
空き家が建っている土地の売却を計画していると、「更地渡し」「現況渡し」という言葉が出てきて、どちらを選択したら良いのか分からなくなることもあるでしょう。
また、更地渡しとはどこまで解体して引き渡せばよいのか分からない、という方もいるかもしれません。
この記事では、空き家の更地渡しとはどの範囲を指すのか、向いているケースや注意点について解説します。
解体の「更地渡し」はどこまで?

解体更地渡しの撤去範囲は、どのように決められているのでしょうか。まずは更地渡しの定義や撤去範囲の注意点について解説します。
土地の売却で建物解体を検討している場合は、更地渡しの概要について知っておきましょう。
「更地渡し」の定義は曖昧
「更地渡し」とは、売買契約成立後、古家を解体して更地にした状態で買主に引き渡すことです。
更地渡しは法令で定められた言葉ではなく、厳密な定義はありません。そのため、撤去範囲を契約書に明記しなければトラブルの原因となります。
特にブロック塀の撤去や整地の必要性については、どこまで売主が対応するのか事前に取り決めておかなければなりません。
また、解体後に地中埋設物が発覚した場合に、どこまでが売主の責任となるのかを取り決めておく必要があります。
追加工事の可能性もある
解体工事は追加工事の発生しやすい工事です。地中埋設物は解体作業が始まってから発覚するケースも少なくありません。
地中埋設物の撤去費用は、埋まっているものの大きさや量によっては高額になる可能性もあり、売主への負担が大きくなる場合もあります。
更地渡しは売買契約締結後に解体工事、その後引き渡しという流れで行います。追加工事が発生した場合の工事の遅延にも対応できるように、余裕を持ってスケジュールを立てることがスムーズに売却を進めるコツです。
法律で一律ではなく契約で決まる

不動産取引における更地渡しは、法律で一律にルールが決められているわけではなく、売主と買主の契約内容によって決まります。
双方が合意したうえで契約書に記載する必要があるため、以下の重要事項を一つずつ確認することが大切です。
解体工事の費用負担
更地渡しの解体費用は通常は売主が負担しますが、契約次第で買主負担や折半も可能です。
古家が残った状態よりも更地の方が市場価値が高まりスムーズに売却できる傾向があるため、売主が解体し、その費用を負担するケースが多くあります。
一方で、買主が古家を改修して利用したい場合や、買主側で解体業者を指定したい場合などは、買主が解体費用を負担します。
いずれにせよ、状況に応じた話し合いのもと、売買契約書に明記します。
土地の状態確認
土地を売買する際、売主は土地の不具合について知っている情報は事前にすべて開示し、契約書に免責事項を明記しなければなりません。
例えば土地の地盤沈下を疑われる状況がある、過去に地盤が軟弱だと言われたことがある、などの情報がある場合は、買主に伝えておく必要があります。そのうえで地盤調査や地盤補強工事の費用負担はどちらが行うかについて取り決めておきましょう。
また、地中埋設物でトラブルになるケースもあるため、解体工事の際に地中埋設物を完全に取り除いたうえで引き渡すことも大切です。
境界の明確化
土地の売却時には測量の義務はないものの、境界紛争などのトラブルを避けるために通常は売主の負担で測量を実施します。
土地の売買の場合は、土地家屋調査士と隣地所有者立ち合いのもと境界点を確定しながら測量する「確定測量」を行います。
測量の費用相場は約35~80万円です。土地が道路や河川に接している場合は費用が高額になる傾向があります。
境界が曖昧な状態の土地は買主の不安につながり、売却が滞るケースもあるため、測量であらかじめ境界を明確にしておきましょう。
解体更地渡しの特約
不動産売買契約書には特約条項が盛り込まれている場合があります。特約条項とは、基本的な項目とは違い、売主と買主間の取引条件に沿って個別に明記されるもので、更地渡しも特約に含まれます。
更地渡し特約で重要なポイントは、以下の通りです。契約書に取り決めについて明記しておく必要があります。
「更地」の範囲を明確にし、撤去するものを具体的に取り決めておきます。
売却後に買主が新築する際に地中埋設物が発見された場合、契約書に誰がどのような責任を負うか明記します。
解体スケジュールの確認
更地渡しの引き渡しは、解体工事完了後です。解体作業自体は、30坪の一般的な戸建て住宅で7~10日ほどで完了しますが、見積もりから契約、整地作業までを含めると1~2か月は見ておくとよいでしょう。
売買契約後、スムーズに解体工事に着手できるように、解体工事業者は事前に選定しておくことをおすすめします。
解体工事は悪天候や追加工事で遅延する場合があります。その場合の対応方法を契約書に明記しておくことも大切です。
更地渡しの注意点

更地渡しは買主にとって購入希望者の幅が広がり、売却しやすくなるなどのメリットがありますが、いくつか注意しておきたい点もあります。
以下の注意点を押さえて、スムーズに売却を進めましょう。
契約条件の調整が必要
更地渡しでは、トラブルが起こった場合に誰が対応するかなどを契約前までに調整し、契約書に明記しておきましょう。
特に売主はローン特約についてしっかり理解しておく必要があります。ローン特約は、買主が住宅ローンの本審査に落ちた場合、違約金などのペナルティなしで契約を白紙解除できる、買主を守る仕組みです。
買主がローンの審査に通らなかった場合は、買主から受け取った手付金を返却しなければなりません。ローン特約は売主にとってリスクになるため、融資承認取得期日、契約解除期日を契約書に明記します。
また、故意に審査に落ちる「ローン崩し」を防ぐため、契約書に金融機関名、申込金額などを記載しておくことも大切です。
解体前に調査を要する場合もある
解体工事が始まってから地中埋設物が発見されると、追加費用が発生します。
場合によっては地中から古い基礎が見つかったり、大きな岩が出てきたりして想定以上の費用がかかるケースもあります。また、解体途中にアスベスト建材の利用が発覚すると高額な撤去費用が必要です。
地中埋設物の多くは解体作業中に見つかりますが、地歴調査で事前に調べることも可能です。地歴調査は登記謄本や古地図などを用いて土地の履歴を調べるもので、簡易的なもので約5~10万円程度かかります。
追加工事は解体工事の遅れにつながります。引き渡し日に間に合うよう、事前に対策しておくと安心です。
固定資産税に注意する
解体工事により土地から建物がなくなると、住宅用地特例の適用対象からはずれ、固定資産税が最大で6倍になります。
固定資産税は毎年1月1日の評価額を、その時点での不動産所有者に対して課税します。そのため、1月1日時点で建物が存在しなければ軽減措置が受けられず、税金が高くなります。
節税のためには、年が明けてから解体するなど、建物の解体と引き渡し日のタイミングを見極めるようにしましょう。
近隣住民とのトラブル
更地渡しのために解体工事を行っていると、騒音や粉じんの発生により近隣住民とトラブルになることがあります。
解体工事は多くの場合、重機を使って木材やコンクリートを破砕します。その際に発生する、騒音や振動が近隣住民にストレスを与えたり、粉じんが洗濯物や車、外壁を汚してしまうことがあります。
トラブルを防ぐためには工事開始前に近所に挨拶回りをし、工事内容と期間などについて説明しておくことが大切です。
再建築不可だと売却が難航する
土地が再建築不可物件の場合、解体して更地にすると新たに家を建てられないため、売却が難しくなります。
都市計画区域や準都市計画区域では建築基準法により、土地が幅員4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。
この接道義務の条件を満たさない土地は、一度建物を解体すると家を建てることは不可能です。そのため、再建築不可物件の場合は建物を残したまま売却することになります。
建て替え・増改築ができない、将来的に売却しにくいことから売却額が安くなり、買い手も付きにくいというデメリットがありますが、安く不動産を購入したい人や税負担を押さえたい人、古い家をリフォームして住みたい人にはニーズがあります。
更地渡しに必要な手続き

更地渡しの際に必要な手続きにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、主な手続きを紹介します。手続きを怠ると罰則の対象となるケースもあるため、忘れないように業者と連携して対応しましょう。
建物滅失登記は必須
解体工事が完了したら売主は建物滅失登記を行わなければなりません。
建物滅失登記とは、解体等で土地から建物がなくなったことを登記簿に登録する手続きです。建物の所有者は、解体・滅失から1か月以内に建物を管轄の法務局で滅失登記の手続きを行います。
滅失登記を怠ると、10万円以下の過料に処される可能性に注意が必要です。そのほか、存在しない建物に対して固定資産税がかかり続ける、新たに建物を建てる際に登記簿上の古い建物を抹消しなければならず一連の手続きが滞るなどのリスクがあります。
建設リサイクル法の届出が必要なケース
床面積80㎡以上の建物を解体する場合は、特定建設資材の再資源化を促進する目的で、建設リサイクル法の届出が必要です。
建設リサイクル法の届出は、次の両方に当てはまる場合に発注者が工事着手7日前までに都道府県知事に届け出なければなりません。未提出は20万円以下の罰金の対象です。
コンクリート
コンクリートと鉄からなる建設資材
木材
アスファルト・コンクリート
解体工事:床面積の合計80㎡以上
新築・増築工事:床面積の合計500㎡以上
リフォーム工事等:請負代金1億円以上
土木工事等:請負代金500万円以上
届出は施主が行うこととされていますが、通常は解体工事業者に委託して手続きしてもらいます。
ライフライン停止・撤去の段取り
解体工事が決まったら段取り良くライフラインを停止・撤去することで、更地渡しをスムーズに進行できます。ライフラインの停止手続きは施主が行います。
解体工事の開始前までに撤去しなければならないライフラインは、以下になります。
- ガス
- 電気
- 電話
- インターネットなど
特にガスと電気は、供給されたまま解体工事をすると火事や爆発のおそれがあるため、確実に撤去しなければなりません。
各事業者には「解体工事のため撤去したい」という旨を必ず伝え、着工前までに撤去が完了するように手配しましょう。
「更地渡し」と「現況渡し」の違い

不動産の売買契約の条件は「更地渡し」のほか「現況渡し」というものがあります。どちらも売買契約の締結日には古家が存在していますが、どのような違いがあるのでしょうか。
現況渡し=何も撤去しない
現況渡しは、建物をそのままにして引き渡す売買条件を指します。リフォームや解体、残置物の撤去を一切行わず、そのまま引き渡す契約です。
売主は解体費用やリフォーム費用を負担することなく空き家を売ることができます。デメリットは解体・リフォーム費用は買主が負担することになるので、買い手がつきにくいという点です。
ただし、買取業者を利用する場合は現況渡しでもスムーズに売却できる場合があります。
エリア内で営業している買取業者のウェブサイトで会社概要やサービス内容をチェックしたうえで査定してもらうと良いでしょう。ただし買取価格が仲介に比べて安くなる点には注意が必要です。
更地渡し=売主負担だが売却しやすい
更地渡しは、売買契約後に建物を解体し更地にして引き渡す売買条件です。売主には解体する手間と費用が発生しますが、売却がスムーズに進みやすいという特徴があります。
買主にとっても購入後すぐに土地活用を始められるうえ、土地の状態を確認しやすく資金計画も立てやすい、魅力的な選択肢です。
更地渡しの場合は、どこまで撤去しどこまで土地を整えるのかについて取り決めをしっかりと行っておくことで、トラブルなく取引が進みます。
更地渡しが向いているケース

では、更地渡しが向いているのはどのような場合なのでしょうか。
以下に当てはまる場合は更地渡しがお得な場合があります。更地渡しにするか、現況渡しにするか迷っている場合は参考にしてください。
税金の控除を利用したい
譲渡所得の「3,000万円特別控除」の譲渡費用に解体費用を組み込みたい場合は、更地渡しが向いています。
家を売却した際に生じた利益は譲渡所得として課税対象となります。譲渡所得は売却価格から必要経費を差し引いた額のことです。
譲渡所得=売却価格−(取得費+譲渡費用)
譲渡費用には解体費用も含まれるため、大きな節税効果を見込めます。
特別控除を受けるには、自分が住んでいる家屋である、住まなくなってから3年以内の家屋である、親族等への譲渡ではない、などいくつかの条件があります。
建物が老朽化している
建物が老朽化している場合は、解体して更地渡しした方が売却しやすくなります。老朽化した家屋付きの土地は、買主が解体またはリフォームする手間と費用を嫌い、買い手が見つかりにくいのが現実です。
建物に雨漏りやシロアリ被害が発生していることを知らずに売却した場合、契約内容によっては修繕費用を負担しなければならないケースもあるでしょう。
更地渡しが良いか現況渡しが良いか判断が難しい場合は、不動産会社に相談したり査定を依頼したりして決めるとよいでしょう。
すぐに売却したい
土地の維持管理コストの負担軽減や、現金化を急いでいる、相続トラブルの回避など、土地の売却を急いでいる場合は建物を解体して売却した方が買い手が付きやすくなります。
更地は自由度が高いので、特に新築を予定している人が検討対象にしてくれる可能性が高まるでしょう。
ただし、解体工事は高額なため、立地や周辺環境によって確実に売却できるかどうかは慎重に見極める必要があります。
更地渡しに関するよくある質問

更地渡しは、買主との契約により個別の条件が変わります。そのため、分かりにくい点も多いでしょう。ここでは、更地渡しに関して、よくある質問とその回答を紹介します。
更地渡しで井戸は埋める?
更地渡しの場合、一般的に井戸は埋め戻して引き渡します。井戸を残すと買い手が見つかりにくく、地盤沈下のリスクもあるため、売主の責任で埋め戻します。
井戸は埋め戻しても「心理的瑕疵」として告知義務が残ります。理由は風水、信仰などさまざまですが心理的抵抗を与えやすいため、買主に対しての説明が必要です。
中には井戸を利用したいという購入希望者もいるので、井戸については買主の希望を聞いた上で契約書に記載して引き渡しましょう。
更地と整地の違いとは?
更地と整地の違いは、建物の解体後に土地を平らにならしているかどうかです。
更地とは建物や構造物が存在せず、かつ賃借権や地上権などの使用収益を制約する権利が設定されていない土地を指します。
また、市街化区域内であっても耕作されていない農地や樹木が生えていない山林は、宅地には該当しないので更地ではありません。
整地は、更地になった土地を重機で転圧して整えた状態のことです。整地された土地は見た目がきれいになるため、買主に好印象を与えます。整地することで土地活用の幅が広がるため、売却しやすくなります。
地中埋設物が出たら売主負担になる?
更地渡しで引き渡し後に地中埋設物が発覚した場合、売主の「契約不適合責任」となり、売主負担で撤去することになる可能性があります。
売主が地中埋設物の存在を知っていたにもかかわらず、買主に告知しないまま売買が成立した場合、売主は契約不適合責任に基づく告知義務違反により、撤去費用を請求される場合もあるでしょう。
一方、売主が地中埋設物の存在を知らなかった場合に、契約不適合責任を負わなければならないかどうかは契約の内容によって変わります。そのため、契約書には地中埋設物の取り扱いについて明記しておく必要があります。
まとめ

解体更地渡しは、売主が解体費用を一括で支払わなければならないなどの負担がある一方で、売却しやすいため、スムーズに土地を手放したい場合に向いています。
相続した土地の売却や賃貸など、土地活用で悩んでいたり、放置された空き家をできるだけお得に手放したい場合は、複数の不動産業者に相談して条件に合った方法で活用するようにしましょう。

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