
解体工事は多くの方が何回も経験するものではありません。そのため、何から始めたらよいのか分からない、という方が大半でしょう。
そこでこの記事では、解体工事の流れや施主がすべきこと、トラブルや追加工事が発生しやすい注意点と対策などについて解説します。
解体工事の全体的な流れ

まずは解体工事の問い合わせから工事完了・引き渡しまでの流れを紹介します。あらかじめ全体像が分かっていると、スケジュールも立てやすいはずですので、計画の参考にしてください。
相談・現地調査
施工エリア内の解体工事業者3社程度に問い合わせて現地調査を依頼します。解体工事は追加工事が発生しやすい工事です。あとから追加費用を請求されないためにも必ず現地調査を依頼しましょう。
見積もり・契約
解体工事業者は敷地内や周辺環境、重機の搬入経路などを調べて見積もりを出します。現地調査を依頼した全社の見積書が出揃ったら比較検討し、最も良いと思った業者と契約します。
各種届出・事前準備
着工前までに自治体に対して必要な申請手続きを行わなければなりません。ほとんどの場合、業者が手続きを代行してくれます。ただし、電気やガス、電話回線などのインフラの停止は依頼主による手続きが必要です。
工事の1週間前に、近隣に挨拶回りをします。業者と施主が一緒に伺い、挨拶しておくことがポイントです。
足場・養生の設置
いよいよ着工です。高所作業のための足場を設置し、周囲を養生シートで囲います。足場の設置作業では金属がぶつかる大きな音が近隣に響くことがあります。通常の一軒家であれば、足場の設置は1日で完了するのが一般的です。
屋根・内装の解体
まずは手作業で内装を解体します。サッシや建具、石膏ボード、畳などを撤去します。次に屋根の撤去です。瓦屋根の場合は1枚ずつ剥がしていきます。リサイクルするためにほかの素材と混ざらないよう、手間がかかりますが手作業で行います。
建物本体の解体
建物本体は重機を使って解体していきます。解体作業のスピードは上がりますが、騒音や振動、粉塵が発生しやすい工程です。粉塵の飛散を防ぐためにホースで散水しながら解体していきます。同時に外構設備も解体します。
建物基礎の解体
重機で基礎を解体します。基礎はコンクリートをブレーカーで破砕しながら解体していくので、特に大きな音と振動が発生します。基礎の下に地中埋設物が埋まっている場合は撤去します。この工程は追加費用の対象となります。
廃材搬出・整地
解体工事で発生した廃材はルールに従って分別し、処分場や中間処理施設へ運ばなければなりません。そのため、現場で廃棄物を丁寧に種類別に分別し、搬出します。その後は整地作業です。地面を平らにならしたあと、転圧します。
完了確認
施主に現場に立ち会ってもらい、問題なければ工事完了です。解体・撤去するべきものが残されていないか、反対に残してほしいものが残っているか、隣家を傷つけていないかなどをチェックしてください。業者は引き渡し後、清掃して撤収します。
解体工事の流れの中で施主が行うこと

解体工事が始まる前までに、施主が主導で行わなければならないことは多くあります。遅れると工事を始められないこともあるので、業者とスケジュールを確認しながら進めていきましょう。
ライフライン停止
解体作業が始まる前までに、電気、ガス、電話、インターネットなどのインフラの停止・撤去手続きをする必要があります。
とくに電気やガスが供給されたまま解体作業をすると火災や爆発のおそれがあるため、確実に撤去しておかなければなりません。
各事業者への撤去依頼は余裕を持ったスケジュールで連絡するようにしましょう。また、連絡の際は「解体工事のため」と必ず伝えるようにしてください。
ライフラインのなかでも水道は解体工事で使用するため、停止しません。水道代の負担は解体業者が支払うケースと施主が支払うケースがあります。
事前に支払いについて確認しておき、解体業者が負担する場合は工事前までに水道事業者に連絡し、清算手続きを行っておきましょう。
近隣住民への挨拶
着工の1週間前には、近隣住民に挨拶回りをします。解体工事は騒音・振動・粉塵が発生するため、クレームの起こりやすい工事です。あらかじめ挨拶に伺って、工事の説明と迷惑をかける旨を伝えておくだけで、心証が良くなります。
挨拶回りは解体業者が行ってくれますが、施主が一緒に周り、直接ご挨拶するだけで印象が大きく変わります。挨拶回りの際はタオルや洗剤などの粗品を持っていくと良いでしょう。
各種申請の確認
解体工事を始める前に、いくつかの申請手続きを行う必要があります。書類が多く手続きが煩雑なため、ほとんどの申請を業者が代行してくれます。
しかし、施主としても必要な申請の内容を知っておき、業者に申請が完了しているか確認しておくと安心です。
解体工事で必要な申請は以下のようなものです。
- 建設リサイクル法の届出
- 道路使用許可申請
- 建築物除却届
- アスベスト調査結果報告
建設リサイクル法の申請は、施主に届出の義務がありますが、業者に委任できます。届出を忘れると20万円以下の罰金の対象となるため、進捗状況は把握しておくようにしましょう。
家屋解体向けのローン・補助金の申請
ローンを利用して住宅を解体したい場合は、金融機関にローンの申し込みをします。住宅ローンは建て替え前提の解体工事では利用できますが、解体工事のみでは利用できません。解体のみの場合は空き家解体ローン、プロパーローン、フリーローンなどを利用します。
老朽化した空き家の解体工事の場合は市町村の補助金を利用できます。地域によって名称は変わりますが主に以下のような補助金が利用できます。
- 木造住宅除却工事補助金
- 空き家解体補助金
補助金の利用条件や内容は自治体によって異なるため、希望する場合は早めに窓口に相談しておきましょう。
残置物(不用品)の撤去・処分
建物の中に荷物が残っている場合、解体作業開始までに撤去しておく必要があります。
家の中が空になっていないと、業者が解体作業を始める前に残置物の撤去作業をしなければなりません。家財道具は産業廃棄物として処分できないものも多いため、その分処分費用もかかります。
使える家具や家電がある場合は、リサイクルショップに買取を依頼するのがおすすめです。数が多い場合は出張買取にも応じてくれ、新品に近いものや人気アイテムは高額査定になる可能性があります。
解体業者が対応するのが一般的な業務

一方、取り壊しの作業以外で解体業者が行う業務は以下のようなものです。工事前の申請手続きから工事後の廃棄物処理まで、重要な業務が多くあります。業者任せにせず、完了しているか確認しておくと安心です。
届出・申請代行
上でもご紹介しましたが、着工前の行政手続きは基本的に業者が行います。施主が行う必要があるものも、業者が代行するのが一般的です。
床面積の合計80㎡以上の、コンクリートや木材などの特定建設資材が使用されている構造物の解体工事で必要です。
道路に工事車両を停車して資材や廃棄物の上げ下ろしなどの作業を行う場合は、所轄の警察署に道路使用許可を申請する必要があります。
10㎡を超える建築物を解体・除却する場合は、建築物除却届の提出が必要です。
参考:建築工事届・建築物除却届
床面積の合計が80㎡以上の解体工事または請負代金の合計額が100万円以上の改造・補修工事で必要です。
産業廃棄物処理
解体工事で発生した廃棄物は産業廃棄物に該当し、排出事業者である解体工事業者が責任を持って分別・処理しなければなりません。
業者は現場で廃材を分別し、中間処理場に運搬します。その後、廃棄物は種類に応じてリサイクルまたは埋め立てなどで最終処分されるのが基本的な流れです。
さらに業者は、不法投棄等の防止のためにマニフェスト(産業廃棄物管理票)を用いて、産業廃棄物処理の流れを明確化します。依頼主はマニフェストのE票で最終処分が完了していることを確認できます。
解体工事の流れでトラブルが起きやすいポイント

解体工事は、追加費用や近隣からのクレームが発生しやすい工事です。しかし、事前に起こりうるトラブルを把握し、しっかり準備を進めておくことで、トラブルの発生を最小限にできます。
施主としてもどこでトラブルが起こりやすいのか、事前に把握しておきましょう。
追加費用が発生しやすいタイミング
解体工事の追加費用で最も多いのが、地中埋設物撤去の追加工事に伴う追加費用です。特に基礎を撤去したあとに、古い井戸や過去の建築物の基礎、廃棄物が埋められていることが発覚すると、撤去工事のための費用を請求されることになります。
古い浄化槽の撤去も追加費用の対象となるので、現地調査の際には図面などの資料を用意しておき、できるだけ敷地内の情報を業者が把握できるようにしておくことが大切です。
また、敷地内、建物内に残置物がある場合も追加費用の対象となります。家財道具は産業廃棄物に該当しないため、処理費用が高額になるケースがあるので、工事前までに残置物を撤去して建物内を空にしておきましょう。
近隣トラブルが起きやすい工程
解体工事では重機を使用した工程が最もクレームが発生しやすいと言えます。解体作業では騒音や振動の発生は避けられません。なかでも基礎を解体する作業では、重機による打撃音と振動により、近隣に迷惑をかけることになってしまいます。
また、解体作業では粉塵が飛散し、近所の外壁や車を汚してしまうこともあります。作業中は業者が散水をして粉塵の飛散を抑えていますが、作業日は洗濯物の部屋干しに協力してもらわなければならないケースもあるでしょう。
トラブルを避けるためには事前の挨拶回りで丁寧な説明をすること、近隣の環境に合わせて作業時間を工夫することが必要です。
解体工事の流れと工期の目安

建物の取り壊し作業の流れと工期は、構造によって変わります。ここでは構造別の作業の流れを整理しているので、解体予定の建物の構造ではどのような流れで解体が進められるのかを知っておきましょう。
木造住宅の解体工事の流れと日数
木造住宅は、手作業と重機を併用して解体します。
屋根材撤去→内装解体→柱・梁の解体→基礎の撤去
7~12日
木造住宅の解体は、まず屋根材を撤去し、その後建具や石膏ボード、畳を取り外してから油圧ショベルで本体部分を解体します。
鉄骨造やRCに比べて、作業音や振動が比較的少なく、近隣への影響も少なく済みます。状況によっては手壊し解体を選べるため、騒音を抑えながらの解体が可能です。
鉄骨造・RC造の解体工事の流れと日数
鉄骨造住宅の解体は、ガス切断機と重機を主に使用して解体します。
屋根・外壁の撤去→内装の撤去→鉄骨の切断→基礎の撤去
10~20日
鉄骨造は内装を撤去した後、鉄骨をガス切断機で切断します。クレーンで鉄骨を吊り下げながら解体していくため、重機の騒音と金属の切断音が、近隣に影響を及ぼします。
RC造住宅の解体では、大型重機や圧砕機を使った工程がメインです。
内装の撤去→外壁・スラブの破砕→基礎の撤去
2週間以上
RC造は、圧砕機でコンクリートを粉砕しながら鉄筋を切断するため、住宅の構造の中では最も大きな騒音と振動が発生します。構造が強固なため、取り壊しが大掛かりで工事期間が長いのが特徴です。
天候・立地条件による変動要因
解体工事は、普通の雨なら工事が中止にならないため、雨天でも工期に影響はほとんどありません。ただし、台風や強風など、安全に作業できない気象条件では工事は中止となり、場合によっては数日間の遅れとなります。
解体作業時の雨であれば雨天決行が基本ですが、整地作業は地面がぬかるんでいると重機がはまったり土壌を平坦にすることが難しいため、雨の日は避ける場合もあります。
また、現場に接する道路が狭いなど、立地条件により重機が搬入できない場合は手壊し解体を選択するため、工期が長くなるケースも珍しくありません。
現場が通学路に面している場合は、登下校の時間を避けるなどの配慮により、工期に影響が出ることもあります。
解体工事の流れを理解したうえで業者を選ぶポイント

解体工事をトラブルなくスムーズに進めるには、業者選びも重要です。ここでは、優良業者を選ぶためのポイントを紹介するので、しっかりチェックしてトラブルを未然に防ぎましょう。
流れをきちんと説明できる業者か
解体工事業者選びでは、工事の流れを明確かつ具体的に説明できる業者を選ぶことが、トラブルを避けるうえで重要です。
工事の工程表や工事範囲、作業にかかる費用などを書面にして詳細に説明する業者と契約するようにしましょう。
口約束だけで工事内容を取り決めたり、細かい内容を確認せずに依頼すると、あとになって納得のいかない追加費用が発生しトラブルになるケースもあります。
解体作業はもちろんのこと、産業廃棄物の処理についても明確な説明がなければ不法投棄されてしまうおそれがあります。
不法投棄は原則として施主には罰則は及びませんが、投棄された廃棄物の撤去などを求められる民事リスクがあるので、廃棄物の取り扱いを厳正に行っている業者を選びましょう。
見積もりと工程説明が一致しているか
見積書が提示されたら、工事の説明と見積書の内容が合っているかを確認しましょう。見積書は作業内容と費用の明細が詳細に記載されているかを確認し、「工事一式」などと表示するだけで詳細を記載しない業者は避けましょう。
見積もりは複数業者から相見積もりを取ることをおすすめします。複数の施工会社の見積もりを比較することで、費用相場や工法、アフターサービスの内容を比較でき、悪徳業者との契約を避けられます。
まずは施工実績を調べ、問い合わせに対して丁寧で明確な説明をする業者3社程度に現地調査と見積もりを依頼しましょう。
契約前に確認すべきチェックリスト
契約前には以下の項目をチェックし、不明な点は業者に確認してください。
建設業許可・解体工事業登録の有無
施工実績
会社概要
工事範囲の明記
工事期間
契約解除の条件
追加費用の条件
支払い条件
廃棄物処理方法
賠償責任保険の加入
近隣への挨拶回り
追加工事が発生した場合の対応方法
これらの項目は契約書または見積書で確認し、曖昧な項目は必ず書面にしてから契約を結ぶことが大切です。
解体工事に関するよくある質問

ここでは、解体工事の依頼や準備、手続き関係に関してよくある質問とその回答を紹介します。トラブルを避けるためにも解体工事が始まる前までに疑問を解消しておき、業者に工事を任せましょう。
家の解体でどこまで片付けるのがよい?
解体工事では着工前までに家屋の中をすべて片づけて空にするのが基本です。家庭ごみや家電は産業廃棄物に含まれないため、業者が処分すると高額な費用がかかります。早めに片付けを開始してスムーズに解体作業に移れるようにしましょう。
残置物の処理は自分で自治体のゴミ収集、粗大ゴミの回収に出すのが、手間はかかりますが最も安価に済みます。
もし、時間がない場合や遠方の空き家を解体する場合は、解体業者に残置物処理を依頼することも可能です。費用はかかりますが、手間は省けます。
残置物撤去を解体業者に任せたい場合は、現地調査で家財道具の量を見てもらい、撤去費用の見積りを出してもらうとよいでしょう。
解体業者へのお礼はどうすべき?
解体業者へのお礼は工事費用の支払いのみで十分であり、必須ではありません。業者も業務として対価を得て作業しているので、過度なお礼や気遣いは不要です。
もし、感謝の気持ちを伝えたい場合は、工事開始前に「よろしくお願いします」、終了時に「無事に終えていただきありがとうございます」などと言葉を沿えるだけで、作業員との信頼関係が生まれます。
差し入れをしたい場合は、夏は冷たい飲み物、冬場はコーヒーやお茶などが喜ばれます。作業の邪魔にならないよう、開始時や休憩時間に差し入れるのがよいでしょう。
解体工事後に必要な手続きは?
解体工事が完了したら、完了日から1か月以内に法務局で建物滅失登記の申請が必要です。
建物滅失登記とは、建物が無くなったことを登記簿に反映させる手続きです。滅失登記がされていないと、建物の固定資産税を支払い続けることになるほか、土地の売却、建て替えなどができません。
それだけでなく、滅失登記を怠った場合は10万円以下の過料の対象となるため、忘れずに行う必要があります。
まとめ

解体工事では着工前までにさまざまな手続きや準備が必要です。行政手続きは必要書類が多く手続きが煩雑なため、代行してくれる業者を選ぶと安心です。
建物の解体後に売却や建て替えなどを予定している場合やローンを利用して解体工事をしたい場合は業者にその旨を伝え、余裕を持ったスケジュールで工事の計画を立てましょう。

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