ガス管撤去の全手順|解体工事での流れと注意点を解説

ガス管撤去の全手順|解体工事での流れと注意点を解説

解体工事をする際は、電気やガス、水道などのライフラインを必要に応じて停止しなければなりません。

とくにガスは解体作業で誤って配管を損傷させてしまい、大事故につながった事例もあるため、工事前までにガスメーターや配管の撤去を行う必要があります。

この記事では、解体工事のガス管撤去の必要性や手順について解説します。

目次

解体工事のガス管の撤去が重要な理由

建物の解体工事の準備作業として、ガス管を撤去しなければならない理由は大きく以下の3つです。手順を無視して解体作業を始めてしまうと、大きなトラブルの原因となるので、しっかりとポイントを押さえておきましょう。

安全性の確保

解体工事でガス管を優先的に撤去するべき最大の理由は、安全性確保のためです。解体作業中にガス管やプロパンガスのボンベが破損すると、ガス漏れの危険性があります。ガス漏れが発生すると、少しの火花や摩擦熱などにより爆発事故につながりかねません。

解体工事は、電動工具や重機の使用が欠かせず、火花が発生しやすい状況です。そのため、火災や爆発のリスクを防ぐためにガス管の撤去が重要となります。

法律上の義務

ガス管の撤去に関しては法令に基づき、安全に作業しなければなりません。ガス事業法では、ガス事業者の承諾を得ずにガス工作物を移設したり、破損させると罰則の対象となる、と規定しています。そのため、工事を行う場合は事前にガス事業者に連絡をしなければなりません。

また、ガス設備の撤去には簡易内管施工士、液化石油ガス整備士などの資格が必要です。DIYでの撤去はできないので、業者に依頼してください。

近隣住民への配慮

解体工事では、作業員の安全とともに、近隣住民の安全にも配慮しなければなりません。ガス管を撤去しないまま解体工事を行い、近隣に危険が及ぶ事態を避けるために、安全を確保し、責任を持って撤去する必要があります。

作業現場の近くには注意喚起の看板や警告灯を設置し、近隣住民や通行人に対して危険箇所を知らせるとともに、作業エリアに入れないようにフェンスやバリケードを設置します。

ガスの種類

家庭に供給されるガスの種類は、大きく都市ガスとプロパンガスの2つがあり、さらにプロパンガスは個別プロパンと集中プロパンの2つに分かれます。ここでは、それぞれの特徴について解説します。

都市ガス

都市ガスは、製造所でつくられたガスを、ガス管を通じて各家庭に供給するタイプです。メタンを主成分とする天然ガスや、海外から輸入する液化天然ガスが主成分で、空気よりも軽いのが特徴です。

日本国内で供給されている都市ガスは、成分により7グループ13種類に分けられており、燃焼速度などに違いがあります。

プロパンガスに比べてボンベの設置スペースが必要なく、ガス切れの心配もありません。料金もプロパンに比べて安い傾向があります。一方で供給はガス管が敷設されているエリア内に限られ、ガス管の通っていない地域や住宅では利用できません。

プロパンガス(個別プロパン)

プロパンガス(LPガス)は、各住戸や建物にボンベを設置して使用するガスです。主成分はプロパンとブタンで、-42度に冷やすと液体になり体積が250分の1になる性質を活かして、液体のままボンベに入れて各住戸に運ばれます。また、空気よりも重いのが特徴です。

個別プロパンとは、ガスボンベを各家庭に設置してガスを供給する仕組みです。供給エリアが広く、ガス管が敷設されていない地域でも使用できます。

発熱量が高く、都市ガスと同じ火力でも使用するガスは少なく済みます。各家庭にボンベが設置されるため、災害時の復旧が早いのも特徴です。

一方で、運搬費などの供給コストが費用に上乗せされるため、都市ガスよりも料金が高い点には注意が必要です。

プロパンガス(集中プロパン)

集中プロパンとは、マンションなどの集合住宅やまとまった一戸建て、工場や事業所などを中心に供給する方式です。各住戸へはガス管を通じて供給されます。

集中プロパンには「集中供給方式」と「バルク供給方式」の2種類があり、集中供給方式は容器収納庫の中にガスボンベを複数個設置し、そこからガス管を通して供給する方式です。バルク供給方式は、バルク貯槽と呼ばれるタンクを設置し、そこから各住戸へガスを供給します。

集中プロパンのメリットは、一括で管理しているため安全性が高いこと、供給が個別プロパンに比べて安定していること、費用が抑えられることです。

ガス管撤去の手順

ここではガス管撤去の流れを紹介します。作業自体は業者が安全を確保しながら確実に実施しますが、施主としても対応の流れを知っておき、業者と協力しながら解約、撤去を進めていきましょう。

供給停止の連絡を入れる

まずはガス事業者に電話で供給停止の連絡を入れておきます。都市ガス、プロパンガス共に、ガス料金の請求書などに記載されている連絡先に問い合わせます。

連絡の際には希望日時とともに「解体工事をするために撤去したい」旨を伝えましょう。単に供給停止を希望していると思われると、停止のみになってしまい、必要な作業をしてもらえないおそれがあります。

また、ガスの停止は解体工事開始前までに行わなければなりません。スケジュールをしっかり確認し、解体工事前までに供給停止、撤去まで完了しておくことが大切です。

ガスメーターやガスボンベの取り外し

都市ガスの場合はガスメーターの閉栓と撤去を行います。プロパンガスの場合はメーターとガスボンベの撤去です。

ガスメーターの取り外しは、解体作業に支障が出る場合や、解体工事後にガスを長期間使用する予定がない場合に行います。

解体工事が建物の一部のみの場合や、小規模な解体工事の場合はガスメーターの撤去は必要ないこともあるので、解体業者と相談し、ガスメーターの撤去が必要かどうか確認しておきましょう。

ガス管の撤去

ガスの供給が確実に停止されていることを確認し、ガス管の撤去作業を行います。都市ガスの場合、ガス管の地境切断を行います。

地境切断は、ガス事業者が敷地と道路の境界部分でガス管を切り離し、ガスを遮断する工事です。地境切断を行った場所にはガス管表示杭が設置されるので、解体業者は表示杭を目印にガス管を傷つけないように作業します。

その後、建物の解体工事が行われますが、工事中に不明なガス管が出てきた場合は、速やかにガス事業者に連絡して、現地調査をしてもらいます。

安全確認

ガス管の撤去作業が完了したら、ガス事業者と解体業者が連携して、撤去作業が確実に終わっていることを確認・点検します。

解体工事業者は作業を開始する前に、ガス管が完全に地境切断されているか確認します。表示杭がなくガスの立管が残っている、敷地内にガス管がはみ出している場合はガス事業者に撤去の依頼をしなければなりません。

安全のために工事開始前に図面でガス管の位置を確認し、不明な点はガス事業者に確認しながら作業を進めます。

ガス管撤去の際の注意点

ガス管撤去の際は、安全に十分配慮しなければなりません。ここではガス管撤去作業でとくに気をつけておきたいことを紹介するので、安全に工事を完了させるために確認しておきましょう。

ガス管の位置を確認

解体工事ではガス管の位置を確認することが大切です。解体工事でガス管を傷つけることを避けるために、事前に撤去しておくのが基本ですが、昔のガス管が地中に残っている場合もあります。図面を確認し、不明な配管が出てきたら、速やかにガス事業者に連絡しなければなりません。

建物によっては都市ガスとプロパンガスを併用している場合、ガスメーターがなくても建物内にガスが通っている場合があるので、ガス管を撤去作業が完了したからと安易にとらえず、現場の状態を確認しながら作業を行います。

ガス供給停止と切断工事

解体工事業者が解体作業に入る前までに、ガス事業者がガスの停止と地境切断工事を行います。ただし、ガスの供給を停止しても、ガス管内に残留ガスが残っているケースがあります。そのままの状態で作業をすると、ガス漏れや爆発のリスクがあり危険です。

そのようなことがないように、ガス管内に不活性ガスを置換するパージ作業を行います。その後、ガス漏れ検知器などで確認して完了です。

匂いがしないからガスはない、とは限りません。事故を防ぐために供給停止から切断工事までをガス会社が確実に行います。

埋設管の確認

さらに、解体作業前に確認しなければならないのが、地中埋設管の確認です。作業が始まってから地中に配管があることが発覚すると、追加費用や工期の延長になる可能性があります。工事をスムーズに進めるためにも、施主は事前に業者に図面を見せておきましょう。

土地にガス管が残っているのを知らないまま作業し、配管を損傷させてしまうと大変危険です。万が一、作業中に地中からガス管が見つかった場合は、解体工事業者がガス事業者に連絡し、配管の確認を行います。

ガス管撤去にかかる費用と期間

では、ガス管撤去にはどれくらいの費用と時間がかかるのでしょうか。ここでは、ガス管撤去工事の費用と期間の目安を紹介するので、解体工事を予定している場合は参考にしてください。

費用の目安

都市ガスのガス管撤去費用は、約3~5万円が目安です。プロパンガスの撤去費用は、ガス会社によって料金に幅はありますが、都市ガスよりもやや高くなると考えておくとよいでしょう。

ガス管撤去の費用は一般的に施主の負担になります。心配な場合は事前にガス事業者の受付窓口に費用の目安を確認しておくとよいでしょう。また、支払いタイミングなどについてもガス事業者に確認してください。

期間の目安

ガス管撤去の期間は、一般的に1~2週間程度と考えておきましょう。

建物解体や増改築等に伴うガス管撤去の依頼は、工事を希望する日の2週間前までにガス事業者に連絡してください。

また、ガス管とガスメーターの撤去工事には立ち合いが必要です。事前にスケジュールを確認してから連絡するようにしましょう。

プロパンガスの撤去作業も、都市ガスほどの大がかりな作業にはなりにくいですが、早めに連絡をしておくことでスムーズな解体工事につながります。

契約書で確認すべき項目

ガスを停止する場合やガス管を撤去する場合には、契約書の「解約」に関する項目にしっかり目を通しておきましょう。都市ガスの場合は撤去費用以外に大きな費用を請求されることは少ないですが、プロパンガスは特約が含まれているケースがあるため注意が必要です。

プロパンガスでは「設備費の貸付契約」などの特約が契約に含まれている場合、解約するときに違約金や撤去費用が発生する場合があります。プロパンガスの事業者は小規模事業者も多く、契約内容は業者によりまちまちです。

想定外の費用を請求されて慌てないよう、解約前には契約書の解約、撤去費用、違約金などの項目をよく確認しておきましょう。

ガス管撤去に関するよくある質問

ガス管撤去は、ガス事業者への連絡や地境切断工事など、施主としてもわからないことが多いのではないでしょうか。ここでは、ガス管撤去工事に関してよくある質問とその解答を解説します。

ガス管の撤去には資格が必要ですか?

ガス工事には工事内容に応じた資格が必要ですが、都市ガスのガス管の撤去には「簡易内管施工士」という資格が必要です。簡易内管施工士は、都市ガスの内管工事を行うために必要な資格で、配管の新設・増設・撤去、ガスメーターの取付・取り外しを行えます。

注意点は、資格を保有していても、施工する地区にガスを供給している一般ガス導管事業者と契約していないと作業できない点です。資格の有効期間は3年間、3年ごとに更新する必要があります。

プロパンガスの取付・取り外しなどの接続工事には「液化石油ガス設備士」の資格が必要です。特にプロパンガスはボンベを自分で外せそうだと考える人もいますが、必ず事業者が派遣した有資格者に工事してもらいましょう。

オール電化にするならガス管撤去は必要ですか?

住宅をオール電化にリフォームして、ガス機器を一切使わない場合、ガスの停止手続きを行いますが、配管撤去までは必要ありません。

万が一オール電化の生活に不便を感じた場合、配管を撤去してしまうともとに戻せません。ただし、ガス事業者に連絡してガス契約の停止手続きとメーター撤去作業は必要です。

オール電化の工事が決まったら早めにガス事業者のサービス窓口に連絡して、ガス使用中止の手配をしましょう。

まとめ

解体工事をする際は、ガスをはじめとしたライフラインの停止手続きが重要です。工事開始日までにガス管撤去できていなかった、ということのないように、解体業者の営業担当者と協力して手続きを進めましょう。

解体工事業者を選ぶ際には見積りの際に、ライフラインの停止手続きについて気軽に相談できるか、サポートしてもらえそうかどうかもチェックしておくことをおすすめします。

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