
リビング前のカースペースに屋根のある駐車場を設置したいという場合には、日当たりの変化に注意が必要です。しっかりシミュレーションして設置を計画しないと、リビングが暗くなったり寒くなったりする問題が発生します。
今回は、カーポートをリビング前に設置すると室内の日当たりにどのように影響するかについてや、施工の際のポイントを紹介します。
カーポートをリビング前に設置する際の日当たりの影響

まずは、カーポートをリビング前のスペースに設置する場合の日照の影響をさまざまな角度で考えていきたいと思います。設置後に住まいの環境にどのような変化があるか、確認しながら読み進めてください。
日射角度と影の関係
カーポートを設置する際は太陽の角度と影の影響について理解していると、リビングが日陰になって暗くなることを防げます。
日中は太陽が高く上るため、カーポートの屋根の真下付近に日陰ができます。そのため日中はカーポート内の車を直射日光から効果的に保護できる時間帯です。
夕方は太陽が傾き、影が長く伸びます。そのため、リビングに大きく影ができて暗くなるほか、隣家に影の影響を与えてしまう可能性もあるので注意が必要です。
南・東・西向きリビングで影の影響が異なる
カーポートをどの方角に設置するかでもリビングの明るさに影響が出るため、新築の場合はリビングと駐車場のレイアウトを十分考える必要があります。
南側リビング前にカーポートを設置すると、窓から入る光が一日を通してカーポートによって遮られてしまいます。
北側にカーポートを設置する場合はリビングに日陰ができる心配はありませんが、隣家の日当たりに悪影響を与える可能性があるため、十分配慮しなければなりません。
東側リビング前のカーポートは午前中の光を遮り、午後は光が入りにくいため、光を取り入れるには窓の位置に工夫が必要です。
西側のカーポートは夕方は暗くなりがちですが、夏の西日対策になります。西側の部屋の暑さ対策にも効果的です。
外壁からカーポート屋根先端までの目安距離
リビングの日当たりを確保するためには、住宅からカーポートまでの屋根の距離を1~2メートル離しましょう。リビングとの距離を長めにとると、日当たりの悪さがある程度解消されます。
距離をとるのが難しい場合や方角の都合で日陰ができてしまう場合は、ポリカーボネートなど光を通す素材を屋根材に採用する、カーポートを朝や夕方などの低い角度からの日差しを取り込みやすい向きに設置するなどして工夫しましょう。
カーポートの高さ・屋根勾配がが影に与える影響
カーポートの屋根を高くすると日光が入り込みやすくなり、1階部分の日当たりがよくなります。空間が広くなるので開放的な雰囲気も得られるでしょう。
しかし一方で、雨や雪が入り込みやすくなり、カーポートに求める機能が低減する可能性には注意が必要です。
また、逆勾配(後ろ下がり)のカーポートは建物側に柱があり屋根が手前よりも低いため、それほど影響は大きくないものの、やや日差しが入り込みにくい構造です。気になる場合は前下がりの通常勾配のカーポートを選ぶとよいでしょう。
屋根形状(フラット・弧状)による採光の違い
ポリカーボネートのカーポートの屋根の形状はフラット型と弧状の2つに分かれますが、採光性には大きな違いはありません。
しかし、ポリカーボネートの構造によって採光性に違いがあります。ポリカーボネートには平板、中空板、波板の3つの形状があり、一般的なカーポートやテラス屋根には平板ポリカーボネートが使用されています。平板は透明感があり光をよく通すうえ丈夫な点が特徴です。
中空板は板と板の間に空洞がある段ボールのような形状になっているタイプです。空洞により断熱性と保湿性に優れているため、温室やサンルームの素材として使用されています。
波板は断面が波打っており、平板よりも強度が高いという点がメリットです。加工しやすいため、DIYでも使用されます。
屋根材・色・透過率で「明るさを確保」する方法
カーポートに使用される素材で透過性のあるものにポリカーボネートとアクリルがあります。アクリルの方が透過率が高く光を多く取り込みますが、ポリカーボネートはアクリルの50倍もの強度があり衝撃に強いため、最近のカーポート屋根はポリカーボネートが主流です。
ポリカーボネートにも通常のポリカーボネートと熱線遮断ポリカーボネートの2種類があり、熱線遮断タイプは通常タイプに比べて、直射日光の下では4~5度程度涼しくなるとされています。
以前は熱線遮断は色がブルーしかなく、カーポートの下が若干暗くなっていましたが、最近では半透明のすりガラス調の色も登場し、採光性が上がっています。
後悔しないカーポート施工前の確認ポイント

ここではカーポートを設置する前に確認すべきポイントを挙げています。カーポートは一度施工すると移動が困難なため、外構全体の設計を十分検討したうえで決断するようにしましょう。
導線・窓位置・植栽との兼ね合い
カーポートの位置を決める際は、動線、窓との位置関係、植栽の取り入れ方を考慮すると失敗を防げます。
カーポートで最も大切なことは動線です。車の出し入れはもちろん、人の動線にも配慮が必要です。雨の日に買い物の荷物を持って玄関まで移動するなど、実際に車を使う際の動作をイメージして動線を確認しましょう。
さらに、リビングへの採光を考慮するなら、掃き出し窓の正面にカーポートを設置しないようにします。
おしゃれな空間づくりのために、カーポート周辺に植栽を植えるのも一つの方法です。縦方向に伸びる植物を植えれば、車の出入りを邪魔することなくナチュラルな雰囲気を外構にプラスできます。
冬季のシミュレーション
リビングの日当たりが気になる場合は、とくに冬季の影の大きさをシミュレーションすることが大切です。冬季は太陽が低いため、影が長く伸びます。そのため、ほかの季節ではカーポートの影の影響は少なくても冬季は日陰になり、日当たりが悪くなる可能性を否定できません。
近年では新築の際に日当たりシミュレーションを活用して日照条件を確認するケースが増えており、外構工事でもシミュレーションできる場合があります。
シミュレーションではカーポートだけでなく、フェンスなどのほかの外構設備の日陰も確認できるので、見積りの機会にシミュレーションできるか業者に確認してみるとよいでしょう。
カーポートの設置で日当たりが悪くなる事例

住宅の窓の前にカーポートを設置して日当たりが悪くなると、どのような影響があるのでしょうか。以下に挙げるデメリットを知っておき、カーポートの種類や設置場所を工夫しましょう。
リビングのすぐそばに設置
カーポートをリビングに隣接させたことでリビングが暗くなり、快適性が低下するおそれがあります。場合によっては日中でも照明が必要になり、電気代に影響が出ることもあるでしょう。
日陰ができると室内が暗くなるだけでなく、冬場の寒さや湿気・カビのリスクを増大させます。また、リビングの吐き出し窓あたりの見通しが悪くなると、防犯リスクの高まりも見逃せません。
このように、リビング前のカーポートの設置により、住む人が最も多くの時間を過ごすリビングの心地よさが失われる可能性が高まります。
物干し場が陰って洗濯物が乾かない
洗濯物干し場がカーポートにより日陰になってしまい、洗濯物が乾きにくくなってしまった、という事例もあります。
陰干しのデメリットは、乾きにくい、嫌なニオイがつきやすいなどです。日頃から乾燥機を使用している場合はあまり影響はないかもしれませんが、洗濯物を外干ししたいという場合には影響が大きいでしょう。また、布団を干したい場合も日陰で干すことになり、思うように干せません。
隣地に敷地内に日陰を作ってしまう
カーポートを設置したことで隣家の敷地に日陰を作ってしまい、トラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。
隣家の室内にまで影響を及ぼさなくても、庭を暗くして植栽の生育に影響を及ぼしたり隣家のエクステリアが暗い印象になってしまう可能性があります。
設置工事中に隣家から中止を求められるおそれもあるので、事前にカーポートの設置を計画していること、日陰や雨水の影響はどれくらいあるかなどを丁寧に説明し、了承を得たうえで設置するとスムーズです。
日当たりを損なわないカーポート設置のポイント

では、リビングの日当たりを確保しながらカーポートを設置するにはどのようにすればよいのでしょうか。
以下に日当たりを意識した設置のコツを紹介するので、ポイントを押さえて快適なカースペースを実現しましょう。
車種に合わせたサイズのカーポートを選ぶ
日当たりを意識する場合は大きすぎるカーポートではなく、車の大きさに合ったカーポートのサイズを選択するようにしましょう。
とはいえ、車のサイズギリギリのカーポートでは車が雨に濡れやすかったり、車の乗り降りがスムーズにできずにストレスになったりします。
ドアを開けた状態でスペースに余裕を持たせるには車の全幅+1,000mmが適切とされてるので、カーポートの幅は、以下程度のサイズを選ぶと安心です。
- 軽自動車:約2,400mm
- 小型車以上:約2,700~3,000mm
カーポートは車の高さに合わせてサイズを選ぶ必要もあるので、メーカーのカタログをチェックしたり外構工事業者の営業担当者にアドバイスを求めるなどして、適切なサイズを選びましょう。
屋根材は透過率の高いポリカーボネート製を選ぶ
室内や庭の明るさをキープするためには、カーポートの屋根材はポリカーボネート製がおすすめです。ポリカーボネート製は光を透過しつつ紫外線をカットし、熱も通しにくいため、車の塗装の劣化や車内が熱くなることを防ぎます。
ポリカーボネートパネルにはカラーバリエーションが多くあり、明るさを重視したいならクリアがおすすめです。明るさと同時に熱線をカットしたいなら熱線遮断ポリカーボネートのクリアマットという色が最適でしょう。
注意点はポリカーボネート屋根は積雪の多い地域には向いていない点です。豪雪地帯では屋根材にスチール折板を選択したほうが良いですが、スチール折板は透過性がないため日陰ができやすくなります。
梁延長タイプで窓前に屋根をかけない
カーポートの梁延長を希望する場合は、屋根がある部分が窓にかからないようにすることが大切です。
カーポートの梁延長とは、カーポートの梁だけを長く伸ばすオプション加工のことです。カーポートの柱が離れることで道路からの車の出し入れがスムーズになったり、エクステリアにデザイン性が加わったりします。
窓に屋根がかかると室内に光が入りにくくなってしまい、部屋を暗くしてしまいます。また、カーポートの梁や柱が光を遮ることもあるため、梁の延長の仕方などを十分検討したうえで決めることが大切です。
カーポート設置に関するよくある質問

ここではカーポートを設置する際によくある質問とその回答を紹介します。設置を後悔しないためにも事前に疑問を解消しておき、外構工事業者と十分にプランを話し合ったうえで施工するようにしましょう。
後から設置する場合どんな事前チェックが必要?
カーポートを後付けする場合、事前にいくつかのチェックが必要です。とくに建ぺい率の確認は重要なので怠らないようにしましょう。カーポートは建築物に該当するため、住宅とカーポートの建築面積の合計が建ぺい率の上限を超える場合は後付けができません。
ただし、以下の条件を満たす場合は、一部を建築面積から排除できます。
- 柱の間隔が2m以上
- 天井の高さが2.1m以上
- 外壁のない部分が連続で4m以上
- 地階を除く階数が1階
そのほか、見通しが悪くなる部分にはライトを設置するなどの防犯への対応も必要です。カーポートを設置する際のチェックは外構工事業者に現地調査を依頼し、専門家の目で見てもらいましょう。
玄関前にカーポートを設置するのはよくない?
玄関前にカーポートを設置すると玄関までの動線がよくなるほか、玄関前の目隠し効果が期待できます。しかし一方で、玄関の日当たりや風通しが悪くなったり、玄関ドアが隠れることでエクステリアのデザイン性が低下する可能性には注意が必要です。
特に日当たりや風通しが悪くなるとカビや害虫発生の原因となるので、玄関前にカーポートを設置したい場合は日照と風向きをしっかりシミュレーションしておくことをおすすめします。
まとめ

カーポートの設置は日当たりに大きな影響を及ぼすため、事前に設置後の状態をイメージしておくことが大切です。カーポートの種類により日当たりも変わるので、工事費用や本体価格だけでなく、住まいに合ったカーポート選びをしましょう。
設置を検討している場合は、外構工事業者に現地調査をしてもらい、希望を伝えたうえで適切な製品を提案してもらうと失敗を防げるはずです。


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