全性を確保するために高めのフェンスを設置するようにしましょう。とくに子どもがいる家庭では、よじ登らないように十分な高さのフェンスを設置します。
カーポートバルコニーのフェンスの素材はアルミ製のほか、人工木製、樹脂製などがあり、希望のデザインとお手入れ方法などから選べます。
フェンスを高くしたいからといってDIYでラティスなどを追加することはおすすめできません。強風で飛ばされて近隣の住宅や人に損害を与えるおそれがあります。ラティスを設置する場合は悪天候の前日までに屋内に片付けるようにしましょう。
採光・通風のシミュレーションをする
上でも紹介しましたが、カーポートバルコニーを設置すると採光や風通しが悪くなる可能性があるため、事前にしっかりシミュレーションしたうえで設置しないと、自分の敷地だけでなく隣家の環境にも大きな影響を及ぼします。
とくに南側に設置すると日光が遮られ、1階の玄関ドア付近や室内が暗くなってしまい、昼間でも照明が必要になるかもしれません。また、建物に隣接して設置すると風通しの悪化によりエクステリアがジメジメとした環境になり、苔やカビ、害虫の温床になってしまいます。
このようなことを防ぐためにも、設置によってどれくらいの日陰ができるのか、事前に業者に相談し、シミュレーションしたうえで導入を決断すると安心です。
排水対策を十分に行う
カーポートバルコニーでは、雨水の排水も考慮する必要があります。土間コンクリートが水に濡れると変色する可能性があるため、排水をどこにするのかも考慮しましょう。
設置後は排水機能が低下しないようにこまめに掃除する、排水溝の周辺にものを置かないようにすることも大切です。
積雪が多い地域では、多積雪対応のタイプが向いています。また、雪をどこに下ろすかも事前に決めておくと安心です。
近隣住宅への影響を確認する
カーポートバルコニーのような大型の外構設備を設置すると、近隣の住宅に影響を及ぼす可能性があります。特に隣家は日照時間が変わってしまい、庭が寒くなったり、植栽の生育が悪くなったりするおそれがあり、トラブルの原因になりかねません。
大きく背の高いカーポートバルコニーは、近隣住民に圧迫感を与える場合もあります。周辺の景観を乱すようであれば、設置そのものを見直さなければなりません。
設置の際はトラブルを避けるためにも近隣住民に丁寧に説明し、了承を得たうえで着工するようにしましょう。
防犯面を確認する
カーポートバルコニーは2階からの侵入リスクが高まるため、十分に防犯対策をする必要があります。独立型は階段をあがれば簡単に2階の窓に近づけますし、壁付け型はよじ登ってバルコニー部分にあがってしまえば、2階の掃き出し窓から簡単に侵入できてしまいます。
また、1階部分の車の影は死角になりやすく、不審者にとって都合の良い場所です。
2階の窓の侵入対策はもちろんのこと、照明でエクステリア全体の見通しを確保する、侵入口になりやすい場所は砂利敷きにするなどの対策をしましょう。
カーポートバルコニーに関するよくある質問

ここではカーポートバルコニーの設置に関して、よくある質問とその回答を紹介します。税金や申請関連のことにも触れているので、しっかりチェックして疑問を解消しておきましょう。
固定資産税の対象になる?
カーポートバルコニーは固定資産税の対象ではありません。したがって、カーポートバルコニーを設置したからといって固定資産税の支払額があがることはありません。
固定資産税の対象になるには以下の条件を満たしている必要があります。
- 外気分断性(屋根と三方向以上に壁がある)
- 定着性(基礎により土地に定着している)
- 用途性(居住・作業・貯蔵などの用途に利用できる)
カーポートバルコニーはこの3つの条件のいずれも満たしていないため、固定資産税の対象とはなりません。
建築確認が必要になるのはどんな場合?
建築確認申請は、原則としてすべての建築物が対象です。一方で、建築基準法上の「建築物」に該当しないものは申請の対象外となります。
建築基準法第二条では、建築物を「土地に定着する工作物のうち、屋根および柱または壁を有するもの」としているので、土地に定着していないものは対象外と判断される可能性が高いといえます。
参考:建築基準法 第二条一項
さらに、国土交通省では
- 床面積10㎡以下
- 防火地域または準防火地域以外
- 外部から物を出し入れでき、内部に人が立ち入らない
の条件に該当するものは申請不要としています。
カーポートバルコニーは多くの場合、申請が必要です。不明点は外構工事業者に質問し、申請も依頼すると施主の負担が少なくなります。
カーポートバルコニーの独立型とは?
独立型とは、建物の外壁に取り付けずに設置するタイプです。階段が設けられており、バルコニーへは階段を使って行き来します。
建物に壁付けしないため、外壁への負担がなく、自由度が高く設置できます。必ずしも住宅に隣接して設置する必要がなく、建物と離れた場所にも設置が可能です。
一方で、2階の掃き出し窓からバルコニーに出入りができず、一度屋外に出て階段を使ってバルコニーに上がるので、リビングと一体化した空間にしたい場合には向きません。
まとめ

カーポートバルコニーは高額なうえ規模の大きい設備のため、デメリットをよく理解したうえで設置を決断しましょう。デメリットは自宅だけでなく、近隣住民にも影響を及ぼすので、近隣への影響をよく考えておかなければなりません。
プロの視点からメリットとデメリットを提示してもらうと失敗を最小限に抑えられるので、計画の早い段階から外構工事業者に相談することをおすすめします。
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