
カーポートの基礎は安全性を保つために最も重要な部分です。基礎工事を手抜きされると、不具合が発生するリスクが高まります。そのため、依頼主も手抜き工事が行われないよう、注意しなければなりません。
今回はカーポートの基礎工事に手抜きが発生する理由や、手抜き工事で起こりうるリスク、依頼主ができる対策方法について解説します。
基礎工事の手抜きが発生する理由

カーポートの基礎工事で手抜きが発生する理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
手抜き工事は悪徳業者が行う場合もあれば、依頼主が原因で起こることもあります。主な原因を把握して、手抜き工事を未然に防ぎましょう。
業者が収益を重視している
残念ながら外構工事業者のなかには悪徳業者が潜んでいます。悪徳業者は不当に高い金額で工事を行ったり、必要のないオプションを無理につけたり、手抜き工事を行ったりしてコストを減らそうとするのが一般的です。
利益のみを追及する業者の場合、見積書の金額は相場通りや相場よりも安い一方で、作業を省略したり、部材のコストを大幅に下げたりします。
カーポートの場合、基礎が出来上がってしまえば地中は確認できません。このような部分を手抜きし、不当に利益を得ようとするのです。
依頼主が過剰に安さを求めている
依頼主が過剰に値下げを要求したり、低い予算の工事を依頼したりすると、業者がその希望に応えようとして、工事に必要な工程を省略してしまうケースがあります。
外構工事は材料費と人件費が主なコストです。これらを削減しようとし、部材に標準仕様のものを使わない、人件費を削減するために人数や日数を減らすなどすると、結果的に手抜き工事になり、施工不良が発生する原因となります。
工期が短すぎる
施工期間があまりにも短い場合、手抜き工事が行われている可能性があります。カーポートの施工期間は約2〜7日間かかります。一般的な片側支持タイプ・1台用のカーポートの場合、工期は2日間程度が目安です。
人件費は通常1日あたりで計算されるため、工期を短くして人件費を抑えようとする場合があります。
また、依頼主の強い要望により早く完了させなければならない場合もあるでしょう。いずれにせよ工期を短くするために必要な作業を省略してしまい、カーポートの安全性に影響を及ぼしてしまいます。
カーポートの手抜き工事のリスク

手抜き工事が行われると、カーポートにどのような影響が出るのでしょうか。手抜き工事は美観が悪くなるだけでなく安全性にも大きな影響が出る可能性もあるので、起こりうるリスクを知っておきましょう。
コンクリートにひびが入り景観が損なわれる
カーポートの基礎コンクリートは手抜き工事によりヒビが入り、見た目が悪くなることがあります。ひび割れは乾燥収縮や経年劣化、地震によるもののほか、施工不良も原因の一つです。
材料の配合ミスや材料がきちんと混ざっていないと、コンクリートはひび割れを起こすことがあります。経年劣化によるひび割れが施工から5~8年後に起こりやすいのに対し、施工不良によるひび割れは施工後1~3年で現れることが多いので、完成後間もなくひび割れが起こったら施工不良を疑いましょう。
ひび割れは美観を損ねるだけでなく、放置しているとひびが大きくなり、カーポートの構造に影響を与えるため、早めの補修が必要です。
強風や地震の揺れなどに耐えられない
手抜き工事により、カーポートが台風や地震に耐えられない構造になっているケースもあるので注意が必要です。基礎のコンクリートは品質の悪い材料を使ったり配合比が適切でなかったりすると、強度低下のリスクが高まります。
さらに、コンクリートは水とセメントの化学反応により硬化するため、施工時に適切な温度と湿度で養生しなければなりません。乾燥させすぎたり、反対に水で湿らせ過ぎると強度不足の原因になります。
そのほか、カーポートの骨組みのビスの締め忘れやきちんと締めていないことが原因で、強風でパネルや梁が飛ばされる危険性もあります。
保証対象外になる恐れがある
外構工事は原則として業者によって一定期間の保証が設けられていますが、手抜き工事による不具合が発生した場合、保証期間内であっても業者が保証対象外を主張するケースがあります。
トラブルを避けるためには、契約時に保証期間や保証内容、保証対象外となるケースについて業者に確認し、書面に残すことが大切です。
施工から数年で劣化が現れた場合は契約書と保証書を確認のうえ、業者に連絡を入れてください。施工不良が強く疑われるにもかかわらず業者が保証に対応してくれない場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
一般的なカーポート工事の流れ

ここではカーポート設置工事の一般的な流れを紹介します。手順を知っていれば手抜き工事が疑われた場合にすぐに気づくことができるので、大まかな流れだけでも把握しておきましょう。
柱用の穴の掘削
まずは柱を差し込むための基礎穴を掘ります。基本的に穴の数は片側支持タイプなら2箇所、両側支持タイプなら4箇所です。カーポートの基礎は強度を維持するために商品ごとに深さや大きさが定められており、それにしたがって掘っていかなければなりません。
地面は複式ショベルで掘っていきますが、岩盤など硬いものがある場合は、はつりハンマーを使用して掘ります。
穴を掘ったときに発生した土やガラは適切に処分する必要があるため、土嚢袋に入れて回収します。
柱の基礎工事
適切な大きさの基礎穴を掘ったら、穴に柱を建て基礎を作る作業です。両側支持カーポートの場合は、まずは片側2本のみ柱を建てます。
必ずしも行うわけではありませんが、柱を安定しやすくするために穴の底にプレートを敷き、その上に柱を建てることもあります。
次はモルタルを流し込む作業です。セメントに水と砂を混ぜてモルタルを作り、穴の中に流し込みます。水平器で柱が垂直に建っているか確認しながら流し、最後に平らになるように流してモルタルが固まるまで待ちます。
柱の設置
モルタルを流した反対側の基礎穴に柱を建て、梁を取り付けて柱どうしをつなぎます。梁の中央に棟木を取り付け、後枠などの部材を取り付けていきます。
骨組みの完成後、いよいよ反対側の柱を固定する作業です。柱の位置を調整し、柱が垂直に建っているか、反対側の柱と平行になっているかを微調整しながら確認していきます。
屋根のパネルを取り付けたあと、再度柱の垂直を確認し、モルタルを流し込み、雨樋を取り付ければ完成です。
カーポートの手抜き工事を防ぐ方法

では、カーポートの手抜き工事を防ぐにはどのようにすればよいのでしょうか。手抜き工事は依頼主が気をつけておくだけでも防げるので、以下のポイントを押さえて工事を依頼するようにしてください。
安すぎる見積には理由を確認する
外構工事は工事費用だけで業者を決めてはいけません。費用が安い場合はなんらかの理由があるはずです。相場と比べて大幅に安い場合はその理由を尋ねましょう。
また、見積書の項目を他社と比較して、何がどれくらい安いのかチェックすることも大切です。
見積書は作業ごとに作業内容と費用が詳細に書かれている必要があります。「工事一式」とだけ見積書に記載している業者は、見積金額は安くてもあとから追加費用を請求する可能性があるため、契約しないようにしてください。
外構工事に関する知識を身につける
外構工事に関する基本的な知識を持っていると、疑わしい点に気づきやすくなります。とはいえ、難しいことを知っている必要はありません。
工事の流れや契約の際にチェックすべきこと、素材や工法などについて大まかに知っているだけでも、業者の説明を理解しやすくなるでしょう。
例えばカーポートの設置を検討している場合は、カーポートの種類やメリットとデメリット、施工の流れなどについて簡単にインターネットで調べておくだけでも業者の提案を理解しやすいはずです。そのうえで分からないことは営業担当者に質問して疑問を解消しておくことをおすすめします。
施工の進行状況を定期的に確認する
施工中は様子をこまめに見に行くことも手抜き工事防止に有効です。施工の様子を実際に見に行き、疑問点をその場で質問することで手抜き工事を未然に防げるほか、業者とのコミュニケーションもスムーズになります。
現場を見学する際は職人に一声かけて、安全な場所から見るようにしましょう。お茶出しや差し入れのついでに見に行けば、自然に施工中の様子を確認できるので、休憩時間を見計らって現場に足を運ぶのも一つの方法です。
信頼できる施工業者を見極める
外構工事で手抜き工事を防ぐための最大のポイントは、優良業者に依頼することです。優良業者を見つけるには相見積りをとって業者を比較しましょう。
まずは現場を施工エリアとしている業者をインターネットで検索します。ウェブサイトを訪問し、会社概要のページで長年地域で活動しているかなどを確認します。施工事例や保証内容をチェックし、気になる業者に問い合わせてみましょう。
問い合わせた業者のなかから3社程度に絞り、希望日時を伝え現地調査と見積りを依頼します。見積書が提示されたら比較検討して1社に決めます。
比較する際は費用の安さだけに注目せず、質問に対して丁寧に回答してくれるか、コミュニケーションはスムーズか、など総合的に見て判断するのがポイントです。
「手抜きかも?」と感じた時に確認したいポイント

手抜き工事は、施主が工事中にこまめにチェックするだけでも事前に防げます。
とくに基礎部分は工事が完了してからは内部が見えないため、施工中に現場を見て、必要に応じて業者に問い合わせることが手抜き防止に効果的です。
基礎寸法が施工基準通りか
カーポートはメーカーが推奨する基礎の大きさがありますが、手抜き工事の場合はこれが守られていないことがあります。基礎が小さいと強風でカーポートが倒壊するおそれがあるため、基礎の大きさが守られているかチェックする必要があります。
まず、設置する製品のカタログやメーカーのウェブサイトでメーカーが推奨する基礎サイズを確認しておきましょう。
工事が始まって明らかに基礎のサイズが小さい場合は、担当者に理由を聞いてみることをおすすめします。
埋込み深さ・コンクリート厚はどうか
基礎の埋め込み深さも同様です。メーカー推奨の深さを守って穴を掘っているか、施工中に確認しておきましょう。
また、カーポート下の床面を土間コンクリートにする場合、床面のコンクリート厚にも注意が必要です。カーポートの土間コンクリートの厚みは普通車なら10〜15cmが目安です。強度を確保するためコンクリートの中にメッシュワイヤーを入れて補強します。
コンクリートの厚みを少なくすればその分使用するコンクリートが少なくなり、業者にとっては経費削減になります。しかし強度が弱いため、工事が終了して数年でひび割れなどが起こって手抜きが発覚することになりかねません。
施工中にコンクリートの厚みが基準を満たしているかしっかりチェックすることが大切です。
カーポート設置工事に関わる注意点

ここでは、カーポートの設置に関して注意しておきたいことを紹介します。手抜き工事業者は法令違反を犯している可能性もあるため、トラブルを避けるためにも知っておきましょう。
建築確認申請が必要になることがある
カーポートは、床面積が10㎡を超える場合や都市計画地域、防火・準防火地域に設置する場合は、原則として建築確認申請が必要です。
建築確認申請を行わないで設置すると、行政指導の対象となる可能性があるため、基準を満たす場合は必ず申請を行わなければなりません。
申請手続きは依頼主が行うのが原則ですが、提出する資料が多く複雑なため、施工業者に代行してもらうケースも珍しくありません。
残土・ガラの処分方法も確認しておく
カーポートの基礎工事で発生する残土やコンクリートガラは、産業廃棄物となるため、業者が責任を持って処分しているか確認が必要です。
外構工事業者が適切に産業廃棄物を処分しているかどうかは、契約書やマニフェストで確認できます。契約書に産業廃棄物処理に関する項目が含まれているか確認しましょう。
また、産業廃棄物の排出事業者はマニフェストを交付しなければなりませんので、業者からマニフェストの控えを受け取れるかの確認も大切です。
残土は廃棄物には分類されず、リサイクル可能な資源として扱われることもあるので、残土の処理方法については「廃棄物はどのように処分されますか?」と業者に質問してください。適切に処理している業者ならスムーズに回答できるはずです。
埋設物の確認も必要になる
カーポートは基礎を設置する場所に埋設物があると、柱の位置を変更したり設置するカーポートの種類を変更したりしなければなりません。
地中埋設物とカーポートの基礎が干渉しないようにするためには現地調査を行い、地中埋設物の存在がないか確認を行います。
地中埋設物がある場合、柱は埋設物から十分な距離をとって設置します。近くに樹木がある場合は樹木が大きくなった場合のことも考慮して柱の位置を決めなければなりません。
カーポート設置工事に関するよくある質問

ここではカーポートの設置に関してよくある質問とその回答を紹介します。カーポートの施工条件や安全性にもかかわるものもあるので、事前に確認しておき、疑問を解消しておきましょう。
カーポートの柱の下に配管があっても施工できる?
カーポートの柱の下に配管がある場合は施工できません。柱の位置をずらしたりカーポートの種類を変えたりして対応します。
配管の位置は住宅の図面で確認できるので、現地調査の際に住宅を建設した際や不動産を購入した際に受け取った資料を用意しておくとスムーズです。図面がない場合は水道局やガス会社に問い合わせると、配管の位置が確認できます。
そのほか、ブロック塀やフェンスの基礎と干渉するとカーポートの設置位置に影響を及ぼす可能性もあるので、エクステリアの図面も用意しておくと安心です。
カーポートの基礎が固まるまでどのくらいかかる?
カーポートの基礎はおよそ1日で固まります。初日に柱を設置してコンクリートを流し、1日置いて固まっているのを確認してから次の工程に移ります。
コンクリートは時間をかけて強度を増していきます。たとえば駐車場の土間コンクリートの場合、以下のように1週間程度で使用できるようにはなりますが、完全な硬化までは1か月程度を要します。
- 人の立ち入りができる:3日間
- 普通乗用車が乗り入れできる:6日間
- 完全に固まる:28日間
カーポートの施工完了時点では問題なく柱は固定されていますが、完全な強度になるまでは時間がかかることを理解し、強い衝撃に注意するなど、配慮して使用すると安心です。
まとめ

カーポートは基礎が安全面で非常に重要ですが、基礎が最も手抜きされやすい部分です。手抜き工事を防ぐためには、信頼のおける外構工事業者に現地調査を入念に行ってもらったうえで施工することが大切です。
失敗を防ぐためにも相見積もりを依頼する、瑕疵保険や保証が整備されているか確認する、プランの提案が明確で丁寧な業者に依頼する必要があります。


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