
解体作業が原因で隣家の建物や外構設備を傷つけてしまった場合、補修が必要です。では、その費用は誰が負担するのでしょうか。
今回は、解体工事で隣家に被害を与える原因や、責任の所在と費用負担、トラブルが発生した場合の対応の流れなどについて解説します。
解体工事の隣家補修費用は誰が負担する?

解体工事により隣家の建物や外構を傷つけてしまった場合は、補修をしなければなりません。ではその費用は誰が負担するのでしょうか。
ここでは、施主が負担するケースと解体業者が負担するケースを整理しているので、万が一の場合に備えて責任の範囲を理解しておきましょう。
施主側が負担するケース
解体工事により隣家に損害を与えた場合、民法第716条により、原則として依頼者には損害賠償責任はありません。
ただし、施主がリスクを知りながら事故につながる可能性がある事柄を業者に伝えなかった場合、事故につながるような指示をした場合には、責任を問われる可能性があります。
たとえば、施主が解体作業による隣家の損壊を発見した、あるいは被害が拡大することが想定できたにもかかわらず、業者に伝えずに工事を停止できなかった場合は過失とみなされるおそれがあります。
また、がれき飛散防止のための養生シートの設置を施主が強く拒否し、結果隣家の外壁を傷つけてしまった場合も施主が責任を問われる可能性が高まります。
解体業者側が負担するケース
解体工事業者の不注意で隣家が損傷してしまった場合は、民法第709条に基づき、業者が損害賠償責任を負います。
たとえば瓦やがれきが飛んで隣家の屋根や車、カーポートを傷つけた、工事車両が隣家の塀を擦った、工事による振動で壁にひびが入った、などの場合は、業者が費用を負担し補修工事を行います。
ほとんどの業者が損害賠償保険に加入しており、このような損害の発生時には保険金で補償するのが一般的です。
補修費用を巡って問題になりやすいケース
解体工事で隣家に補修を求められた場合、必ずしもスムーズに解決するとは限りません。お互いの主張が食い違い、トラブルになるケースもあります。
特に多いのが、既存の傷か工事による傷かの判定トラブルです。解体前からあったひび割れを工事後に「解体工事の振動でひびが入った」と主張され、揉めることがあります。このようなトラブルは、事前に家屋調査をしていない場合に発生する傾向があります。
また、事前に挨拶が十分でなかったために、工事中に迷惑をかけたことに対して隣人が高額な補修請求や工事停止を迫るなど、厳しい態度を取るケースも珍しくありません。
多くのトラブルは事前準備で回避できます。工事前から近隣への配慮を欠かさない優良業者に依頼するようにしましょう。
解体工事で隣家補修が必要になるのはどんな状況?

解体工事で隣家の補修が必要になるケースは、振動や重機の操作ミス、解体範囲の誤認、長屋解体の後処理などさまざまです。
以下に主に補修が必要になる事例を挙げているので、トラブルを避けるためにも、事前に把握しておきましょう。
解体工事の振動で隣家の外壁にひび割れが入る
重機作業の振動や落下物の衝撃が地盤を伝わって、隣家の外壁や内壁にひびが入ることがあります。この場合は、解体工事が原因のひび割れであることが証明されれば、解体工事業者の補修工事が必要です。
油圧ブレーカーを使用して基礎のコンクリートを破砕する際は、毎分数百回の衝撃が発生します。さらに基礎は地盤に密着している状態なので、破砕時の衝撃が直接地面に伝わり、振動が伝わりやすくなります。
ひび割れは「重機をぶつけて破損してしまった」というような事例とは異なり、その場では分かりにくいため、事前に写真撮影をするなどの対策が必要です。
重機・足場の接触による外壁・塀・雨樋などの破損
密集地などで重機や足場が接触したことによる隣家の外壁や雨樋、塀などの破損は、解体工事の代表的なトラブルの一つです。この場合、損害を与えた施工業者が責任を持って補修費用を負担するのが一般的です。
雨樋の破損は足場の組立・解体や飛散物によって壊れやすい箇所です。外壁やブロック塀は重機や足場資材の接触、がれきの飛散により破損することがあります。
解体工事業者は破損させたら補修することはもちろんですが、破損しないように養生シートや手壊し解体などで対策しなければなりません。
外壁と、雨樋などの付帯部分、外構設備はそれぞれ専門業者が異なります。そのため、破損箇所に応じた専門業者に現場を見てもらい、正確な見積もりを取る必要があります。
基礎・ブロック塀・擁壁に影響が出る
工事による振動で基礎や擁壁にひびが入ったり、地盤が沈下して家が傾くことがあります。家の傾きと工事の因果関係が証明されれば、業者が費用を負担し補修工事を行います。
また、注意しておきたいのが隣家との境界線に設置したブロック塀です。自分の土地にブロック塀を設置している場合は問題ありませんが、境界線上に隣家と共有の塀を設置している場合、隣家の同意を得ないと解体できません。
もし、隣家の了承を得ないまま業者が誤って解体してしまった場合は、業者が元の状態と同等以上になるように補修します。
解体後に隣家の壁面がむき出しになる
長屋を切り離して解体した後は、隣家の壁がむき出しになった状態になります。
そのままにしておくと木材が雨風に直接さらされて急速に劣化し、建物の強度低下につながります。そのため、防水処理をしたうえで金属サイディングなどで補修しなければなりません。
長屋切り離しの際の補修工事の費用は施主負担が基本です。自分の建物だけを解体して完了というわけにはいかず、残された建物の安全性と快適性を確保するための補修工事を行うまでが一連の工事となります。
解体工事が原因かどうかはどう判断される?

隣家の住民に「解体工事により建物に不具合が生じた」と指摘された場合、その不具合が本当に解体工事が原因か調査する必要があります。
基本的には業者が調査したうえで判断しますが、施主としても判断基準を知っておきましょう。
元からあったひび割れとの見分け方
元からあったひび割れと解体工事が原因でできたひび割れは、ひび割れの新しさで見分けられます。
元からあったひび割れの特徴は、などがあります。
- ひび割れ内部が汚れで変色している
- ひび割れの角が丸くなっている
一方、新しくできたひび割れは、以下のような特徴があります。
- ひび割れの内側が外壁素材そのものの色をしている
- ひび割れ内部にホコリや汚れが付着していない
- ひび割れの角が尖っている
ひび割れの原因には経年劣化などさまざまなものがあるので、プロの目で見て判断すると確実です。
工事前の家屋調査の重要性
隣家の補修費用をめぐったトラブルを最小限に抑えるには、家屋調査が重要です。
家屋調査では隣家の基礎、屋根、外壁と内壁、塀・フェンスなどを対象に、既存のひび割れや傷を写真で記録し、まとめます。解体工事が始まる前に記録されるので、工事後のひび割れがいつできたものかを客観的に判断できます。
解体工事を依頼する際は、業者が家屋調査を実施するかどうかを確認しましょう。
もし、業者が実施しない場合は自分で業者を手配することをおすすめします。費用の相場は1棟あたり10~30万円と決して安くはありませんが、トラブルを避けるためには必要なコストです。
解体工事で隣家補修トラブルが発生したときの対応

ここでは、解体工事で隣家から補修を求められた場合の対応の流れを紹介します。
トラブルを大きくしないためにも誠意をもって対応し、業者と連携して補修箇所や費用、補修日などの詳細を書面で残すことが重要です。
隣人への謝罪・状況確認
隣家の住民に解体工事による損害を訴えられたら、まずは業者と共に現場に向かい、被害箇所を確認し、誠心誠意お詫びします。原因特定まで工事は中断し、被害拡大を防ぐことも大切です。
はじめに誠実な対応をしておくことは、その後の調査や状況説明の際に住民に協力してもらうためにも重要です。
注意点は、その場で安易に補償額等の約束はしないことです。必ず業者と相談してから回答するようにしましょう。
証拠を集める
被害箇所を写真に記録し、損傷箇所を明確にします。写真は日付入りで損傷箇所の全体・近接・周辺の3パターンが必要です。
同時に損傷の種類、寸法、損傷の程度を詳細に記録しておきます。記録する理由は、隣人が被害を主張しても、実際には解体工事が原因の傷ではないケースがあるためです。
因果関係を調査する際には、専門家に依頼するケースもあります。このような第三者に相談する際に、客観的な記録があると役立ちます。
解体業者に状況確認
被害箇所の証拠を記録したら、実際に解体作業を担当した作業員等に当時の状況を確認します。
たとえば、重機をぶつけてしまった、というように思い当たる原因があるか、そのような記憶はないものの作業中にいつもと違うことがあった、など作業中の状況を証言してもらい、実際の損傷具合との照合を行うのが一般的です。
その結果、解体工事が原因と認められた場合は、補償へと進みます。具体的にどこをどのように補修するのかを協議し、覚書を交わしたうえで補修工事を実施します。
解決が難しい場合は弁護士に相談
多くの場合、隣人との協議の結果、解体工事業者が損害賠償保険で対応しますが、話し合いが平行線の場合は弁護士に相談し、法的な解決をはかります。
弁護士に相談すれば、隣人との示談交渉を行ってくれます。さらに交渉が決裂した場合は、弁護士が調停の申し立てや訴訟の提起に対応してくれる点は大きなメリットです。
いきなり弁護士に相談するのをためらう場合は弁護士に質問可能な掲示板で相談したり、法テラスを利用したりするとよいでしょう。
損害賠償保険の種類について

解体工事で隣家の建物や外構を破損してしまったときに、補修金額を補償するのが損害賠償保険です。保険は大きく3つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
見積もりを検討している業者がどのような保険に加入しているのか、事前に業者のウェブサイトなどでチェックしておきましょう。
会社単位の保険
会社単位で年契約する保険です。会社が請け負う全ての工事が対象となります。
会社の年間の売上高に応じて保険料が決まるため、売上高が高い業者の保険料は高く、売上高が低い業者の保険料は低く設定されています。そのため、あらゆる会社が加入しやすい保険です。
施主としても年契約の保険に加入している業者なら、一年を通じて保険のサポートを受けられるため、信頼性の高さにつながるでしょう。
工事単位の保険
工事単位の保険はその工事の着工から引き渡しまでをカバーする保険です。工事ごとに都度加入する必要があり、同じ現場で複数の工事を請け負うケースでは、それぞれの工事に対して保険の加入が必要になります。
保険料は工事の請負代金に応じて決定されます。規模の大きい建物や難易度の高い工事は保険料も高くなる傾向があります。
工事単位の保険は、大型ビルの解体工事や重機を長期間使用する工事、人通りの多い解体現場などで利用されるのが一般的です。
工事車両単位の保険
工事車両や重機などの車両に対して加入する保険もあります。車両・重機の誤操作や事故の補償に利用できる、年間契約の保険です。
保険の適用範囲は当該重機を使用した作業のみです。特定の車両に手厚い補償をかけられる一方で、車両1台ごとに加入するため、現場で使用する重機が加入しているか、確認しておく必要があります。
年間単位や工事単位の解体工事を保障する保険と併用すると、幅広くサポートでき、万が一のトラブルにも安心して対応できます。
隣家との工事トラブルを防ぐためのポイント

解体工事で隣家とのトラブルを防ぐためには、工事前にしっかり対策することが大切です。また、実績のある優良業者に依頼することで揉め事を最小限に抑えられます。
ここでは、解体工事でご近所トラブルを防ぐためのポイントを紹介します。
必ず工事前の近隣挨拶を行う
解体工事は騒音や振動、粉塵で近隣に迷惑をかけてしまうため、クレームを防ぐためにも挨拶回りは欠かせません。もし、工事が原因で住宅に損傷を与えることになったとしても、事前に挨拶をしておくことで賠償の協議がスムーズに進みます。
挨拶回りは着工の1週間~10日間前に行うのが一般的です。基本的に業者が近所に説明に回ってくれますが、施主が同行するだけで印象が大きく変わります。
万が一のトラブルが発生した場合でも、あらかじめ施主が挨拶に伺っていれば信頼関係の悪化を防げます。
隣家の状況も含めて事前に現場の撮影を行う
トラブルに備えて、着工前に隣家の外壁や基礎、塀、屋根の既存のひび割れや損傷箇所を写真や動画で撮影し記録しておくとよいでしょう。業者と共に隣人に撮影の目的を説明し、協力してもらうことが大切です。
解体する建物が木造の一戸建ての場合は写真撮影でも十分なことが多いですが、建物が隣接している場合やRC造の住宅やマンションなど、解体時に大きな振動の発生が予想される場合は、家屋調査をしておくことも重要です。
家屋調査では、調査会社やコンサルタントなど第三者が2人1組の人員を派遣して実施します。家屋調査には費用がかかりますが、トラブルが心配な場合は実施しておくとよいでしょう。
工事協定書を作成する
隣家とのトラブルを回避するために、工事協定書を作成する方法もあります。
工事協定書とは、建設工事において近隣住民と施工業者が工事の情報とルールをあらかじめ書面で取り決める合意書です。協定書は契約書と同じように法的効力があります。そのため、当事者間の合意内容を明確に記載することがポイントです。
たとえば、作業時間や車両の通行ルート、騒音・振動の防止策を明確に記載しておくことで誠実な工事進行を義務付け、トラブルを未然に防げます。
現地調査を丁寧に行ってもらう
見積りの際の現地調査を入念に行ってもらうことは、事故防止に有効です。敷地内とその周辺を丁寧に見てもらうことはもちろん、図面を用意しておき、施主が把握している情報を解体業者に共有することも忘れてはいけません。
境界線と建物との距離や、境界塀はどちらの所有か、共有の場合は撤去するのか残すのかなどについても伝えます。
また、高齢者や小さな子ども、住人が夜勤や在宅で仕事をしているなど、騒音・振動が影響が出そうな情報は共有しておくと業者も対策を練りやすいでしょう。
工事保険に加入しているか確認する
解体工事業者が保険に加入しているかどうかは、契約前までに必ず確認しましょう。保険に未加入の業者と契約して、万が一隣家に損害を与えてしまった場合、修理費用の負担を押し付けられる可能性があります。
見積もりの際に保険の有無と、加入している保険の内容について聞いておくことが大切です。特に以下の保険に加入しているか確認してください。
工事中の過失により、他人の身体や不動産などに損害を与えた場合に利用できる保険です。
引き渡し後に発生した事故をサポートするための保険です。
通常の賠償保険で対象外となっているアスベストの飛散事故についてカバーするための特約です。
解体工事に関するよくある質問

ここでは、解体工事中の隣家とのトラブルに関してよくある質問とその回答を紹介します。
事前にどのようなトラブルが起こりやすいのか、事例を理解しているだけでも対応の仕方が変わるので、あらかじめ知っておくと役立ちます。
工事中は問題がなく工事後に補修請求されるケースはある?
解体工事中は問題がなくとも、工事後に隣家から補修を請求されるケースは十分にあり得ます。
解体業者が撤収後に隣家から損傷があると主張された場合は、その場で回答せず、解体業者に連絡を取りましょう。解体工事業者が該当箇所を調査し、業者の過失と判断されれば、業者が補修などの対応をします。
もし、直接請求書を渡された場合は業者に間に入ってもらい、話し合ってもらうことが大切です。
隣の家から解体工事で揺れると苦情がある場合にはどうする?
隣の家から解体工事の振動に対するクレームを受けたら放置せず、速やかに業者と共にお詫びに伺い、まずは相手の主張をしっかりと聞きましょう。そして、揺れの原因や揺れが大きくなる期間を説明します。
さらに振動による影響を減らすため、業者に重機の変更、作業時間の変更を求めるなど、具体的な改善策を実行します。
クレームが発生したら初期に丁寧に対応すれば大きなトラブルにつながりにくいです。また、事前の挨拶回りで振動や騒音が発生することを伝え、理解を得ておくことも大切です。
隣の家から解体時にネズミ対策を求められたら?
解体工事を行うとネズミやゴキブリが大移動します。
特に放置された空き家は掃除が行き届かず、ネズミの住処となっていることがあり、解体工事で行き場を失ったネズミが次の住処を求めて周辺の家にやってくることがあるのです。
また、飲食店が多いエリアもネズミやゴキブリが住み着いている可能性があるため注意が必要です。
隣家からネズミ対策を求められたら、駆除業者に依頼して生息調査を実施のうえ、駆除します。隣人にはいつ、どのような対策を行うか明確に説明しておくと、安心感につながるでしょう。
まとめ

解体工事で隣家を傷つけてしまった場合は、速やかに誠実な対応をすることが大切です。
隣家から対応を求められたらすぐに業者に連絡し、まずはお詫びに伺うことでその後の補修対応もスムーズに進みます。
解体工事は騒音・振動・粉塵の発生は避けられず、クレームが発生しやすい工事です。業者と協力して近隣に理解を求める必要があるため、施工実績が豊富でアフターサービスや細かい対応ができる優良業者に依頼することがトラブル防止のための重要なポイントです。

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