解体工事で近隣の外壁や基礎にひびが入った時の保証は誰が行うのか、施主としては気になりますよね。
この記事では、解体工事で近隣の住宅にひび割れや破損などの損害を与えてしまった場合の保証責任や、対応の流れ、ひびが起こる原因などについて解説します。
事前に全体像を把握しておき、万が一トラブルが起こった場合にもスムーズに対応できるようにしておきましょう。
解体工事で家にひびが入った時の保証は?
解体工事で近隣の家にひびが入った場合、責任の所在はどこにあるのでしょうか。
結論からいえば、基本的には解体業者が責任を負いますが、場合によっては施主が賠償請求に応じなければならないケースがあります。詳しく見ていきましょう。
基本的には解体業者が保証
解体業者の不注意により近隣の家にひびが入った場合や敷地内のものを破損した場合は、基本的に民法716条に基づいて解体業者が補償しなければなりません。
解体業者は一般的に、工事で発生しうる事故や賠償請求などのトラブルをカバーするため、損害賠償保険に加入しています。
ただ、どのような種類の保険に加入しているかは業者によって異なり、なかには保険に加入していない業者も存在するので、業者を比較検討する際には加入している保険についても確認しておきましょう。
工事を依頼した施主に責任が問われる場合も
隣家のひびが施主の過失によって起こった場合、施主が責任を負います。
たとえば、以下のような場合は施主に責任が問われます。
- 施主の指示で無理な施工スケジュールを強いる
- 養生シートを費用を抑えたいからといって拒絶する
- 隣家に損害を与えるような無理な注文を業者に強いる
隣家の建物や外構を直接壊したのは業者でも、その原因を作ったのが施主の場合、施主が費用を負担しなければならない点は注意しておきましょう。
解体工事中に家にひびが入る原因とは?
解体工事で近隣の建物にひびが入る場合、どのようなことが直接の原因となるのでしょうか。
ここでは、住宅やマンションの解体作業の影響で起こるひびの原因を紹介します。原因を知っておき、事前に対策できるものについては対応しておきましょう。
重機の振動や衝撃
解体作業で使用する重機の振動や作業中の衝撃による振動で、工事現場周辺の家にひびが入ることがあります。
建物から部材を引きはがしたり、基礎を壊したりするときや、解体した資材が地面に落下したとき、重機搬入のための工事車両が走行するときに起こった振動は、建物に繰り返し負荷をかけるため、ひび割れを起こす原因となるのです。
そのため解体工事業者には、それぞれの作業で細心の注意をはらい、振動を抑えることが求められています。
不適切な工事手法
法律で定められた規制を守らない不適切な工法により、建物に悪影響を及ぼすケースもあります。
振動規制法では、一定規模以上の重機を使用する場合の振動は75デシベル以下と定めています。
75デシベルとは、震度3に相当し、ブルドーザー、振動ローラーから5メートルの距離で感じる振動です。建物内にいる多くの人が揺れを感じ、歩いている人も揺れを感じることがあるでしょう。
これを超えた大きな振動を発生させると、住宅にひびが入るおそれがあるだけでなく、近隣住民にとって大きなストレスとなります。
解体業者は苦情を回避するためにも、以下の配慮をしなければなりません。
- 迷惑になる時間帯の作業は停止する
- 騒音や粉塵飛散対策をする
- 注文者と共に近隣に対して挨拶回りをし工事内容を説明する
周辺地盤の影響
解体工事によるひび割れは周辺の地盤に影響することもあります。軟弱地盤では適切に地盤補強、基礎設計をしていないと振動により家が傾いたりひびが入ったりする可能性があります。
近隣の住宅でそのような家がある場合、解体工事で住居に不具合が生じるおそれがあるでしょう。
日本は他国に比べて密度の低い砂や柔らかい粘土で構成される軟弱地盤が多く、都市部でも多く分布しています。
かつて川や池、湖だった場所、湿地、河原、谷底平野などの対象区域は軟弱地盤が多いため注意が必要です。
解体工事で家にひびが入ったらときの対処法
解体工事で自宅にひびが入った場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
ここでは、解体工事が原因で住宅にひびが入った場合に補修を受ける流れを紹介します。流れを押さえておき、万が一トラブルが起こった場合に備えましょう。
ひびの原因が解体工事かどうかを特定する
まずはひびが解体工事でできたものであることを証明する必要があります。コンクリートやモルタルは表面にひびが入りやすく、経年劣化でひびができている可能性があります。
ひびが新しいものであると証明するには、工事の前後の写真が必要です。
近所で解体工事の実施があることが分かったら工事開始前までに家の外壁や全体像、内部の写真を撮影しておきます。そうしておくと、工事が原因でひびが入った場合の証明になります。
解体業者と補修費用の負担について協議する
ひびが解体工事が原因だと思われる場合、被害を受けた住民は解体業者と補修について話し合います。
このとき、まず施主に解体業者と協議したい旨伝えるのが一般的です。施主を飛び越えて話してしまうとトラブルに発展するおそれがあるためです。
施主は近隣住民から連絡を受けたら速やかに解体業者にクレームが入っている旨を伝えるようにしましょう。
現地調査の結果、ひび割れが解体作業によるものだと判明した場合、解体業者が補修します。補修はひび部分にコンクリートを塗るなど、表面的な補修が一般的です。
紛争になった場合は第三者機関に相談する
解体業者との話し合いでは解決できなかった場合、弁護士など第三者機関に相談します。
弁護士にもそれぞれ得意分野があるので、建設トラブルに強い弁護士を探すことが大切です。
弁護士に依頼する費用がない場合は、法テラスを利用すると良いでしょう。法テラスとは、民事などのトラブルを相談できる無料の窓口で、必要に応じて弁護士費用を立て替えてもらえます。
依頼した弁護士に代理人となってもらい協議を進めますが、問題解決できない場合は裁判に発展することも考えられるでしょう。
補修につながる可能性がある解体事例
ひび割れだけでなく、住宅に不具合が生じたときは、補修に応じる必要があります。
以下で具体的な不具合の事例を解説するので、解体工事により周辺の住宅にどのような影響が出るのか知っておきましょう。
外壁に損傷や亀裂
解体工事の修理対応でよくあるのが、外壁のひび割れや損傷です。
振動や衝撃は外壁に大きな影響を及ぼします。サイディング外壁の場合、目地のコーキングが衝撃や振動を吸収し、外壁が建物に追随できるように働くのが通常です。
しかし、建物に繰り返し振動による負荷がかかったり、コーキングが劣化していると、ひび割れやサイディングボードからコーキングが離れたりするなどの症状が発生します。
外壁のひびは雨漏りの原因となり、放置していると建物全体を劣化させる原因となるため注意が必要です。
庭木や外構設備の破損
解体工事中に隣家のフェンスや植栽に重機やがれきが当たってしまい、損害を与えてしまうこともあります。また、振動によりブロック塀や花壇にひびが入ってしまうこともあるでしょう。
なかには、境界線に建っている隣家のブロック塀を、発注者の所有物だと作業員が間違えて撤去してしまった、というトラブル事例もあります。
このようなトラブルを避けるためにも、解体業者と施主が工事範囲の確認を入念に行い、隣人の所有物を傷つけることのないようにしましょう。
敷地内の地面にひびが入る
エクステリアの破損は解体業者のミスによるものだけではありません。解体作業の振動により、駐車場や玄関アプローチの床材など、地面にひびが入ることがあります。
注意点は、コンクリートは振動が起こらなくても乾燥収縮によりひび割れが発生しやすい素材だという点です。
ヘアークラックと呼ばれる細かいひび割れはよく発生するので、そのひび割れが解体工事でできたものであることを明確に証明する必要があります。
建物自体が傾く
解体工事では振動により地盤沈下が発生して家が傾いてしまうことがあります。地盤沈下の原因は、振動による土壌密度の変化のほか、地下水位の変動、土地の土留工事が不適切だった、などです。
建物が傾くとドアの開け閉めが困難になるといった建物へのダメージのほか、頭痛やめまいなど住む人の健康に影響を及ぼす可能性があります。
家の傾きと解体工事の因果関係を証明するには、事前に家を写真で記録しておく、家屋調査で家の傾きを調査しておくことが大切です。
天井部分が垂れ下がる
解体工事による振動で、天井が垂れ下がってしまうことがあります。これは特に耐震基準を満たしていない古い時代の建物や、天井耐震が施されていない構造上脆弱な建物で起こりやすいトラブルです。
天井は柱や梁とは別の部材なので、解体工事の振動によって建物が揺さぶられたとき、柱や梁と違う動きをし、脱落したり落下したりしてしまうおそれがあります。
解体工事による天井の異変は、ある程度期間が経過しないと気付きにくいケースもあるので、解体工事前には証拠として各部屋の天井の写真は撮っておいた方が安心です。
室内の壁に亀裂が生じる
解体工事の振動による亀裂は外壁や基礎だけでなく、屋内の内壁に発生することもあります。
基礎や柱、梁などの構造体に振動による力が加わり、構造体を引っ張ったり圧縮したりしたことで建物にわずかな変化が生じてひび割れてしまいます。
ひび割れに気づきやすいのは壁紙や漆喰などの内装に亀裂ができた場合ですが、下地となる石膏ボードにひびが生じるケースもあるでしょう。
解体工事の前には、建物の外側だけでなく、室内もしっかり写真撮影し、万が一不具合が生じた場合に証明できるようにしておくことが大切です。
まとめ
解体工事で起こる振動が原因で、周囲の家にひびが入ったり、建物や外構の一部が破損してしまったりするおそれがあります。
万が一近隣住民に損害を与えた場合、施主に過失がなければ業者が補償します。
しかし、できるだけ揉め事に発展しないように工事前に写真撮影、家屋調査、工事協定書の取り交わしなどに協力してもらい、トラブルを未然に防ぎましょう。
クレームに発展していなくても、近隣に迷惑が掛かりそうな状況と判断したら、施主自ら早めに業者に連絡して改善してもらうことも大切です。
コメント