
あるはずの境界杭が紛失している、境界杭がずれてる気がするという場合、正しい位置に設置し直すにはどれくらいの費用がかかり、誰が費用を負担するのでしょうか。
この記事では、境界杭の打ち直し費用や費用を負担する人について解説します。境界杭の復元の流れについても紹介しているので、参考にしてください。
境界杭の打ち直しにかかる費用

境界杭の打ち直しにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。境界杭を復元する場合、境界杭の設置費用だけでなく、調査や測量、申請などさまざまな費用がかかります。
以下で費用の目安を紹介しているので、大まかに把握しておきましょう。
境界杭打ち直しの平均的な費用
境界杭の平均的な復元費用は、約20~30万円が目安です。
内訳として、境界杭の設置費用は民間地との隣接地は約1万円、公用地との隣接地は約2万円が相場です。正式な境界杭の前に目印として仮の境界杭を設置する場合はおよそ4万円かかります。
境界杭の打ち直し作業でかかる費用は境界杭の設置費用だけではありません。資料取得、調査に約3万円、現況測量に約10万円、書類作成に約3~6万円、登記申請を代行してもらう場合は4~8万円の費用がかかるのが一般的です。
資料の有無や作業の難易度に応じて異なる
境界杭の打ち直しは、条件によって費用に幅があります。きちんとした資料があり、隣接者の協議も問題なく行われた場合であれば、比較的安い費用で済むケースもあります。
市街地と山林地域など、地域によって費用に差があることにも注意が必要です。
登記の申請手続等を代行してもらうかどうかでも費用が変わってくるので、事前にいくつかの測量事務所に問い合わせをし、費用を見積もりしてもらいましょう。
解体業者が打ち直しを実施できる場合もある
解体作業中に境界杭が抜けた場合で、設置場所に目印がある場合は、解体業者が打ち直しする場合もあります。このとき、隣地所有者など関係者が立ち合い、設置位置について合意しなければなりません。もし、目印等がない場合は、再測量が必要です。
また、基礎の解体工事などで業務用やむを得ず、一時的に境界杭を撤去しなければならない場合には、事前に解体業者からその旨が伝えられます。このときも、事前に関係者が立ち合い、合意の上で作業を行います。
境界杭の打ち直しの費用は誰が払う?
境界杭の打ち直し費用は民法223条では、隣地所有者と折半することが原則です。
法律上の規定があるとはいえ、境界杭の復元費用についてはどちらが負担しなければならない、という決まりはありません。
現実には土地の売却、分筆などの目的で境界を明確にしたいと考えている側の土地所有者が費用を負担します。
ただし、勝手に境界杭を打ち直すと隣地所有者と境界線トラブルにつながるおそれがあるため、隣地所有者に同意を得たうえで設置しなければなりません。
境界杭の打ち直しする流れ

ここでは、境界杭の打ち直しの流れを紹介します。境界杭を復元させるには、資料収集や隣家との合意などが必要となるので、業者任せにせず施主も手順を把握しておくと安心です。
法務局・役所での資料調査
まずは境界線の調査に必要な資料を法務局で収集します。必要な資料は公図、地積測量図、登記事項証明書などです。また、役所の窓口で道路台帳を調べる場合もあります。そのなかでも土地の境界線を調べるうえで最も重要な資料が公図と地積測量図です。
公図とは土地の位置と形状を確定するための法的な地図で、一般的な地図とは異なり、土地の区画と地番を示した図面です。
地積測量図は、一筆の土地の面積や形状、位置関係などを記載しています。公図が土地の大まかな位置を知るために使用する一方で、地積測量図は隣地との位置関係を詳細に確認するために使用します。
現地調査
法務局で収集した資料をもとに、現地で境界標の状態や土地の状況を調査します。現地に境界杭があるかどうか、取得した資料と現場の整合性、周辺の状況を確認するのが一般的です。
このとき、隣接する土地の所有者にあらかじめ調査をする旨を説明し、測量の許可をもらわなければなりません。
隣家が空き家で、土地の所有者と連絡がとれない場合は不在者財産管理人を選任することで不在者の代理人として測量の立ち合いから境界確定まで行えます。
事前測量
現地調査の情報をもとに事前測量(現況測量)を行います。事前測量は既存の建物とブロック塀、道路、電柱等を測量し、土地の形状や境界線を大まかに把握するものです。
事前測量では、必要に応じて隣家に立ち入り許可をもらい、測量を実施する場合があります。
測量結果に基づいて現況の図面を作成し、事前調査の資料や依頼者と隣りの人の話をもとに公正な復元点を確定するための検討を行います。
立会い
立ち合いは境界線を確定する作業において最も大切な工程です。依頼人と隣接地所有者が立ち合い、資料に基づき、測量で導き出した復元点で問題ないか、確認してもらいます。
隣地が道路などの公共物で所有者が市町村の場合、その場では合意しません。現況測量図に仮杭設置点を載せた図面を役所に持ち帰ってもらい、役所で判断したあとの合意となるので、個人の土地どうしの境界線立ち合いに比べて時間がかかる点は留意しておきましょう。
復元測量
立ち合いで隣地所有者の合意を得られたら、測量をして境界点を座標値化し、面積計算を行って詳細な図面を作成します。このときも、境界杭の設置個所を隣地所有者に立ち合いながら確認してもらい、関係者の同意書を残しておくと、トラブルの発生を避けられるでしょう。
また、境界杭には、コンクリート杭、石杭、金属標など、いくつかの種類があります。依頼人から境界標の種類に指定があった場合は、指定された境界杭を用意します。
境界杭の設置
確定測量図をもとに正式な境界杭を設置します。図面と境界杭を依頼主と隣地所有者が確認したら、双方が境界確認書に捺印します。その後、測量図と境界確認書等の書類を市町村に提出し、境界確認証明を受け取れば境界杭の設置は完了です。
土地の登記情報に記載された面積と測量図の面積が異なっている場合は、土地家屋調査士に土地地積更正登記の申請を依頼します。
地積更正登記では、確定測量図、境界確認書、土地家屋調査士への委任状が必要です。
地積更正登記が完了すると、土地の面積が登記簿に正しい数字で記載され、確定測量図が地積測量図として法務局に保管されます。
境界杭の打ち直しが必要になるケース

境界杭は紛失したり破損した場合に打ち直しが必要です。
紛失や破損の原因は様々あり、解決方法も異なります。以下によくあるケースを紹介するので、原因に合わせて対応しましょう。
工事が原因
解体工事や外構工事で、境界杭が建物や外構設備と一緒に撤去されてしまうケースがあります。また、盛土をして地中深くに埋まってしまっていることもあるでしょう。
境界杭は原則として自己管理となるので、解体工事を実施したあとに、境界杭が紛失していないか、ずれていないか確認する必要があります。
工事完了後、引き渡し前の立ち合いで境界杭を確認しておかないと、いつ紛失したのか分からなくなってしまう可能性があるので、十分注意しましょう。
土砂や原因が不明な場合
大雨などの自然災害で境界杭が土砂に埋もれたり、流されてしまうこともあります。また、道路に面している場合、車がぶつかって飛ばされてしまうこともあるでしょう。
そのほか、測量を行ってから長い年月が経っている場合、当時の測量技術の問題から境界線が建築時から移動してしまっている場合もあります。
紛失したことがすぐに判明した場合は、境界杭の復元を行えば問題ありません。しかし、紛失した時期が分からない場合や、紛失してから長期間経過している場合は、復元測量を行った方がよいでしょう。
土地の売却・賃貸・相続
土地の売却や賃貸、不動産相続で分筆を行う場合に境界杭がずれたり紛失している場合は、復元測量と境界杭の設置が必要です。
境界線を明らかにしていない土地は、買い手の購買欲低下や値引交渉につながりやすいだけでなく、トラブルに発展するおそれがあります。
相続で土地を分筆し相続人それぞれが相続する場合は、境界が曖昧なまま遺産分割を進めることはできません。
いずれにせよ、境界を明確にしてから手続きを進めることになります。
境界杭の打ち直しにかかる費用負担と責任

境界杭の打ち直し費用は上でも紹介した通り、原則として隣地所有者と折半しますが、実際には境界線を明確にしたい側が負担します。
では意図せず境界杭を撤去されてしまった場合は誰が負担するのでしょうか。ここでは第三者に境界杭を撤去されてしまった際の責任の所在について解説します。
解体工事中に勝手に抜かれた場合
解体工事業者に境界杭を誤って撤去されてしまった場合は、解体業者に杭の復元費用を負担してもらえます。そのため、解体工事で境界杭を抜かれたりずらされた場合はまず、解体業者に連絡しましょう。
また、昔から設置されていた境界杭を抜かれてしまった場合は、境界線がずれているケースがあるので測量の費用を負担してもらえるように交渉するとよいでしょう。
ただし、この場合の杭の復元や測量は、証拠がないと交渉が難航する場合もあるので、解体工事の前に境界杭の写真を撮っておくと安心です。
第三者が故意に境界杭を撤去した場合
第三者が境界杭を故意に動かしたり撤去したりした場合、5年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。これは境界杭が無断で設置されたものであっても同様です。
また、境界杭を破損させた者に対しては器物損壊罪が適用され、3年以下の懲役または30万円以下の罰則が課される可能性があります。
境界杭は法律では明確な義務・制度などはありません。しかし、土地境界の目印となり、境界調査のためには重要なものなものなので、勝手に移動させたり撤去した者に対しては厳しい罰則が設けられています。
境界杭の打ち直しに関するよくある質問

ここでは境界杭の紛失や打ち直しに関して、よくある質問を紹介します。
土地に境界杭が見当たらない場合やずれている可能性がある場合は疑問を解消し、早めに境界の復元を依頼するようにしましょう。
境界杭が不明な場合はどうすればいい?
境界杭が見当たらず、隣家との境界線が曖昧な場合は、そのまま解体工事をしたりブロック塀を設置せず、法務局で境界線を確認する、測量を実施するなどして境界の位置を確定させましょう。
境界があいまいなまま工事を実施すると、隣家の敷地内にブロック塀を設置してしまったり、隣家の所有物を撤去してしまい、トラブルにつながるおそれがあります。
境界線を調査する場合は隣地所有者にも立ち会ってもらい、両者が納得できる形で確定させることが大切です。
確定測量までする必要が本当にある?
一か所の境界杭の打ち直しであれば復元測量だけで十分でしょう。しかし、数か所の境界杭を復元した場合は、境界確定測量を選択する場合もあります。
境界確定測量は一区画すべての境界杭の位置と物件の範囲が明確になり、土地の所有権も明らかになります。
将来土地の売買を検討している場合は、筆界が明確になっていた方が不動産としての価値が高まりやすいため、確定測量をしておいた方が売主にとって有利といえるでしょう。
復元測量にするか確定測量にするかは、目的に応じて土地家屋調査士などの専門家と相談しながら決めてください。
まとめ

境界杭がずれている場合は隣地所有者と合意のもと復元測量を行い、正しい位置に設置し直します。
マンションなどの共同住宅とは違い、所有者が自分で管理しなければならないため、土地購入後や解体工事・外構工事を行う場合は事前に写真を撮るなどして記録しておくと安心です。
もし、紛失・破損していたり、ずれているのを見つけた場合は早めに専門家に連絡しましょう。
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