
老朽化した住宅を解体しようと考えたときに気になるのが、その工事費用ではないでしょうか。
解体費用は決して安くないため、所有する物件の解体準備が進まなかったり相続した空き家を放置してしまったりすることもあるでしょう。
この記事では、一般的な30坪の住宅の解体費用の相場や、費用を抑えるためのポイントを紹介するので、解体予定の物件の状況と照らし合わせて検討してください。
30坪の家の解体費用相場は?

戸建て住宅の解体費用は、その構造によって金額が大きく変わります。
ここでは木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造別に解体費用の相場を紹介するので、解体予定の住宅の工事費用を大まかに計算するのに活用してください。
木造
木造住宅の解体費用の相場は坪単価約3~5万円が目安です。30坪の住宅であれば90~150万円程度となります。
木造は戸建て住宅ではおよそ93%、新築着工数も約85%が木造を選択するとされている国内では最も多い構造で、戸建て住宅の構造のなかでは比較的安価で解体が可能です。
ただし、同じ延べ床面積でも基礎の面積が大きい平屋建ての方が解体費用が高額になりやすい傾向があります。
鉄骨造
鉄骨住宅は解体に坪あたり約6~7万円かかるのが一般的です。30坪の場合、約180~210万円かかると考えておけばよいでしょう。
鉄骨造は梁や柱に鉄骨を利用している住宅で、鋼材の厚みにより軽量鉄骨造と重量鉄骨造に分かれます。
軽量鉄骨造は2階建ての一軒家や小規模店舗などに採用されており、重量鉄骨造は3階建て以上の一軒家から高層マンション、ビルなどの大規模な建築物に用いられるのが一般的です。解体費用は重量鉄骨の方が高額になる傾向があります。
鉄筋コンクリート造
RC造の住宅の解体費用の坪単価は約7~8万円です。30坪で210〜240万円程度かかり、住宅のなかでは高額といえるでしょう。
RC造は耐久性、耐震性に優れている分、解体しにくい構造です。そのため、解体作業で重機は欠かせません。
また、RC造はほかの構造の住宅に比べて重量があるため、軟弱地盤では基礎杭が入っているケースがあります。杭は専用の重機で抜く必要があり、別途費用も発生します。
30坪の家の解体費用の内訳

では、解体工事では何にどのような費用がかかるのでしょうか。ここでは解体工事の費用の内訳を解説します。
工事を依頼するときは、以下を参考にしながら見積もり内容をチェックしてください。
仮設工事費
仮設工事とは、解体現場から近隣へのホコリや粉塵の飛散を防ぐため、仮設足場と養生シートを設置するための工事です。
足場は高所で作業員が安全に作業をするために必要なものです。養生シートはホコリや粉塵の飛散防止だけでなく、現場から破片や工具が隣家や隣接する道路に飛散することを防ぐと同時に、作業員の墜落事故防止にも役立ちます。
安全性確保とトラブル防止のためには必須の費用と考えておきましょう。
解体工事費
建物本体の解体にかかる費用で、解体工事費用全体のおよそ3~4割を占めます。解体工事費の内訳は人件費のほか、重機の運送費などです。
木造住宅のような解体が比較的容易な構造は費用が安く、鉄骨造やRC造のような解体に手間と時間がかかる構造は費用が高くなる傾向があります。
また、狭小地や道幅が狭い現場、道路と段差がある現場は重機が進入できないため手壊し解体となり、人件費が多くかかる可能性があります。
廃棄物処理費
破棄物処理費は解体作業で発生した廃材の処分費用で、解体工事費用全体の4~5割を占めます。解体工事で発生した木材やコンクリートガラなどの廃材は、産業廃棄物として解体工事業者が責任を持って処理しなければなりません。
具体的には、産業廃棄物の排出業者である解体業者には、マニフェストの作成が義務付けられています。
工事完了後はマニフェストを確認して、廃棄物が運搬業者、中間処理業者に渡り、最終処分されていることを確認しておきましょう。
整地費用
整地費用は解体後の土地を平らにならす工事にかかる費用で、工事全体の1割程度を占めます。整地とは、ガラスやコンクリート、木くずなどのがれきを取り除き、重機で転圧して土地を平らにしてきれいに整える工事です。
整地をしている土地は新築工事など、次の用途のための工事をすぐに始められるため、売買価格を高くできる可能性があります。
大きな段差を整地工事で解消する場合や地盤改良、樹木の根が大きい場合などは費用が高額になる場合もあるので注意が必要です。
雑費
解体工事では上記のほかにもさまざまな費用がかかります。例えば、交通量の多い道路に重機を停めて作業しなければならない場合はガードマンが必要です。また、現場に工事車両を駐車できず、コインパーキングを使用する場合は駐車場の料金もかかります。
そのほか、自治体への申請手続きを解体業者が代行する場合、申請費用がかかります。解体工事で作業に関係する費用以外にどのような諸経費がかかっているかは、見積書を確認しましょう。
家の解体費用が高くなりやすいケース

解体費用が高額になるのにはいくつかの要因があります。以下に解体費用が高額になりやすい事例を紹介するので、取り壊しを予定している家が条件に該当していないか確認してみましょう。
付帯工事の発生
建物以外の部分を工事・作業しなければならない場合、付帯工事費用が発生します。
付帯工事は主に敷地内の残置物の処分や、ブロック塀やカーポートなど外構設備の解体、庭石、庭木の撤去などです。
付帯工事は事前に判明しているものであれば見積もりで費用が分かりますが、想定外に大きい庭石だった場合など、追加費用が発生することもあるため、注意が必要です。
また、残置物のなかに家電製品がある場合、産業廃棄物とは別に処理しなければならず、費用が上乗せされるケースもあります。解体費用を抑えるためには、敷地内の不用品はできるだけ自分で処分しておきましょう。
アスベストの除去
建物にアスベスト(石綿)を使用した建材が含有している場合、除去費用が30坪の住宅で20〜40万円と高額になります。
戸建て住宅では、レベル3のアスベスト含有成形板が、1970~90年代に広く使用されてきました。屋根材や外壁材など割れにくい建材が中心なので、飛散リスクはレベル1~2に比べて低いといえますが、破断・粉砕作業により飛散のおそれがあるため、水や薬液で湿らせながら作業します。
自宅にはアスベストは使われていないと思っていても現地調査で判明するケースもあります。特に築40~50年の住宅を解体する場合はアスベストの除去費用も念頭に置いておきましょう。
地中埋設物の撤去
解体現場に地中埋設物がある場合、その撤去費用が追加でかかります。古い家の解体工事では、地中に浄化槽や井戸、古い水道管、杭などが埋まっているケースがあります。
浄化槽のマンホールが庭にある、井戸が見えているなど、事前にその存在が分かれば見積もりの際に撤去費用が上乗せされますが、解体工事の途中でその存在が明らかになるケースも少なくありません。その場合は、追加費用が請求されます。
また、産業廃棄物に関するルールが整備されていなかった時代に建てられた住宅では、以前建っていた住宅を解体したときに出たがれきや基礎が埋められている場合もあります。この場合、撤去費用を施主が負担しなければなりません。
立地の悪さ
解体現場の立地条件により重機を搬入できない場合は手壊し解体となるため、費用が高くなります。
道幅が2m未満の狭い道や、道路と敷地の間に大きな段差がある場合、敷地が階段の上にある場合は重機の搬入ができません。
また、交通量が多い繁華街や商店街などの道路に面している場所も道路に車両が停車すると交通の妨げになるため、手壊し解体が採用されるケースがあります。
重機のあるなしでは作業効率に大きな差があり、費用も大幅に変わります。想定外の費用を支払わないためにも現地調査をしっかり行ったうえで見積もりを出してもらうことが大切です。
元請業者への依頼
解体費用は、元請業者がどのように工事を手配しているかどうかでも変わります。
解体工事における元請業者とは、お客さまから直接工事の発注を受ける業者のことです。請け負った工事は自社で行うか、下請業者に発注して下請業者が工事をするかのどちらかになります。
元請業者が自社で工事を行っている場合は特に費用に影響を受けることはありませんが、下請に発注している場合は中間マージンが発生している可能性があります。この場合、マージン分の費用が高くなるため、十分注意が必要です。
業者選びの際には、解体業者のホームページを見て、元請が直接工事を行っているか確認してみると良いでしょう。
家の解体費用を抑えるためのポイント

住宅の解体費用は高額なため、できる限り費用を抑えたいものです。
ここでは、解体にかかるコストを抑えるためのコツを紹介するので、できることは取り入れて無駄な費用を削減しましょう。
複数の業者に見積もりを依頼する
現地調査と見積もりを複数の業者に依頼し、比較・検討することで、安く工事を依頼できる業者を選べるだけでなく、優良業者を見つけやすくなります。
業者によって工事の単価や利益率の割合、追加費用の有無などが異なるため、料金にも差があります。相見積もりをとって複数の業者の見積書を比較することで、お得な業者を選定しやすくなるでしょう。
業者を比較する際は安さだけではなく、アフターサービスの充実度や営業担当者が質問に対して丁寧に明確に回答してくれるかなど、総合的に考えて最もよいと思った業者に依頼しましょう。
残置物を事前に処分する
敷地内に残った不用品や物置などの残置物を自分で分別して処分しておくと、廃材の処分にかかる費用を抑えられるため、解体費用の総額を安くできます。
古い家具は自分で粗大ごみの処分場に持ち込むと費用を節約でき、使える家具はリサイクルショップに買い取ってもらうと買取料金が解体費用の足しになるでしょう。
特にエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機は家電リサイクル法に基づき、適切に回収しなければならないため、家の中に残していると処理費用が別途かかります。できるだけ自分で購入した店舗に引き取りしてもらうなどしておきましょう。
自分でできる作業を行う
解体に伴う申請手続きなどを自分で行うと、解体工事に関連する諸経費を削減できます。
住宅を解体したら、地域の法務局に建物滅失登記をしなければなりません。建物滅失登記をすることにより、建物にかかっていた固定資産税がなくなり、同時に土地の固定資産税の支払額が変わります。
手続きは土地家屋調査士や司法書士に5万円程度で依頼できます。自分で行えば書類を揃える手間はかかりますが、約1,000円程度で済むため、費用を節約したい場合にはおすすめです。
補助金制度を活用する
老朽化した住宅を解体する場合は、補助金・助成金を利用できる可能性があります。自治体によって補助金制度は異なりますが、以下のようなものがあります。
- 老朽危険家屋解体撤去補助金
- 危険廃屋解体撤去補助金
補助金は年度ごとに予算が組まれています。終了している可能性もあるので、早めに自治体に確認しておくと安心です。
また、経験豊富な解体業者なら、補助金についてアドバイスしてくれるケースもあるので、相談してみるとよいでしょう。
解体のタイミングを調整する
建て替えや売却などのスケジュールに余裕がある場合は解体工事のタイミングを調整して費用を抑えましょう。
解体工事は6~9月、12~1月の閑散期に依頼すると費用が安くなる可能性があります。反対に企業の決算が集中する2~3月は繁忙期です。
また、住宅の解体によって固定資産税に変動がありそうな場合は、解体時期を調整すると節税できるケースがあります。
解体で小規模住宅用地の特例がなくなり土地の固定資産税の増加が予想される場合は年が明けてから、反対に減少しそうな場合は年内に解体工事を完了できるようにすると節税に効果的です。
家の解体工事を依頼するときの注意点

質の高い解体工事を依頼するためには、業者選びをしっかり行うことが大切です。解体工事業者を選定する際は、以下のポイントを押さえて優良業者と契約するようにしましょう。
見積もりの内訳を確認する
見積もりが出たら見積もりの詳細をしっかりと確認しましょう。業者のなかには「作業一式」とだけ記載し、内訳が分かりにくい場合があります。
これでは、料金の中に含まれている作業内容が分からず、追加費用を請求されたときにトラブルになる可能性があります。更地にするための整地工事が雑に行われているなど、品質に問題があるおそれもあるので気をつけなければなりません。
トラブルを防ぐためには、工事内容の内訳を見積書に詳細に記載している業者と契約することが大切です。
契約内容を明確にする
解体工事は契約の内容をしっかりと確認し、疑問点がない状態で契約することが大切です。
たとえば坪数に対する単価はいくらか、工期はどれくらいになりそうか、何が追加費用の対象となるのかなどは事前にしっかり確認しておきましょう。
また、手作業に変更するなど、追加費用がかかる場合はいつ施主に連絡があるのかについても聞いておくと安心です。
トラブルを防ぐには施主と業者がこまめにコミュニケーションをとる必要があります。そのため、コミュニケーションが円滑に進められる業者を選ぶことも重要です。
業者の評判を調べる
優良業者と契約するためには、業者の評判を自分で調べておくことも大切です。インターネットで口コミが掲載されていれば、内容を確認しておきましょう。
さらに、業者のホームページに訪問し、まずは会社概要をチェックします。優良業者であれば会社情報をきちんと掲載しているはずです。
続いて、施工実績を確認し、多くの施工事例があるか、依頼する工事内容に近い実績があるかをチェックしましょう。
そのほか、環境に配慮して廃棄物を処理しているか、騒音対策など周辺住民に迷惑がかからないよう防音対策を実施しているかなども確認しておくと安心です。
まとめ

解体工事の費用は建物の構造や立地条件、廃棄物の量などによって費用が大きく変わります。そのため、現地調査を依頼して詳細な見積もりを出してもらうことが大切です。
満足度の高い解体工事を依頼するためには複数業者から相見積もりをとり、最も納得のいく業者に依頼するようにしましょう。
また、できることは自分で行うようにすると負担額を軽減できるため、業者と相談しながら依頼する範囲を決めることをおすすめします。
コメント