
古いフェンスは倒壊のおそれがあるため十分注意しなければなりません。フェンスが倒れて近くにいた人が大けがを負う事故は実際に発生しており、その場合、工作物責任は所有者に課せられます。
安全性を維持するためにも、フェンスに老朽化の症状や異常を見つけたら解体、リフォームした方がよいでしょう。
この記事では、フェンスを解体した方がよい場合、解体の手順や注意点について解説します。
解体した方がいいフェンスとは?

どのような場合に、フェンスを解体する必要があるのでしょうか。
ここではフェンスの解体の目安となる症状や条件を紹介しているので、自宅のフェンスが該当していないかチェックしてみましょう。
明らかに老朽化している
フェンスの表面にひびや錆びがある、変色している場合は劣化している証拠です。目に見える不具合は一部でも、劣化は全体に広がっている可能性があるため、解体した方がよいといえるでしょう。
特に割れやネットフェンスの破断は、ケガの原因になるので、早めに解体した方が安全です。
そのほか、苔が全体に広がっている、フェンスを固定するビスが紛失している場合も著しく劣化している可能性があるため、解体を判断した方がよいといえます。
不安定で傾いている
傾いたフェンスは倒壊して隣家の設備を破損してしまったり、通行人にけがを負わせてしまったりするリスクがあります。
それだけでなく、目隠し効果や不審者の侵入対策の役割を十分に果たせていません。
定期的にフェンスを横から見て傾いていないか、触ってみてグラグラしていないかチェックし、不具合がある場合は早めに撤去して安全を確保する必要があります。
設置から年数が経過している
とくに目立った劣化症状は確認できなくても、寿命が過ぎたフェンスは交換することをおすすめします。
フェンスの寿命は素材により異なりますが、10年程度が一般的です。アルミフェンスのように耐久性の高い素材は大きな劣化が見られなければ半永久的に使えるといわれていますが、10年を過ぎたらこまめに点検するか、汚れが目立っている場合は思い切って交換した方がよいでしょう。
フェンスの寿命は国税庁が定めた法定耐用年数も参考になります。法定耐用年数を過ぎているフェンスは、劣化のリスクが高まっていると考え、解体して新しい物にリフォームするのがおすすめです。
フェンスの種類と特徴

フェンスはさまざまな素材でつくられており、材料によって劣化のスピードが異なります。
ここでは、外構フェンスに使われるフェンスの種類別の特徴を紹介するので、デザイン性だけでなく、劣化症状にも注目して選んでみてください。
アルミフェンス
アルミフェンスはスタイリッシュでデザイン、カラーも豊富なため、現代の住宅の外構に最も採用されています。錆に強く、耐久性が高い点が大きなメリットです。
ただ、強風によって倒壊するおそれがあるので、特に面が広いタイプのフェンスは十分注意が必要です。
また、表面が白化してきた場合は腐食の初期症状が現れているので、塗り直しを行うか、解体して新しいものに建て替えましょう。
スチールフェンス
スチールフェンスは主にメッシュフェンスという針金の網のような形状をしているタイプが一般的です。
針金の表面に樹脂で塗膜処理が施されているので錆びにくく、メッシュ状の形状が風の抵抗を受けにくく耐風圧強度がほかのフェンスに比べて高い、というメリットがあります。
デザイン性と目隠し効果があまりないものの価格が安いため、境界フェンスとしてよく採用されています。
丈夫なスチールフェンスですが、金具が緩んだり、根元から傾いたりするケースがあるので、定期的に不具合がないかチェックしましょう。
樹脂フェンス
樹脂フェンスは木製フェンスのようなナチュラルな雰囲気を演出でき、木製フェンスよりも耐久性が高い点が特徴です。
カラーが豊富なので、イメージ通りのエクステリアを作りやすいほか、メンテナンスやお手入れが必要なく、手間なくおしゃれな外構を作れます。
一方で樹脂は紫外線で劣化しやすいので、経年により劣化して割れることがあります。定期的に褪色していないか、割れている部分はないかチェックし、不具合を見つけたらリフォームしましょう。
木製フェンス
木製フェンスは価格が安く、エクステリアにナチュラルな印象を与えてくれます。しかし一方で、耐用年数が短く、塗り直しや防腐剤を使用していても、早ければ1~2年で劣化症状が現れます。
また、強風への耐久性が低く、悪天候のときに隣家や道路に倒れるリスクがあるため、設置場所には十分注意が必要です。
フェンスが著しく褪色してきた、腐食している部分がある場合は解体して設置し直した方がよいでしょう。
鋳物フェンス
鋳物フェンスはアイアンフェンスとも呼ばれる鉄製のフェンスです。
ねじったりひねったりするデザインができるので、蔓をイメージした複雑なデザインが可能です。そのため、重厚感があり、住宅全体に高級感をプラスしてくれます。
鋳物フェンスの耐用年数は長く、普通に使っていれば10年以上長持ちすることもありますが、アルミフェンスに比べて錆びやすい点には注意が必要です。
特に海の近くで塩害を受けると、早い時期から錆による腐食が起こってしまう場合があります。
劣化して倒れるとアルミよりも重量があるため危険です。定期的に傾きやグラグラしている部分がないか、錆びがないかチェックすることが大切です。
フェンスの解体は自分でできる?

費用を抑えるためにフェンスを自分で解体したいという方もいるでしょう。解体は道具があれば自分でできないことはありません。
しかし以下の理由から、工事費用を支払っても業者に依頼した方がさまざまな面でメリットがあるといえます。
フェンス解体は専門業者に依頼すべき理由
フェンスの解体は専門的な道具や知識が必要なため、解体工事の専門業者に依頼することをおすすめします。
フェンスは独立基礎の場合、地中に深さ30~50cmの穴を掘り、基礎を設置して支柱を建てます。支柱はモルタルで固定されているので、簡単に抜けるものではありません。
これらを解体するには、業務用の道具が必要ですし、たとえレンタルできたとしても使い慣れていない人が使うと危険です。
フェンスの基礎のみを掘り起こすつもりが家屋や駐車場、カーポートなどの他の部分や、隣接する隣家の設備を傷つけてしまうかもしれません。
このようなことを避けるためにも、業者に依頼した方がよいでしょう。
フェンス解体の費用相場
フェンス解体工事の費用相場は5~25万円と幅が広いのが現実です。
費用に差が出るのは、フェンスの種類や基礎の施工方法、現場の状況にコストが大きく左右されるためです。そのため、施工エリアを担当している解体業者に現地調査と見積もりをしてもらい、正確な金額を割り出す必要があります。
見積もりはできるだけ3社程度から相見積もりを取ることをおすすめします。
相見積もりを取ると費用相場の把握や営業担当者の対応を比較しやすく、満足のいく工事を依頼しやすくなるはずです。
フェンス解体の流れ

ここではフェンスを解体する流れを紹介します。解体工事は基本的には解体業者に任せていれば現場の整地までしっかり行ってもらえます。
しかし、施主が一連の流れを知っておけば、不具合にすぐに気づけるだけでなく、近隣住民からの苦情に対応しやすくなるので、大まかにでも把握しておくとよいでしょう。
基礎コンクリートを掘り起こす
まず、地中に埋まっているフェンスの基礎部分を掘り起こします。独立基礎で柱を直接支えている場合は基礎部分を、ブロック塀の上にフェンスを設置している場合はブロックの基礎を掘り起こし、フェンスの支柱が抜けるようにします。
基礎を取り壊す作業は重機やハンマーを使用するため、一連の工程のなかでも特に大きな音と振動が発生する作業です。
基礎の大きさや深さ、土地の条件によっては、手作業で掘削します。
本体の解体
次に本体を解体します。支柱を基礎から引き抜き、フェンスと支柱を解体します。
解体方法はフェンスの種類によって異なり、工具も種類に合わせて使い分けますが、ボルトやビスなどを外すのが一般的です。
金属フェンスはボルトやナットを取り外し、つなげられたパネルや支柱を分解していきます。フェンスが大きい場合は切断機で切断する場合もあります。
木製フェンスはビスや釘を取り除き、分解する作業が中心です。こちらも大きい場合はのこぎりなどで切断します。
基礎部分の補修
フェンスを解体したあとは、基礎を取り除いた部分を補修します。
地面が平坦になっていないと、水たまりができたり穴の部分に足を取られて怪我をしたりするおそれがあり、危険です。このようなことが起こらないように、掘り起こした部分と他の部分に段差がないようにしておかなければなりません。
また、解体工事業者はその後の土地の利用方法に応じた整地を行います。たとえば、フェンスがあった場所を生垣に変えたい場合、植栽を植えるのに適した地面に整えます。
解体後の廃材処分
解体後に出た廃材は法律や条例に基づき、適切に処分します。フェンスは金属や木材の部分と基礎のコンクリートの部分があり、それぞれを正しく分別しなければなりません。
解体工事で出る産業廃棄物は業者が責任を持って廃棄するべきものですが、施主も業者が適切に廃棄しているか、マニフェストを確認しておく必要があります。
マニフェストとは産業廃棄物管理票とも呼び、解体業者名と廃棄物の種類、数量、運搬業者名、処分業者名が記載されたもので、廃棄物が適正に処理されていることを確認するものです。
施主はマニフェストのE票を確認し、気になる点は業者に問い合わせましょう。なお、業者が最終処分まで行っている場合は、マニフェストは発行されません。
フェンス解体はトラブルに注意が必要

解体工事を行う際はトラブルに気を付ける必要があります。
ここではトラブルを未然に防ぐために注意しておきたい点を解説しているので、フェンスの解体を計画している場合は事前にチェックしておきましょう。
ライフラインの確認
解体工事の計画の際には、解体予定場所の地中周辺に電気配線やガス、水道管などの配管が通っていないか確認しましょう。
誤って配管を傷つけてしまうと、事故やトラブルの原因となります。担当する解体業者にはあらかじめ家の図面を見せておきましょう。
しかし、フェンスやブロック塀が古い場合、図面が残っていない場合もあります。その場合は事前にしっかり確認しなければなりません。
施主が知っている情報を共有することも大切なので、土地に関する情報は工事前に解体業者に説明しておくとトラブルを避けられるでしょう。
フェンスの所有権を確認
隣家との境界にあるフェンスやブロックを解体する場合、事前に所有権を確認する必要があります。
なぜなら、フェンスの解体では境界線の認識が間違っていたために、共有フェンスまたは隣家のフェンスを勝手に解体してしまった、というトラブルが発生しやすいためです。
境界線は土地に設置された境界杭で確認できますが、まれに境界杭がずれている場合があります。そのため、境界杭だけでなく、法務局で登記書類を確認し、正しい境界線を把握したうえで施工することが大切です。
建築基準法や自治体ルールの確認
フェンスの設置や撤去には、建築基準法や各自治体のルールが関係する場合があります。
地域によっては防火地域に指定されていたり景観条例が定められていたりして、フェンス撤去後の再建設に制約が課されるケースもあります。
事前に自治体の建築担当窓口で必要な手続きを確認し、計画中の作業や新設するフェンスの仕様が法令に抵触しないようにしましょう。
もし撤去や再設置に許可申請が必要な場合は、忘れずに申請手続きを行います。無許可で作業を進めると、後から是正を求められるなどトラブルにつながるので注意が必要です。
フェンス撤去の業者選び
フェンスの解体業者は、実績が豊富で信頼できる業者を選ぶことがポイントです。
業者選びの際は、以下をチェックしましょう。
- 資格・許可
- 保険加入状況
- 施工実績
解体工事業者は、1件が500万円以上の工事を請け負う場合、建設業許可を取得していなければなりません。
また、2019年6月以降に建設業許可の取得・更新をした場合、解体・土木・建築の許可を得ていない業者は事業者登録が必要です。
資格に加えて業者がどのような保険に加入しているか確認しましょう。具体的には賠償責任保険や労災保険に加入しているかを見ておきます。
施工実績は、業者のホームページに掲載されています。多くの施工実績がある、経験豊富な業者が安心です。
フェンス解体に関するよくある質問

ここでは、フェンス解体に関してよくある質問とその回答を紹介します。
フェンスの解体、リフォームを計画している場合は、事前にチェックしておき、できるだけお得にフェンスを解体できるようにしましょう。
古いブロック塀を撤去するとき、助成金や補助金はあるの?
多くの自治体では、ブロック塀の解体に助成金、補助金を用意しています。補助金の金額や要件、対象者は自治体によって異なるため、利用を検討している場合は自治体のホームページを確認しましょう。
補助金の相場は、ブロック塀解体費用の4分の1~2分の1、上限5~10万円です。補助金には期間を設けられていることが多いため、期間についても事前に確認しておきましょう。分からないことは市町村の窓口で聞いておくと安心です。
DIYでフェンス解体をする場合には、どんな道具が必要?
DIYでフェンスを解体する場合に必要な道具は、基礎を解体するか再利用するかで変わりますが、以下があります。
- ハンマー
- スパナ
- バール
- 手袋
そのほか、フェンスの解体後の地面を整地するために、モルタル、土、砂利などを用意しなければなりません。
DIYでのフェンス解体では、道具と材料を揃えるだけでも一苦労です。また、作業中はフェンスが倒れないよう十分配慮しながら作業を進めなければなりません。
解体後には市町村のルールに従って正しくゴミを廃棄する必要もあります。自分で解体すると時間がかかり、騒音が出る時間も長くなって近隣へ迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
安全でスピーディーに解体するには、プロの解体業者に依頼した方が安心です。
まとめ

古いフェンスは倒壊のおそれがあります。フェンスの倒壊により第三者に大きな損害を与えてしまった事故が実際に発生しているので、定期的に点検し、不具合を見つけたら速やかに解体、建て替えを行うことが大切です。
また、一定の年月が過ぎたら目立った劣化症状は見られなくてもリフォームすることをおすすめします。
解体の際は業者の資格や実績をチェックし、施工が丁寧で信頼性の高い業者に依頼することが成功のポイントです。
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