境界フェンスを設置すると、隣家との境界をはっきりさせ、プライバシーの確保にも役立ちます。
しかし、フェンスを設置したことが原因で思わぬトラブルに発展するおそれがあるので注意が必要です。
この記事では、近隣とのトラブルを避けるために気を付けておきたいフェンスの設置ルールの意味やトラブル回避のための注意点を紹介します。
隣家との境界線フェンス設置ルール
境界線フェンスを設置する際にはどのような規定があるのでしょうか。
エクステリアのフェンスは安全確保やトラブル防止のため、さまざまな規定が設けられています。
ここでお伝えするルールをチェックして、規定に基づいた境界線フェンスを設置しましょう。
境界線ルールはフェンスと外壁では異なる
境界線からの距離は、フェンスと外壁ではルールが異なります。建物の外壁は、地域によって一部異なるものの、原則的に境界線から50cm以上離すことが義務付けられています。
一方で、境界フェンスは自分の敷地内に設置する範囲では特に法律上の決まりはなく、自由に設置が可能です。
フェンスの高さについても基本的に制限はありませんが、ブロック塀の上にフェンスを設置する場合は建築基準法で高さ2.2メートル以下にしなければならないと定められているので注意が必要です。
フェンスも境界線は厳格に守る必要がある
フェンスを設置する際は、厳密に境界線を守る必要があり、フェンスの一部が越境していてもいけません。
境界線から少しでもはみ出していると、クレームに発展するおそれがあります。隣人とは長い付き合いがあるからといってギリギリに設置せず、空中でも越境しないように境界線から数センチ内側に立てるようにすると安心です。
ただし後退し過ぎると、隣との間に中途半端な空間ができ、そこに生えた雑草の処理に困ることになります。外構工事業者に相談して、適切な位置にフェンスを設置するようにしましょう。
不安がある場合は境界線の測量を依頼する
境界線が判断できず不安な場合は、土地家屋調査士に測量を依頼しましょう。
測量にはいくつかの種類がありますが、隣地境界線を確定するには「確定測量」を依頼することになります。確定測量では、隣家の立ち合いが必要です。
しかし、隣家に突然専門家が訪ねて立ち合いを求めると、思わぬ誤解を与えかねないため、事前に事情を説明し、隣人の都合も考慮して日程を調節するとトラブルを防げます。
隣家との境界線フェンスのトラブル原因
境界線フェンスの設置では、実際にどのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。
ここでは代表的なトラブルの要因を紹介するので、フェンスを設置する場合は事前にチェックしておきましょう。
境界の認識の相違
隣家との境界線の認識の違いが原因でトラブルになるケースはよくあります。
隣地境界線の認識の相違が起こる原因としては、境界標が損壊・紛失してしまい境界線を特定できないケースや、地積測量図と境界標が示す隣地境界線がずれているケースです。
この場合、どこが境界線なのか分からず、知らないうちに境界を越えて土地を使用してしまい、トラブルになってしまう可能性があります。
フェンスを隣家との境界を越えて設置してしまった場合、基礎工事からやり直さなければなりません。認識の違いから大きな手間となるため十分注意しましょう。
境界標の位置が間違っている
境界標がずれてしまい、間違った位置にあると、揉め事に発展する可能性があります。
境界標の位置がずれる原因は、間違った場所に設置されてしまったケースのほかに、工事や道路の掘削、境界塀の修繕、地震や洪水などの自然災害です。
隣同士で間違った位置で長期間住み続けていた場合、どちらかの家に相続や土地の売却が発生したタイミングで境界線トラブルが起こることがあります。
もし、自宅からはみ出してフェンスやコンクリートブロックを設置していた場合は撤去しなければならず、思わぬ出費につながることもあるでしょう。
隣家の日差しや風通しを妨げている
境界フェンスを立てたことが原因で隣家の日当たりや風通しが悪くなるケースには注意が必要です。
特に隙間が狭いフェンスは隣家の日差しを遮ってしまいます。また、風通しも悪くなるので、外壁にカビや苔が発生するリスクが高まるでしょう。
フェンスは、隙間が狭くなくても横格子のフェンスを設置すれば、縦格子のフェンスよりも高い目隠し効果が期待できます。
横格子フェンスは特に正面からの視線を遮る効果があり、日当たりと風通しを確保しつつ丸見えになることもありません。
隣家の風通しと日照条件を考慮して目的に合ったフェンスを設置しましょう。
圧迫感を与えている
フェンスは高さやデザインによっては圧迫感を与え、相手に「感じ悪い」と思われてしまうことも。隣家からの目線を遮るには高さのある目隠しフェンスを設置するのが効果的ですが、相手側から見ると必ずしも印象が良いわけではありません。
特に背の高いフェンスや隙間がないデザインのフェンス、暗い色のフェンスは壁を設置されたような印象になり、圧迫感を与えかねないので設置には十分注意が必要です。
隣家との境界線フェンスを設置するポイント
では、境界線にフェンスを設置する際にはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
以下でお伝えするポイントをしっかり押さえて、トラブルを避けながら自宅のプライバシーを確保しましょう。
フェンスの高さや設置場所に規定はない
境界線フェンスは、自宅の敷地内に設置するのであればどこに設置しても問題ないでしょう。また、ブロック塀の上に設置するのでなければ高さに制限もありません。
ただし、フェンスの高さは通常、2.2メートル以下にします。これは、建築基準法により、ブロック塀の高さが2.2メートルまでと定められているためです。
ブロック塀は地震による倒壊の危険性があり、高さ制限が定められています。そのため、フェンスも安全のためにブロック塀の規定に合わせた高さにするのが一般的です。
また、擁壁があるなど、隣家と自宅の敷地に高低差がある場合は、相手側の高さを基準にするようにしましょう。
コストを抑えるなら120cmが最適な高さ
フェンスは高さがあるものほど高額になっていきます。コストを抑えつつ境界線を示すなら120cmのフェンスを選ぶと良いでしょう。
フェンスの設置方法は、地面に柱を埋め込む方法のほかにブロック塀を設置してその上にフェンスを設置する方法があります。
ブロック塀とフェンスを足して120cmにすると、コストを抑えながら最適な高さが出せるため、おすすめです。
具体的には80cmのフェンスにブロック3段を組み合わせて120cmにすると見た目のバランスも良くなります。
既存のフェンスに高さを足すときは要注意
今設置しているフェンスの高さを延長したい場合、柱や部材をそのまま利用して上部だけ変更することはできません。
フェンスの高さを延長したい場合、既存のフェンスの後ろに新たに長い柱を設置し、上段だけフェンスを取り付ける方法、既存のフェンスを撤去し新しく高さのあるフェンスを設置し直す方法があります。
そのほか、DIYでフェンスにラティスを括りつける方法がありますが、強風の時には都度撤去しなければならない点がデメリットといえるでしょう。
隣家との境界線フェンスのNG行為
境界線にフェンスを立てる際にはどのようなことを避ければ良いのでしょうか。
良い案に思えても、あとになってトラブルの原因になる可能性もあるので、以下で紹介するNG行為を事前に確認してから、施工するようにしましょう。
費用を折半して境界の中央に設置する
隣家と合意の上、費用を折半して境界線の中央に共有のフェンスを設置することはおすすめできません。
確かに両者の境界線の中央にフェンスを設置すれば、敷地が狭くなることなく、費用の負担額も安く済みます。
しかし、10年20年経つと状況が変わり、引っ越しや相続などで自宅を解体、売却することもあるでしょう。その場合、境界線の位置を巡ってトラブルに発展するケースがあります。
折半にすると、境界線のトラブルだけでなく、改修費用の請求方法や、設置するフェンスの種類や管理方法で揉めたり、承諾を得ないと改修できなかったりするため、避けたほうが良いでしょう。
境界線にフェンスを無許可で取り付ける
隣家に無断で境界線フェンスを設置することは避けましょう。誰しも、ある日突然目の前にフェンスが設置されたら、驚きますよね。
もし、勝手にフェンスの設置工事を始めてしまった場合、相手の心証が悪くなってしまうかもしれません。その結果、境界線に限らず、あらゆることでトラブルが発生してしまう可能性があります。
隣家との関係は切っても切れないものです。事前に同意してもらったうえで外構工事を依頼するようにしましょう。
フェンスの代わりに生け垣を設置する
隣家との境界に生垣を作ってフェンスの代わりにするのも避けましょう。
生垣や植栽は自然なイメージを作り出せるだけでなく、不審者が乗り越えようとしたときにガサガサと音がするので防犯対策に効果的です。
しかし、生垣は植物なので意図せず隣の敷地内に枝を伸ばしてしまう場合があります。また、葉が落ちて敷地を汚すこともあるでしょう。
伸びた枝が越境して相手の敷地内に入っている場合、相手は勝手に枝を除去できず、所有者に枝の剪定を依頼する必要があり、いざこざの原因になってしまう場合があります。
フェンスによる隣家とのトラブルを防ぐ方法
境界線は隣家とのトラブルの原因になりやすいので、お互いの権利を守れるよう納得したうえで設置する必要があります。
ここでは、トラブルを避けるための対応方法を紹介するので、フェンスの設置を検討している場合は忘れずに確認しておきましょう。
境界の確認・調査を行う
境界フェンスでのトラブルを防ぐには、測量や境界を確認するなどして境界線をはっきりさせることが大切です。
境界の確認方法は、測量のほかに法務局で地積測量図を取得する方法と筆界特定制度を利用する方法があります。
地積測量図は、最寄りの法務局で手数料を支払えば取得できる手軽な方法です。筆界特定制度は、隣家が測量の立ち合いに応じてくれない場合や境界線で揉めてしまった場合によく活用される方法です。
状況に応じた確認方法で、境界を明確にしましょう。
隣家に事前に挨拶を済ませる
フェンスを設置またはリフォームする場合は事前に隣家に挨拶を済ませましょう。
工事の際は境界線で業者が作業をして音が発生するなど迷惑をかけてしまいます。もし、他人が自宅の周りで作業しているとしたら、誰でも気になりますよね。
あらかじめ事情を伝えておけばトラブルを大幅に減らせるので、あまり交流がなくても挨拶は欠かさないようにしましょう。
また、工事の挨拶は隣接する家だけでなく近所にもしておくと安心です。
まとめ
境界線にフェンスを設置する際は隣家と揉め事に発展しないよう配慮する必要があります。
境界線については建築基準法や民法で定められた規定を守り、相手の権利を侵害しないようにしましょう。
トラブルに発展してしまい、当事者同士の話し合いでも解決できない場合は、弁護士に相談して交渉を代行してもらうことも可能です。
トラブルを防ぐために無料相談を上手に活用すると失敗を防げます。
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