
家屋や小屋、倉庫などに広く活用されているプレハブ工法ですが、解体費用はどれくらいかかるのでしょうか。また、自分で解体することは可能なのでしょうか。
今回は、プレハブ解体の費用相場や発生しやすい追加費用、個人で解体する際に注意しておきたい点について解説します。
プレハブの解体を検討している場合はチェックしておき、準備に役立ててください。
プレハブの種類

プレハブは構造や使う資材によって、ユニット系、木質系、鉄骨系、コンクリート系の4種類の工法があり、それぞれ特徴が異なります。
以下にそれぞれの工法の特徴を紹介しているので、解体予定のプレハブがどの工法に該当するのかチェックしてみましょう。
ユニット系
ユニット系プレハブは、鉄骨や木材の柱で箱形のフレームをつくり、そこにコンクリートや不燃パネル、セラミックの板を取り付けて箱形のユニットをつくる工法です。
建築部材の種類により、以下に分類されます。
- 木質ユニット工法
- 鉄骨ユニット工法
システムキッチンなどの水回りや配管等の設備の設置も工場で行い、現場では組み立てるだけで完成します。工期が短いうえ、品質が安定しているのが特徴です。
木質系
木質系プレハブは、柱や梁、壁などの主要な部材を木材や木質パネルで構成している、プレハブの技術としては最も古いものです。
木質系プレハブには、以下の3種類があります。
- 軸組式
- パネル式
- 軸組パネル併用式
軸組式は、木材を柱や梁のサイズと形に工場でプレカットしておき、現場でそのほかの施工を行う工法です。
パネル式は工場で生産した木質系パネルを現場で組み立てる工法で、近年主流になっています。全てを面で接合する一体構造になっており、狂いが起こりにくく、震度3程度までの地震に耐えられますが、その分解体に手間がかかります。
軸組式とパネル式を組み合わせたものが軸組パネル式で、プレカットされた構造材にパネルを張って組み立てる工法です。
鉄骨系
鉄骨系プレハブは構造材に軽量鉄骨を用いた工法で、木質系よりも丈夫に仕上げられるため現在の戸建て住宅用途のプレハブでは最も多く採用されています。
鉄骨系プレハブは組み立て方により、以下の2種類があります。
- 軸組方式
- パネル方式
軸組方式は柱や梁などを軽量形鋼でつくり、壁や床パネルを張り付ける方式です。一方、パネル方式は外壁パネルで構造耐力を持たせる方式です。
鉄骨系プレハブは鋼材を工場で溶接しておき、現場ではボルトで部材を固定するだけなので、工期が短く済みます。また、耐震性に優れている点も大きなメリットです。
コンクリート系
コンクリート系プレハブは、構造材にコンクリートを使用したプレハブで、耐火性に優れている点が特徴です。
コンクリート系プレハブには、以下の3種類が存在します。
- 組積式
- 組立式
- 併用式
組積式は、コンクリートブロックなどを積み上げる工法です。組立式はプレキャストコンクリートと呼ばれる部材を工場で生産し、現場で組み立てます。
併用式は組積式、組立式のプレハブに鉄骨を組み込んで強度を上げたもので、中高層のマンションやアパートなどにも採用されています。
コンクリートが主な素材のため、処分するコンクリートの量によって解体費用が前後しやすい点には注意が必要です。
プレハブの解体費用相場

では、プレハブの解体にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。プレハブは使われている素材により、費用が大きく変わります。
ここでは、プレハブの材質別の費用相場や費用を抑えるためのポイントを紹介します。
プレハブの材質による費用の違い
プレハブ解体の坪単価の目安は以下の通りです。
- 木材系:2~4万円
- 鉄骨系:2.5~4万円
- コンクリート系:3~6万円
プレハブは頑丈で耐久性に優れている素材ほど、解体に手間がかかり解体費用も高くなる傾向があります。
また、狭小地や段差がある土地に建っているなど、立地条件によっては費用が高くなる場合があるので注意が必要です。
ユニット系は使われている材料の種類によって解体費用が変わります。上の素材別の費用を参考にしておき、見積りをとって費用を把握しましょう。
解体費用を抑えるポイント
プレハブの解体費用を抑えるためには、廃材処分費用を減らす、業者が効率よく作業できるように協力し作業日数を短くすることがポイントです。
廃材でリサイクル可能な部材はリサイクル業者に買い取りしてもらうなどすると、廃材の処分費用を削減できます。
また、見積もりの際に業者に図面を見せたり、土地や周辺地域に関する情報を共有したりすることで正確な見積もりにつながり、追加作業の発生を抑えられます。
そのほか、プレハブの譲渡や貸し出しを検討すれば、解体せずにプレハブを活用でき、費用の負担を軽減できるでしょう。
プレハブ解体の追加費用の可能性

解体工事はさまざまな要因で追加費用が発生します。
主な追加費用は以下の通りです。施主の工夫により費用を抑えられるものもあるので、一つずつチェックして可能なものは事前に対応しておきましょう。
残置物の撤去費用
プレハブの中に荷物が残っていると撤去費用が余分にかかり、追加費用が発生するため注意が必要です。
ごみは自分で一般ゴミや粗大ごみとして出せば、無料または自治体が定めた料金で処分できます。しかし、解体業者が処分すると産業廃棄物となり、処分に費用がかかります。
とくに家電4品目と呼ばれるエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機は適切にリサイクルに回さなければならないため、解体業者に処分を依頼すると費用が高くなるおそれがあり注意が必要です。
これらの家電がある場合はできるだけ自分で販売店に連絡し、回収してもらいましょう。それ以外のごみもできるだけ自分で処分しておくと費用を抑えられます。
重機回送費用
現場の状況によっては重機回送費用が余計にかかるケースがあります。
効率よく解体工事を進めるには重機の活用が不可欠です。重機は一般道路を走行できないため、トラックに載せて現場まで運びます。このときにかかる費用を重機回送費用といいます。
通常、解体工事中は重機を現場に置いたままにしますが、重機を置けないような狭小地など、土地の条件によっては都度回送しなければなりません。この場合、重機回送費が余分にかかる可能性があることは留意しておきましょう。
廃材処分費用
見積もりを大幅に上回る廃材が出た場合、追加費用が発生する可能性があります。
解体作業で発生する廃材の処分費用は解体工事費用に含まれていますが、プレハブ内に残置物が多く残されている場合は、処分費用が大きくなる恐れがあるため注意が必要です。
近年、自然災害による廃材の増加や産業廃棄物施設の新設が難航するなど、ごみの処理が追いついていないことなどが原因で、産業廃棄物処分にかかる費用が高騰しつつあります。
このようなことから残置物処理の追加費用が想定以上になるケースも否定できません。見積もりの際に残置物の処分費用がどれくらいになるのか聞いておき、不用品回収業者にも見積もりを依頼して安く済む方法で処分するのがおすすめです。
工期延長による費用
工期が想定を超えて長引いた場合、追加費用が発生する可能性があります。たとえば道が狭くて重機を搬入できず手作業で解体する、周辺住民からのクレームにより対策を講じた、などの場合は工期が長くなる分人件費がかかり、追加費用の対象となりやすいケースです。
また、プレハブにアスベストが含まれていることが判明した場合、アスベスト除去作業が必要となり、工期延長につながります。
いずもれ見積もりの際に情報共有をしっかり行っていれば作業時間が長くなることを想定して見積もりしてくれるので、施主側も図面を用意しておく、周辺について気をつけてほしい点は伝えておくなどしておきましょう。
プレハブの解体手順

ここではプレハブの解体を業者に依頼する際の流れを紹介します。
解体後の土地活用の予定が決まっている場合は全体の流れと手順を把握しておき、早めに依頼するようにしましょう。
現地調査と見積もり
プレハブを解体するにはまず、解体業者に現地調査と見積もりを依頼する必要があります。このとき、3社程度から相見積もりをとった方がよいでしょう。
相見積もりで複数の業者を比較・検討することで、適正な価格で工事を依頼できるほか、ニーズに合った業者を選びやすくなります。
見積もりをする際の現地調査は不要と考える人もいますが、正確な見積もりを出すためには現地調査は必ず実施してもらいましょう。現地調査をせずに見積もりした場合、想定以上の作業が必要になった場合に追加費用を請求される可能性があります。
近隣住民への挨拶
解体工事によるご近所トラブルを防ぐためには、工事開始前までに近隣住民へ挨拶回りをしておくことが大切です。
解体工事では騒音、粉塵、振動が付き物で、解体作業中は近所に迷惑をかけることになります。事前に挨拶をしておけばトラブルを最小限に抑えられ、工事の中断や防音・防塵対策などによる追加費用の発生を避けられるでしょう。
挨拶回りは解体業者が行ってくれますが、できるだけ施主も直接ご挨拶に伺った方がトラブルを避けるのに効果的です。
配線・配管などの撤去
プレハブに電気やガス、水道を引き込んでいた場合は、解体作業が始まるまでに撤去しておきます。自分で勝手にインフラを停止させることはできないので、電気は電力会社、ガスはガス会社、電話回線は回線事業者に連絡して、停止手続きを行います。
水道は解体作業で使うので、解体工事完了後に停止します。解体後の土地に建物を建てる予定がある場合は水道メーターを残しておくのが一般的です。当面建物を建設する予定がない場合は、メーターを撤去します。
プレハブ本体の解体
プレハブの周囲を養生シートで覆ったら本体の解体作業を開始します。プレハブの解体は、住宅などの建物の解体と同様、屋根、壁、床、基礎の順に行うのが基本です。構造や規模に応じて手作業と重機を使い分け、部材を取り外していきます。
プレハブは骨組みに工場で生産されたパネル状の部材を組み立てているので、部材ごとに分解していけば解体が可能です。そのため、戸建て住宅よりも早く解体が完了します。
整地および後片付け
プレハブ本体の解体が完了したら、土地を整地し、廃材を適切に処分します。
プレハブ解体後は、土地に廃材や部材などの破片が残った状態です。これらを取り除き、タイヤローラーなどで地盤を締め固めてきれいに整えることで、土地を活用しやすくなります。
解体工事で発生した産業廃棄物は、ルールに従って適切に処分しなければなりません。地中に埋めたり、決められていない場所に投棄すると、不法投棄として解体業者だけでなく施主も処罰の対象となる可能性があります。
業者選びの際は、ホームページなどで廃棄物をきちんと処理している業者かどうかもチェックしておくことが大切です。
個人でプレハブを解体する注意点

小さなプレハブの場合、自分で解体しようと考える方もいるでしょう。では、プレハブを個人で解体しようとするときはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
以下に注意点を挙げているので、自分で解体できるかの判断材料にしてください。
リスクを理解する
自分でプレハブを解体する場合はリスクを理解し、少しでも難しいと感じたら業者に依頼するようにしましょう。
DIYで解体する場合、解体作業中のトラブルや事故はすべて自己責任になります。たとえば解体作業中に隣家の設備を損傷させたり外壁に傷をつけてしまった場合、損害賠償責任を負うことになります。
また、資材を運び出すためにトラックを道路に停めたことで交通を遮断してしまい、クレームを受けるケースもあるでしょう。
トラブルに発展すると工事費用を節約するつもりが、対応のためにかえって費用がかかってしまうことがあります。解体業者に依頼していれば、このようなトラブルが起こった場合でも、業者が対応してくれるため負担が少なく済みます。
下調べを徹底する
自分でプレハブを解体する場合は、作業を開始する前に下調べが必要です。
とくに確認しておきたいのが、以下についてです。
- 解体に必要な道具と廃材の搬出方法
- アスベストの有無
小さなプレハブであれば一般的な工具でも解体が可能ですが、ある程度の規模のプレハブの解体は重機が必要なので、レンタル先や費用について事前に調べておきましょう。
また、廃材を搬出する際にトラックが必要な場合もあります。その場合はトラックの手配もしておきます。
解体の前には建物にアスベストが含まれていないか確認しなければなりません。アスベストの調査は専門家に依頼する必要があり、もしアスベストが含まれている場合は、業者に解体を依頼することになります。
手続き・届け出の確認
プレハブを自分で解体しようと考えている方のなかにはプレハブを取り壊して撤去すれば完了と捉えている方も少なくありません。しかし実際には解体作業の前後に手続きや申請を行わなければならない場合があります。
建物の解体工事を行う場合、床面積80㎡以上の場合は建設リサイクル法の届出をしなければなりません。プレハブの図面などを見て床面積を確認し、80㎡以上の場合は役所に届け出てください。
さらにプレハブが登記されている場合は、解体が完了したら1か月以内に建物滅失登記を行う必要があります。
廃棄物の処分
プレハブの解体工事で忘れてはいけないのが廃棄物の処分です。解体工事では大量の廃棄物が発生します。破棄物は種類ごとに分別し、行政が指定する処分場に運ばなければなりません。
発生する廃棄物はプレハブの工法によって異なるので、事前にどのような種類の廃棄物が発生しそうか予測し、処分方法を自治体に確認しておきましょう。再生可能な資材は買取業者に買い取ってもらえることもあるので、調べておくと廃棄費用を抑えられる可能性があります。
プレハブの解体に関するよくある質問

ここではプレハブの解体に関してよくある質問とその回答を紹介します。
プレハブの解体を検討している場合は内容をチェックし、疑問を解消してから解体を依頼するようにしましょう。
プレハブ解体で使える補助金はある?
プレハブ解体に特化した補助金はありませんが、家屋の解体工事の補助金をプレハブ解体で利用することもできます。
たとえば、老朽危険家屋解体撤去補助金は、老朽化により倒壊の危険性が高い家屋の解体を支援する制度です。金額は自治体によって大きく異なりますが、一般的に100万円が上限です。
旧耐震建物であることや個人所有の空き家であることなど、条件が設けられており、条件も自治体によって異なるため、事前に自治体の窓口に確認しておくことをおすすめします。
プレハブ解体して移設する費用の目安は?
プレハブを解体して別の場所に移動させたい場合の費用目安は15~30万円程度です。
ただし、プレハブのサイズや移動距離、地域によって費用に幅があるので、見積もりを依頼して正確な費用を把握するようにしましょう。
プレハブが小さい場合は、解体せずに移設できるケースもあります。こちらも大きさや設置場所、業者によって対応が異なるため、現地調査と見積もりを依頼したうえで移設方法を検討しましょう。
まとめ

プレハブの解体費用は、プレハブの構造や設置場所、サイズなどによって変わります。小さいものなら個人でも解体できる場合もありますが、できるだけ解体業者に任せた方が安心です。
実績のある業者ならスピーディーに解体、撤去してもらえるので、自分でやるよりも総合的なコストを抑えられるケースも少なくありません。
リフォームなどでプレハブの解体を検討している場合は、まずは解体業者に現地調査と見積もりを依頼してみることをおすすめします。
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