
解体工事をはじめとした建設工事では、契約を結ぶと着手金を求められる場合があります。
建物の解体工事は決して安くない工事なので、着手金がどれくらいになるのか、いつ支払えば良いのか不安になることもあるでしょう。
この記事では、解体工事の着手金の相場や支払うタイミング、注意点などについて解説します。
解体工事で着手金は必要?

解体工事における着手金とはそもそもどのようなものなのでしょうか。
ここでは、着手金の必要性や相場、支払いタイミングについて紹介します。解体工事を予定している場合は内容を把握してスムーズに工事を始められるように準備しましょう。
解体工事での着手金とは?
着手金とは、解体業者に工事を依頼した段階で支払う工事費用の一部のことです。解体業者は着手金を使用して工事の準備を進めます。
着手金と似た言葉に手付金、内金などがありますが、それぞれ意味が少しずつ異なります。
着手金が工事を進めるのに必要なお金であるのに対し、手付金は不動産などを買い手が購入する意思を示し、売買契約が成立したことを証明するという意味で支払うお金です。
内金は売買契約成立後に購入代金の一部を入金する意味で用いられ、契約成立の証という意味はありません。
法的に着手金は義務なのか?
工事の着手金を支払うのは義務ではありません。民法の原則としては、請負契約の成立と工事完了、引き渡しをもってはじめて工事代金を請求できます。
また、依頼者も工事が完了するまで代金を支払わないと主張できるため、引き渡しされなければ支払う必要はありません。
しかし、目的物を完成させなければ代金を回収できない場合だと、資金力がない解体業者は下請け業者に発注したり、重機を手配したりできず、解体工事ができなくなってしまいます。
そのため、民法の原則を変更し、着手金をもらって工事の準備にあてるのです。これは解体工事だけでなく、新築や建て替えの際にハウスメーカーや工務店なども同様に着手金を請求していることは多くあります。
解体工事の着手金の相場と支払いタイミング

解体工事の着手金はどれくらい支払えばよいのでしょうか。ここでは着手金の相場と支払う時期を紹介します。
事前に準備しておき、スムーズに工事を開始できるようにしましょう。
着手金の一般的な割合相場
解体工事の着手金は、工事費用総額の2分の1または3分の1となるのが一般的です。
多くの解体業者では均等割を採用しており、150万円の解体工事で2回払いの場合は1回目に75万円、2回目に75万円をそれぞれ支払います。
3回払いの場合は1回目50万円、2回目50万円、3回目50万円です。そのなかで1回目に支払う代金を着手金として取り扱います。
業者によっては契約時に手付金として10%、着工時に着工金として30%請求する業者もあるので、事前に確認が必要です。
工事代金の支払いタイミングと方法
支払いのタイミングは通常、契約時です。この段階ではローンが利用できないことが多いので自己資金で支払うのが一般的です。
着手金は基本的に現金で、銀行振込で解体業者の指定口座に支払います。支払期日については契約時に伝えられるので、余裕をもって入金手続きをするようにしましょう。
着手金の金額や支払いタイミングは、解体業者によって異なるため注意が必要です。資金の準備の都合などで心配な場合は、見積りの際に営業担当者に聞いておきましょう。
着手金不要の業者もある
業者によっては着手金不要の場合もあります。工事が終了し、引き渡しされたら一括で支払う契約の場合は着手金不要です。工事費用が少額の解体工事であれば、一括払いを採用するケースも多くあります。
着手金不要の場合、工事がきちんと行われているかを確認したうえでの支払いとなるため、施主にとってはメリットが大きいといえるでしょう。
一方で、解体業者側は入金完了まで人件費や廃棄物処理費などを負担しなければならないリスクを背負うことになります。
着手金支払いの際の注意点

着手金支払いの際にはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
以下に支払い時の注意点や、業者が設定する着手金の金額について気を付けておきたいことを解説しているので参考にしてください。
着手金は現金払いのところが多い
解体工事の着手金は、現金が一般的です。現金といっても解体工事は高額なので、通常は銀行振込で支払います。
少額の解体工事で着手金を払うときは、現金を営業担当者に手渡しして支払うケースもありますが、指定された期限までに銀行振込で支払うのが基本と覚えておきましょう。
解体業者のなかにはクレジットカード支払いに対応している業者も存在します。
クレジットカード払いは便利ですが、支払う着手金がカードの利用限度額の範囲内か、事前に確認しておくことは忘れないようにしましょう。
着手金が多すぎる場合は要注意
稀に着手金の額が多すぎる業者がいるため十分注意が必要です。
多くの業者は工事費用を分割する場合は均等割りを採用しています。つまり、解体費用が100万円で2回払いにするケースでは、50万円ずつ支払うことになります。
もちろん、分割払いの回数、金額は交渉でき、双方が合意すれば一括払いを選択してもかまいません。
ただし、100万円の工事を2回払いするときに着手金が70万円、というように、明らかに初回の支払額が多い場合は注意が必要です。
なぜなら、業者の資金繰りが悪い場合や着手金を受け取ったあとに連絡がとれなくなるリスクがあるためです。
もし、着手金が多すぎる場合は、その理由を質問し、納得のいかない回答をする業者とは契約しないようにしましょう。
着手金にまつわるよくあるトラブル事例と解決策

ここでは解体工事の着手金をめぐって起こりやすいトラブルの事例とその解決策を紹介します。
万が一トラブルが起こっても慌てずに対応できるように、どのようなトラブルが発生しやすいのか知っておきましょう。
工事が遅れたまま着工しない
着手金を支払ったにもかかわらず、なかなか工事が始まらないというのはよくあるトラブル事例です。
業者がすぐに工事を開始できないのは必ずしも悪意があるわけではなく、繁忙期で建設機械や人員を確保できなかった、予定していた作業員が病気や怪我、退職などで急遽現場に入れなくなった、などが原因の場合があります。
着工に遅れが出そうな場合は営業担当者から連絡があるはずですが、心配な場合は問い合わせみましょう。
また遅れが出ることを考慮して、工期に余裕を持って依頼することも大切です。
高額な着手金を要求された
上でも紹介したように、着手金が高額すぎる業者には要注意です。解体業者のなかには悪徳業者が紛れているのも事実であり、着手金の入金後、連絡がとれなくなってしまうケースもあります。
相手が悪徳業者だった場合は、連絡がとれるうちであれば話し合いで返還を求めます。
話し合いに応じてくれない場合は、内容証明郵便を利用する、家庭裁判所に申し立てて仮差押えする、民事調停するなどして対応します。
工事の支払い方法は法的なルールが定められていないため、希望を伝えれば融通がきくことも多くあります。
解体費用の総額に対して着手金の割合が多いと感じた場合には解体業者に交渉しましょう。
トラブルを回避する業者選びのポイント

解体工事でトラブルをできるだけ避けるためには業者選びが重要です。
ここでは解体業者を選ぶときに押さえておきたいコツを紹介するので、ポイントを押さえて優良業者に工事を依頼しましょう。
許可証や実績の確認
解体工事業者選びの際は、業者が建設業許可または解体工事業登録のいずれかを持っているかを確認しましょう。
建設業許可は500万円以上の建設工事で必要なもので、一定の条件を満たした組織運営と専任技術者、財産基盤が必要で、取得の難易度が高いことで知られています。
解体工事業登録は建設リサイクル法第24条の登録拒否事由に該当しないこと、技術監理者を選任していることなど、廃棄物処理や安全管理がきちんとされていなければ取得できません。
そのほか、解体業者のホームページを確認して実績をチェックすることも重要です。実績を確認すればどのような工事を得意としているかも分かるため、業者選びにも役立つでしょう。
複数社から相見積もりを取る理由
解体業者はいきなり1社に絞り込まず、3社程度の複数業者から相見積もりを取ると失敗を防げます。
相見積もりを取れば費用相場を把握しやすく、不当に高い料金で工事しようとする悪徳業者との契約を防げるはずです。
相見積もりを取ると業者が気分を害するのではと思うかもしれませんが、そのようなことはありません。
優良業者ほど「どうぞ他社と比較検討してください」と言ってくれます。一方で、その場で契約書を作成しようとするなど契約を急がせようとする業者は悪徳業者の可能性があるため十分注意が必要です。
まずは気になる業者に電話やメールで問い合わせ、疑問点を質問して、明確な説明を理解できるまで丁寧にしてくれる業者に見積もりを依頼しましょう。
解体工事の着手金に関するよくある質問

ここでは、解体工事の着手金に関してよくある質問とその回答を紹介します。
解体工事を検討している場合は、しっかりと内容をチェックしておき、トラブルを未然に防ぎましょう。
着手金を払ったけどキャンセルしたらどうなる?
解体工事は基本的にいつでもキャンセルが可能です。契約書を取り交わす前なら特に違約金を支払う必要もありません。
一方で契約後のキャンセルは、いくらかの違約金が発生する可能性があります。
違約金の相場は工事請負金額の10〜30%とされていますが、解体業者によって異なるので、約款に記載されている内容を確認しましょう。
違約金は着手金を支払っている場合、着手金から差し引かれることがあります。着手金の取り扱いについても約款をよく確認しておくことが大切です。
着工直前の場合は重機や人員の発注が済んでいる可能性があり、違約金の金額が大きくなり追加入金の必要性が出る可能性があるためキャンセルする場合は早めの決断が重要です。
解体業者が倒産したら着手金はどうなるのか?
解体工事中に解体業者が倒産した場合、工事が中断し、着手金など入金した資金も返還されないリスクが発生します。
通常、解体業者で破産手続きが行われ契約が解除された場合、着手金は破産手続きのなかで債権として弁済を受けられます。しかし、財源が不足している場合は全額返還されない場合もあるため注意が必要です。
そのような事態を避けるためには、着手金、中間金を少なく設定してリスクを抑えるほかに、依頼する解体業者が工事完成保証や保険に加入しているかチェックすることも大切です。
工事完成保証に業者が加入していれば、何らかの事情で解体業者が工事を完成できない状態になったときに組合や連合会が工事を引き継いで完成させてくれます。
解体工事費用を住宅ローンでまかなう場合の着手金はどうなる?
解体工事の費用はローンを利用して支払うことも可能ですが、審査に時間がかかるため、着手金の支払いに間に合わせるにはスケジュール管理が重要です。ローンの審査はおよそ2週間~1か月ほどかかります。
また、審査には解体工事の見積書が必要です。そのため、着手金入金の期日を業者と話し合って遅らせてもらう、または着手金については自己資金で一度支払っておく、などの対応をしなければなりません。
ローンを利用して解体工事を行いたい場合は、早い時期から計画しておくようにしましょう。
まとめ

解体工事では着手金が必要な場合があります。工事費用の支払い方法も業者によって異なるので、見積りの際に支払いタイミングや回数について確認しておき、早めに資金の準備を進めておくと安心です。
また、依頼の際は約款に明記されている内容をしっかりとチェックしたうえで契約を交わしましょう。
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