
国内の空き家は増加傾向にあり、危険な状態のまま放置されている建物も少なくありません。そこで行政は危険な空き家の増加を防ぐために、法律に基づいて「特定空き家」を認定し、対象の所有者に対応を求めています。
特定空き家に認定されるとさまざまなリスクがあるため、早急に対処しなければなりません。今回は、特定空き家は誰がどのように決めるのか、リスクを防ぐ方法などについて解説します。
特定空き家は誰が決める?

特定空き家は誰が、どのように決めるのでしょうか。まずは、特定空き家の認定の権限や通常の空き家との違い、新たに設けられた制度や放置した場合の注意点について紹介します。
判断・認定するのは市区町村
特定空き家を認定するのは市区町村です。各自治体は「空家等対策計画」を策定しており、この計画に基づいて空家の実態を調査し、危険性や衛生面で問題があると認めた場合に特定空き家と認定します。
つまり、所有者が「問題ない」と思っていても、自治体が「危険」と判断すれば、特定空き家に認定され、助言や指導、勧告、命令と進んでいき、是正されなければ過料や行政代執行の対象となります。
「空き家」と「特定空き家」の違い
「空き家」とは、国土交通省の定義によれば、概ね1年以上誰も住んでいない、もしくは使用されていない建物のことを指します。
つまり、5年間誰も住んでいない古い住宅でも、電気・ガス・水道を使用しており、定期的に清掃等の管理をしていたり、年に数日間滞在していたりする住宅は空き家には該当しません。
空き家のなかでも倒壊の危険性や、景観、衛生上の問題が生じるおそれがある住宅で、市町村が指定した建物については「特定空き家」となり、自治体からの指導の対象となります。
参考:空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針|総務省・国土交通省
新たに定義された管理不全空家
管理不全空家とは、2023年の空家法改正に伴い、新たに設定された空き家の区分です。適切な管理がされておらず、このまま放置していると特定空き家に指定される可能性のある空き家を指します。
空家法改正前は、特定空き家に指定される前の住宅は行政指導などができませんでした。法改正により特定空き家になる前に行政が介入して早期改善を促し、改善が見られれば特定空き家への指定は回避できます。
管理不全空家に認定される可能性があるのは、以下のようなケースです。
- 保安上危険:構造部材の破損、腐朽、蟻害が見られる
- 衛生上有害:敷地内にごみが散乱、石綿使用部材の破損等
- 生活環境への影響:開口部の破損、常態的な動物等の棲みつきが認められる
所有者が放置するとどうなる?
所有者が空き家を放置していると、自治体の調査が行われます。保安・衛生・景観上の重大な問題がある物件と判断されると特定空き家に指定し、所有者に通知されます。
まず自治体が行うのは、所有者に対して管理状況の改善や撤去を促すための「助言・指導」です。指導に従わない、または改善されない場合は期限を設けて改善を強く促す「勧告」が行われ、勧告にも従わない場合は「命令」が下されます。
命令に従わない場合や強制的に撤去が必要な場合は、自治体が所有者に代わって建物を解体します。
特定空き家に指定されるかどうかの判断基準

特定空き家はどのような判断基準で指定されるのでしょうか。ここでは、4つの項目に分けて、特定空き家に指定される目安を紹介します。
空き家になっている住宅を所有している場合は、該当していないか確認しましょう。
倒壊などの危険性
そのまま放置していると倒壊するなど著しく保安上危険となる状態の建物は、特定空き家に指定される可能性があります。
著しく保安上危険な状態は、以下に該当した場合に当てはまるケースです。
- 建物が著しく傾斜している
- 建物の構造耐力上主要な部分が損傷している
建物の傾斜は、部材の破損や地盤の一部の沈下が原因で起こります。構造耐力上主要な部分とは、主に基礎と土台、柱・梁です。
基礎の破損・変形のほか、基礎と土台がずれている場合などが該当します。柱・梁・筋交いに大きな亀裂、多数のひび割れ等が発生していたり、腐食・蟻害によって欠損していたりする状態も判断材料の一つです。
衛生面での問題
著しく衛生上有害となるおそれのある状態も、特定空き家と判断される基準です。
住宅が次の状態になっている場合は、指定される可能性が高くなります。
- 建物の破損などが原因でアスベストが飛散し、ばく露する可能性が高い状態
- 浄化槽等の破損による汚物の流出、臭気の発生により、近隣住民の日常生活に影響を及ぼしている
- 排水等の流出により臭気が発生しており、近隣住民に影響を及ぼしている
このほか、ごみの放置、不法投棄が原因で臭気、多数の害虫、鼠等が発生し、近隣住民に迷惑がかかっている場合も、特定空き家に指定される可能性が高くなります。
景観を著しく損ねている
住宅を適切に管理しないことにより、著しく景観が損なっている場合も特定空き家の対象です。
- 屋根や外壁が落書き等で汚されたまま放置されている状態
- 多数の窓ガラスが割れたまま放置されている状態
- 庭木などの植物が建物の全体を覆う程度まで茂っている状態
- 敷地内にごみが散乱または山積みになったまま放置されている状態
以上の場合や、地域で定められた景観保全に関するルールに適合しない状態は、特定空き家と判断される可能性があります。
地域の生活環境を害している
上記のほか、以下に該当し、周辺の生活環境を維持するために空き家を放置することが不適切であると判断した場合は、特定空き家と認定されます。
- 庭木の倒壊・枝折れなどにより道路や隣家の敷地に枝葉が大量に散らばった状態
- 庭木の枝が道路にはみ出し、歩行者の通行を妨げている場合
- 空き家に棲みついた動物の鳴き声や物音が頻繁に発生している
- 動物の糞尿などの放置により臭気が発生している
- 動物の毛・羽毛が大量に飛散している
- 多数の害虫・鼠が発生し、地域住民の生活に支障を及ぼしている
- 不審者が容易に侵入できる状態で放置されている
- 屋根の雪止めの破損などが原因の落雪により、歩行者の通行を妨げている
- 周辺の道路や隣家の敷地に土砂等が大量に流出している
特定空き家の認定までの流れ

特定空き家の認定は、周辺の苦情や行政の巡回などにより問題のある空き家が把握され、主に市町村が主導して認定されます。
指定されるまでにはいくつかの段階があり、改善されないと対応が厳しくなっていきます。
問題空き家として通報される
多くの自治体では、空き家に関する窓口を設けており、地域住民からの情報提供を受け付けています。電話やメールフォームなどから通報があると、職員が現地調査に向かいます。自治体の空き家実態調査によって空き家が見つかるケースも少なくありません。
問題がある住宅は職員が現地調査を行い、状況を記録・写真撮影します。この時点では建物内には入らず、公道から外観を目視で調査するのが一般的です。
調査の結果を国土交通省と自治体独自のガイドラインに基づいて照らし合わせ、空き家が特定空き家に該当するかどうかを検討します。
管理状況の確認を求められる
調査の結果、危険な状態の空き家と判断した場合、自治体はまず所有者に連絡を取り、空き家の状態を伝え、管理状況等について確認を行います。
たとえば、空き家を放置している理由や所有者の意向、今後の計画について尋ね、改善するように促します。
この段階で所有者が空き家について改善の意向を示し、対策することが見込まれる場合、特定空き家の認定には至らず、問題解決へと向かいます。
立入調査を受ける
建物の状況が特定空き家の基準に当てはまっているかを調べるために、自治体は立入調査を実施します。検査では、柱や梁の状態、衛生状況などを確認し、特定空き家の条件に当てはまっているか判断します。
立入調査は原則として所有者に事前連絡をし、同意を得て行いますが、所有者の同意が得られない場合でも調査の実施は可能です。その場合には調査の日時と目的を公示するなどの手続きを行います。
特定空き家に認定される
立入検査の結果、老朽化やごみ・動物などが近隣住民の生活に悪影響を及ぼすおそれがあるとみなされると、特定空き家に認定されます。
特定空き家に認定されると、所有者に通知書が送付され「助言・指導」が開始されます。もし、助言・指導された内容を期限までに実行していない場合には「勧告」に進み、その後、命令、それでも従わない場合は、自治体による行政代執行へと進みます。
特定空き家に認定されると、段階的に厳しい措置に変わっていきます。そのため、空き家を放置しないことは非常に重要です。
特定空き家に認定されるとどうなる?

特定空き家に認定されるとどのようなことが起こるのでしょうか。
ここでは特定空き家に認定された場合に所有者に起こるさまざまな影響を解説するので、認定された場合のリスクを把握し、早めに自治体の窓口に相談しましょう。
固定資産税があがる
特定空き家と管理不全空家の敷地は、住宅用地特例の適用対象から除外され、固定資産税が最大で6倍に増額します。
住宅用地に該当する土地は、以下のように固定資産税が減額されます。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):6分の1に減額
- 一般住宅用地(200㎡を超える部分):3分の1に減額
しかし、特定空き家に認定されると、これらの軽減措置からはずれ、更地と同様の税負担になるのです。
税金の支払い負担の増大はデメリットが大きいため、特定空き家に認定される前に対策が必要です。
自治体に氏名や住所を公表される
特定空き家に認定されたにもかかわらず、自治体からの改善勧告・命令に従わずに放置していると、条例に基づき所有者の氏名、住所などが公表される事例があります。
多くの自治体では「空家条例」が制定されており、勧告・命令に従わないケースや連絡が取れないケースに所有者の情報を公表できるようになっています。
公表されるのは以下のような項目です。
- 所有者の氏名
- 所有者の住所
- 空き家の所在地
- 命令の内容
これにより、空き家が地域住民に迷惑な存在であることが周知され、最悪の場合は行政代執行へと進むので、速やかに対応しなければなりません。
勧告を無視すると過料が発生する
勧告を受け固定資産税の特例が解除されたうえ、市区町村からの命令に正当な理由なく従わない場合は、空き家法に基づき50万円以下の過料が課される可能性があります。
また、自治体の立入調査を拒否したり妨害したりした場合の罰則は、20万円以下の過料です。
「命令」は、行政処分に相当するもので、法的強制力を持ちます。助言・勧告とは異なり、強い法的拘束力を持つので、命令に至る前に対処する必要があります。
強制解体され費用を請求される
命令に従わない場合は、行政代執行により強制的に空き家を解体され、解体費用を請求されることになります。
行政はまず、命令を無視している所有者に代執行令書を交付します。この書類により行政が強制的に空き家を解体することを正式に通告するため、所有者には止めることはできません。
代執行令書に記載された実施日に行政が依頼した業者が建物を解体します。解体にかかった費用の請求先は所有者です。支払いがされない場合は、財産を差し押さえられる可能性があります。
特定空き家に認定されないための対策

では、特定空き家に認定されないためにはどのようにすればよいのでしょうか。
いくつかの対応方法がありますので、専門家の力を借りながら所有者の条件に合った方法で、特定空き家を回避しましょう。
メンテナンスを定期的にする
空き家を定期的に清掃するなど、管理することで特定空き家に認定されるリスクを軽減できます。
特定空き家は地域の景観を損ねたり衛生上近隣に影響を及ぼすと判断されると、認定される可能性があります。そのため、定期的に除草や掃除を行い、きれいな状態を保つことが大切です。
また、建物の老朽化を防ぐために、外壁塗装などのリフォーム工事も欠かさないようにしましょう。
こまめなメンテナンスは、資産価値低下や近隣住民とのトラブルも防げます。問題が起こる前にしっかり管理しておくことがポイントです。
賃貸に回す
空き家の賃貸活用は、家賃収入を得ながら管理の手間や老朽化を防ぐのに有効な手段です。
賃貸に出せば、安定した賃料収入により固定資産税などの管理費用を収益で相殺できたり、人が住むことで建物の劣化を防げたりします。また、建物を残すことで将来的に自分や子どもが住むことも可能です。
一方で、空室リスクやリフォームなどで費用がかかるなどのデメリットも存在するため、空き家の周辺環境やニーズについて不動産業者に相談しておくとよいでしょう。
解体する
今後住む予定がない建物の場合は、解体してから活用するのも一つの方法です。建物を撤去してしまえば建物の管理負担がなくなり、売却のほか、駐車場経営などの選択肢が広がります。
空き家の解体については多くの自治体で補助金制度を設けています。補助金を利用すれば解体工事費用の節約になるので、支給上限や手続きの流れなどについて、自治体の受付窓口に相談しておきましょう。
注意点は、土地から建物がなくなると固定資産税の優遇措置が受けられなくなる点です。税負担については事前にシミュレーションしておきましょう。
寄付・譲渡を検討する
活用できず、売り手が付きにくい空き家は寄付・譲渡する選択肢もあります。
空き家の寄付譲渡の方法は、空き家バンクへ登録、「0円物件サイト」のような無料マッチングサイトへの掲載、または近隣住民への無償譲渡などがあります。
ただし、無償の譲渡でも「みなし譲渡所得税」などの税負担リスクがあるため、あらかじめ専門家への相談が必要です。
なお、自治体への空き家の寄付は利用目的がない場合は受け付けてくれません。受け付けてくれる事例としては小規模な公園、防災倉庫置き場、住民の交流場所などで活用できる場合です。自治体によって対応が異なるので、検討している場合はまず問い合わせてみましょう。
売却する
今後の税負担やメンテナンスのコストを考えるなら、売却が負担を軽減できる最適な方法です。空き家の売却方法には、空き家を解体して更地になった土地を売却する方法と、空き家を残したまま売却する方法があります。
解体して更地にすると、建物付きの物件よりも早く高く売却できる可能性が高まります。一方、空き家を解体せず建物付きで売却する場合は、家の状態に左右されるのが一般的です。
建物がきれいで使える状態であれば、スピーディーに高く売れる可能性があります。反対に建物が老朽化している場合は売りにくくなる傾向があるといえます。
どの方法が良いかは条件で大きく変わるので、空き家買取に対応している不動産業者などに査定を依頼することをおすすめします。
まとめ

空き家を放置しているとさまざまなデメリットがあるだけでなく、周辺住民にも迷惑をかけてしまいます。
とくに相続した実家を家族で共有財産にしていると、手続きが遅れ、特定空き家として行政に厳しく対応される可能性があるので注意が必要です。
空き家が特定空き家に認定される前に、早めに自治体の窓口や空き家管理サービスなどに相談するようにしましょう。

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