
透水性コンクリート(ポーラスコンクリート)は、内部に空隙(くうげき)を持つことで雨水を地中に還元できる特殊なコンクリートで、集中豪雨による冠水対策や、ヒートアイランド対策として注目されています。
自然環境に優しく機能性がある反面、いくつか注意しておかなければならない点があります。そこで今回は、透水性コンクリートの施工で後悔しないために押さえておきたいデメリットについて解説します。
透水性コンクリートのデメリットは?

透水性コンクリートのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここではよく言われるデメリットを整理しているので、施工を検討している場合は確認しておきましょう。
耐久性が低くひび割れリスクがある
透水性コンクリートの耐久性は土間コンクリートと同等ですが、粒が粗いため、駐車場のような荷重のかかる場所では耐用年数が劣ります。元々コンクリートはひび割れを起こしやすい素材ですが、重量による負担でひび割れるリスクには注意が必要です。
中型車程度までの車を駐車するのであれば、下地を施工する際に車輪が乗る部分を補強して対応できますが、大型車の駐車や頻繁に車両が出入りする場合は、荷重がかかる部分に通常のコンクリートで舗装するなどの工夫が必要です。
目詰まりのリスクがある
透水性コンクリートは目詰まりを起こすと透水性が損なわれる点に注意が必要です。長期間使用していると、砂や土が隙間に入り込み、目詰まりを起こします。
ただ、透水性コンクリートは無機系の材料のため、目詰まりしても洗浄すれば透水性は回復します。一方、透水性アスファルトは樹脂系の材料で構成されているため、夏の暑さで軟化し、砂塵が混ざって空隙をつぶすと元に戻りません。
透水性コンクリートは目詰まりが解消されれば透水性が回復するので、定期的に洗浄することをおすすめします。
定期的なメンテナンスが前提になる
上でもご紹介したように、透水性コンクリートの機能を維持させるには、定期的なメンテナンスが不可欠です。とはいえメンテナンスはごく簡単で、高圧洗浄機で洗浄すれば元の透水性に戻ります。
軽度の目詰まりなら家庭用の高圧洗浄機でもきれいになるので、自宅にある場合は定期的に洗浄しておくと排水機能を維持できるでしょう。
長期間目詰まりした重度な状態の場合は、専門業者に清掃してもらうことをおすすめします。
施工コストが高くなる
施工単価が高い点も、透水性コンクリートのデメリットの一つです。施工単価は通常のコンクリートの1.3~1.5倍が目安とされており、機能性と価格面を照らし合わせて検討する必要があります。
工事費用は施工面積が狭くなるほど割高になりやすく、一般住宅用に比べて業務用の方が耐久性を高める必要があることから、単価が高くなるのが一般的です。
費用は施工条件によって幅が出るので、施工を依頼する場合は現地調査をしたうえで見積もりを出してもらうようにしてください。
施工品質による性能差が大きい
透水性コンクリートは施工に高い技術力が必要です。一般的なコンクリートは流動体のため、生コンの表面を金ゴテでならせば均一に整います。
一方、透水性コンクリートは粒の集合体のため、機械で転圧しても均一にするのが難しく、凹凸ができないように細心の注意を払わなければなりません。
均一で適切な転圧には熟練の技術が必要です。施工技術が機能面に影響を及ぼすため、経験豊富な業者に依頼するようにしましょう。
凍結・融解による劣化リスクがある
寒冷地では透水性コンクリートへの凍結防止剤の使用や凍上リスクに注意してください。
コンクリートでよく言われるのが凍結・融解による劣化ですが、透水性コンクリートはあまり影響がないと言われています。
しかし、凍結防止剤を散布するような寒冷地では、コンクリートの隙間に凍結防止剤の成分が浸透し、舗装が劣化する可能性があるため、凍結防止剤で劣化しにくいセメントを用いるなどの対策が必要です。
凍上は地中の水分が凍結して体積が大きくなり、下から透水性コンクリートを押し上げてしまう現象です。
凍上すると表面が波打つなど、美観が悪くなってしまうため、基礎を施工する際に対策しておかなければなりません。
透水性コンクリートで後悔しやすい施工場所・条件

透水性コンクリートには向いている場所と避けた方が良い場所があります。
ここでは、透水性コンクリートの設置に向かない場所を挙げるので、設置を予定している場合は業者に相談してほかの素材も選択肢に入れましょう。
砂埃や土が流れ込みやすい立地
透水性コンクリートは砂埃や土が流れ込みやすい場所への導入は避けるか、施工時に対策が必要です。
透水性コンクリートは目詰まりすると透水性能が低下してしまいます。もちろん、高圧洗浄すれば解決しますが、目詰まりしやすい環境ではメンテナンスの頻度が高くなり、手間がかかるでしょう。
庭土や植栽などの土が流れやすい環境に設置したい場合は、境界部分にブロックなどを入れて流入を防ぎます。
落ち葉・樹木が多い外構環境
透水性コンクリートは表面に凹凸があるため、落ち葉の掃除が大変です。隙間に入り込むと取りにくく、ブロワーを使っても簡単に取り除けないことがあります。
とくに針葉樹の葉は細かいため、詰まると目詰まりにつながることがあるので注意しなければなりません。
落葉樹が近くにある環境では、秋に大量の落ち葉が地面に溜まってしまいます。掃除が負担になるようであれば表面がなめらかな土間コンクリートを選んだ方がよいでしょう。
駐車場・車の切り返しが多い場所
透水性コンクリートは通常の土間コンクリートと同じくらいの強度があるので、乗用車が乗り入れても問題ありません。
しかし、車の切り返しが多い場所では表面の剥がれや欠けが起こる場合があります。粒が外れた場合は、専用の補修材で部分補修が可能ですが、気になる場合は、耐久性の高い床材を施工した方が安心です。
なお、透水性コンクリートは土間コンクリートと同様にタイヤ痕が付きます。しかし表面がざらざらとした仕上げのため、土間コンに比べてタイヤ痕が目立ちにくく美観を保ちやすいといえます。
凍結・融解が繰り返される寒冷地
透水性コンクリートは、凍結・融解による素材そのものへの影響は少ないと言われていますが、地中の凍結による凍上には注意が必要です。凍上とは土の中の水分が凍結し、氷の層を形成して地盤を持ち上げる現象です。
寒冷地では凍上により舗装面が隆起する可能性があるため、気になる場合は避けた方がよいでしょう。
とくに北側の駐車場など、凍結しやすい条件下に設置する場合は、あらかじめ外構業者と相談して、舗装材を選ぶことをおすすめします。
そもそも透水性コンクリートとは?

そもそも、透水性コンクリートとはどのようなものなのでしょうか。ここでは透水性コンクリートの特徴や普通のコンクリートとの違いについて解説するので、施工を検討している場所に合っているかチェックしてみましょう。
雨水地面へ通す特殊なコンクリート
透水性コンクリートは内部に無数の空隙を持つ特殊なコンクリートのことで、雨水を表面にとどまらせずに地中に浸透させる機能を持っています。代表的な製品にドライテック、オコシコン、オワコンなどがあります。
通常のコンクリートは、セメントに骨材と砂を混ぜて作る防水性の高い素材です。水を遮断する性質により水たまりができやすいため、駐車場など外構に施工する場合は水勾配をつけて排水します。
一方透水性コンクリートは、セメントに粗骨材を混ぜて作り、砂は加えません。内部が多孔質で水が浸透しやすいので、勾配は必要ありません。
活用されているシーン
透水性コンクリートが施工されているのは以下のような場所です。
- 公園
- 歩道
- サイクリングロード
- 学校
- 公共施設
- 商業施設
- 住宅のアプローチ、駐輪場
都市型水害対策や、ヒートアイランド対策に役立つため、環境に配慮した施設や公園などで広く採用されています。
水たまりができにくく雨の日も安心して歩行でき、コンクリートに比べて涼しい庭を実現できるので、住宅の外構にも施工されています。
透水性コンクリートが注目されている理由

透水性コンクリートは内部に多くの空隙が存在していることにより、地球環境への負担を軽減しながら景観の整備にも貢献できる、近年関心を集めている舗装材です。
以下に注目されている具体的な理由を紹介します。
ゲリラ豪雨・都市型水害の増加
透水性コンクリートは、その高い透水性で、集中豪雨やゲリラ豪雨等の際に雨水を浸透させる機能があり、都市型災害の発生を低減する素材として注目されています。
日本の都市部は道路がアスファルトやコンクリートで整備されているのが特徴です。雨が降ると雨水は道路に染み込まず、道路脇につくられた側溝などの排水設備に流れ込み、川へと向かいます。
しかし、短時間に多くの雨が降ると処理能力を超えてしまい、道路が冠水してしまうのです。これが、都市型水害の仕組みです。
透水性コンクリートは雨水を地中へ浸透させ、都市型水害のリスクを低減させる効果があり、歩道や公共施設などで採用が広がっています。
ヒートアイランド対策
透水性コンクリートは、保水した水分の気化熱により周囲の温度上昇を抑制して、ヒートアイランド現象の軽減にも効果が期待できます。
アスファルトやコンクリートは夏の太陽光により表面温度が上昇し、気温を上昇させます。さらに、日中に地面に蓄えられた熱は夜間になっても保持され、大気へ放出されるため、熱帯夜の原因となるのです。
内部に水が浸透し熱がこもりにくく、気化熱により地表温度を下げる機能を持った透水性コンクリートは暑さの厳しい都市部の舗装材として期待されています。
雨天時の滑りにくさ・歩行の安全性
透水性コンクリートは水たまりができにくく水はけが良いうえ、表面がざらざらしているため、路面が濡れていても滑りにくく、安心して歩行できます。
そのため、小さなお子様や高齢者の転倒リスクを減らしたい住まいに、向いているといえるでしょう。ベビーカーや車いすでの走行を想定している場合も、路面が滑りすぎないため安心です。
さらに雑草が生えにくいので、湿気やカビ、害虫の発生を抑制し、外構を快適な環境にする効果も期待できます。
環境への配慮
透水性コンクリートは、集中豪雨やヒートアイランド現象に対応する機能を備えているため、環境へ配慮した外構を作りたいと考えている人におすすめです。
透水性コンクリートから浸透した雨水は地下水として蓄えられ、地下水脈を涵養(かんよう)して地域の水循環システムを改善します。また、表面温度の上昇を抑え、打ち水したときのような冷却効果をもたらす点も大きな特徴です。
公共施設のように環境に配慮した素材を積極的に取り入れている場所や、自宅の外構に環境に優しい素材を取り入れたいと考えている人に採用されています。
透水性コンクリート使用が向いているケース

住宅のエクステリアに透水性コンクリートを施工する場合、どのような条件が向いているのでしょうか。
ここでは、とくにおすすめの場所を紹介するので、外構の床材に迷っている場合は参考にしてください。
住宅のアプローチ
水たまりができにくく滑りにくい透水性コンクリートは、住宅のアプローチにぴったりです。
アプローチに水たまりができると靴や洋服を濡らしてしまいますが、透水性コンクリートは雨水を地面に染み込ませるため、水たまりができにくく、雨でも快適なアプローチを実現できます。
玄関アプローチは住宅を出入りする際に必ず通る場所です。住民はもちろん、住まいに訪問した人も通行します。人が通る場所の床面が滑りやすいと転倒リスクがあり、危険です。そのため、滑りにくい素材を使用することが原則です。
透水性コンクリートは表面がざらざらしており、滑りにくく安全といえます。
軽自動車用の駐車場
駐車場の透水性コンクリートは、軽自動車用であれば、強度の心配をすることなく利用できます。
駐車場の水はけが悪いと、雨の日の乗り降りが不便になったり、車が汚れたりしてしまいます。水たまりができやすい環境では湿気により害虫が発生する、見た目が悪くなる、などのトラブルが発生するリスクも否定できません。
通常の駐車場であれば、水勾配を設けて排水を促しますが、透水性コンクリートであれば水勾配をつけずに水はけのよい駐車場に施工できます。
透水性コンクリートの代替舗装との比較

以下に、外構でよく使われる舗装材の特徴や注意点を紹介します。外構素材は条件によって最適なものが異なるため、透水性コンクリートと比較して、どちらが最適か検討してください。
普通コンクリート(土間コン)
土間コンクリートは、多くの住宅の外構に使われている素材です。構造上、施工の際にワイヤーメッシュを敷設しなければならないため、施工期間が透水性コンクリートに比べて長い点がデメリットです。
透水性がないため、水勾配を設けなければならず、勾配が足りないと水たまりができやすくなってしまいます。
ただし、駐車場にカーポートを設置するなどして、排水性に問題がない場合は透水性コンクリートをわざわざ敷設する必要はありません。
インターロッキング・透水性舗装
インターロッキングは、ブロックを組み合わせ、目地に砂を入れて固定する、公園や遊歩道などで活用されている透水性舗装材です。水はけが良く、水たまりができにくい点で透水性コンクリートと同様のメリットがあります。
インターロッキングの特徴は、部分補修が可能な点です。劣化した場合は該当箇所のブロックを交換すれば補修が完了します。ただ、不陸が起こりやすいため、床面の凹凸が気になる場合は透水性コンクリートがおすすめです。
砂利・砕石舗装の方が適しているケース
砂利は、防水シートを敷いた地面の上に砂利や砕石を撒けば完成するため、コストを抑えて舗装ができます。種類と色が豊富にあり、選び方一つで住まい全体をおしゃれに演出できます。
しかし、砂利は駐車場に使用すると石が飛んで車を傷つけやすい点や、経年ですり減るので定期的に追加しなければならない点がデメリットです。
反対に、上を歩くとじゃりじゃりと音がするため防犯性に優れています。不審者の侵入口になりやすい場所などは、ほかの工法よりも適しています。
透水性コンクリートに関するよくある質問

ここでは、透水性コンクリートの施工に関するよくある質問とその回答を紹介します。透水性コンクリートは施工費用が高額なので、あらかじめ疑問を解消しておき、納得したうえで施工を依頼しましょう。
透水性コンクリートは地盤に影響する?
透水性コンクリートは、雨水を地中へ浸透させるため、地下水の枯渇を防ぎ、地盤沈下を抑制する効果が期待できます。
現代では都市開発により地中への雨水の浸透が阻害され、地下水の枯渇が問題視されています。透水性コンクリートにすることにより地盤へ水を適切に流す効果があり、環境を保持するのに効果的です。
他方、寒冷地での土壌の凍結で凍上が起こると、地盤の軟弱化を招いて舗装が壊れてしまうケースがあります。寒冷地で設置を検討している場合は、リスクについて外構工事業者にしっかり相談しておくと失敗を防げるはずです。
透水性コンクリートはホームセンターで購入できる?
ホームセンターやネットショップでも一定の性能を備えた透水性コンクリートを購入できます。DIY向けに作られた製品も存在するので、床面舗装にチャレンジしたい場合はそのようなタイプを選ぶとよいでしょう。
とはいえ、市販品は強度と耐久性は業務用に劣ることは留意しておきましょう。透水性コンクリートは業務用の材料を使い、プロの知識と技術で施工してはじめて快適な床面に仕上がります。不安な場合は無理せず、業者に施工を依頼しましょう。
何年くらい透水性能は維持できる?
透水性コンクリートの耐用年数は10~15年とされています。適切な管理をすればそれ以上の期間もつとも言われているため、定期的な高圧洗浄でメンテナンスを継続することが大切です。
透水性能の耐久性はあくまでも目安です。使用状況や用途、環境、メンテナンスの方法により幅が出ます。新しい技術のため、長期的な耐久性についてはデータが蓄積されるのを待たなければならない点は理解しておきましょう。
まとめ

透水性コンクリートは近年の都市部の環境に配慮した構造が魅力ですが、注意点もあるため、デメリットを理解したうえで設置を検討しましょう。
外構設備は機能、防犯対策、メンテナンスなど、さまざまな角度から最適な素材を選ぶ必要があります。床材一つ選ぶ際も、色々な素材を選択肢に入れておき、住まいに合ったものを選ぶと安心です。

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